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2011年9月13日
CO2回収機能付石炭ガス化複合発電での発電の高効率化を実現
株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)は、このたび、CO2回収機能付石炭ガス化複合発電(CCS*1-IGCC*2)において、CO2を回収する際に必要となる水蒸気の量を削減し、蒸気タービンでの発電量を増やすことを可能とする低温作動型シフト触媒を開発しました。シフト触媒は、一酸化炭素(CO)を主成分とする石炭ガス化ガス(以下、石炭ガス)を水蒸気と反応させ、CO2に転換するプロセスで使用するものです。本技術は、触媒の反応活性点*3を高分散化させると共に、反応活性点を効率よく生成することで反応速度を高めるものです。これにより、CO2回収に伴う水蒸気使用量を従来よりも3分の1低減することができ、発電効率の向上を実現します。
CCS-IGCCシステムは石炭をそのまま燃焼させるのではなく、石炭をガス化し、さらにガス中に含まれる一酸化炭素(CO)を水蒸気と反応させて水素とCO2に転換し、CO2を分離・回収することで、水素を主成分とする燃料に転換します。その燃料を用いて、まずガスタービンで発電し、さらにガスタービンとガス化炉の排熱で発生させた水蒸気を用いて蒸気タービンで発電することで、CO2排出を大幅に抑制しながら高効率な発電が可能になります。日立は、これまでも、カナダやドイツ等においてCCSの実証試験に参画しているほか、CCS-IGCC用ガスタービン燃焼器で、窒素などの希釈剤を用いずに窒素酸化物の発生を抑制する石炭ガスの燃焼技術等の要素研究を進めています。
CCS-IGCCシステムでは、蒸気タービンへ供給する水蒸気の一部を、石炭ガス中のCOをCO2に転換させるために使用します。その結果、蒸気タービンへ供給する水蒸気量が減り、CO2を回収する分だけ発電効率が低下するという傾向があります。CO2を回収しながら発電効率をより高くするには、COをCO2に転換させるシフト反応(CO+H2O⇔CO2+H2)を、少ない水蒸気量で効率よく進行させることが課題でした。シフト反応を促進するためには、シフト触媒を用います。従来のシフト触媒は、低温域での反応速度が小さく、反応を促進させるためには使用温度を上げる必要がありました。シフト反応は、高温になるほどCOのCO2への理論転化率*4が低くなるため、理論転化率を高める目的で水蒸気の添加量を増やしていました。この結果、蒸気タービンで使用できる水蒸気量が減り、発電効率の低下につながっていました。
日立は、石炭ガスから化学製品の原料となる水素を製造する際に使用される低温作動型シフト触媒の開発を行ってきており、今回、低温域での反応速度が大きく、少ない水蒸気量でより理論転化率に近いCO転化率*5を得ることができるシフト触媒を開発しました。この技術をCCS-IGCCに用いることにより、COをCO2に変換させるために必要な水蒸気使用量を3分の1削減可能であることを実験室において確認しました。今回開発した技術の特長は、以下の通りです。
本技術は今後、実証試験を行い、実用化に向けた研究開発を推進していきます。日立は、本技術を、石炭火力発電所からのCO2排出量抑制や石炭を利用した化学製品製造などへの展開を通じて、地球環境の保全に貢献していきます。
株式会社日立製作所 日立研究所 企画室 [担当 : 櫻庭]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
電話 0294-52-7508
以上