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2011年9月1日
アラームの到達遅延時間を約1/10に低減
株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)は、工場やビルで利用する機器の状態をセンサ端末で測定し、携帯電話網による無線ネットワークを利用して監視センタにデータを集約する、遠隔監視システムの高信頼化技術を開発しました。本技術は、アラーム信号の到達時間を短縮化する技術です。センサ端末のデータ通信を阻害する、他の無線電波の影響を回避することによって通信エラー率を低減するとともに、センサ端末で測定されたデータの異常値を優先的に送信するものです。これにより、無線通信を用いてセンサ端末で測定したデータや重要なアラーム情報を、より安定して収集することが可能となります。今回、試作装置を用いて当社工場内で実証実験を行い、センサ端末のデータ通信エラー率を従来の約100分の1に、携帯電話網におけるアラーム情報の到達遅延時間を従来の約10分の1に低減できることを確認しました。
近年、環境意識の高まりを背景に、工場やビルの運用管理における建物内の環境とエネルギー消費量の最適化を目的として、機器のエネルギー消費量や環境の温度、湿度などをセンサ端末で測定し、通信ネットワークを利用して監視センタにデータを集約し、分析・制御を行うエネルギーマネジメントシステム(以下、EMS)の導入が始まっています。現在は信頼性の高い有線ネットワークが主に用いられていますが、新たな配線の敷設が困難な既存ビルなどでは、システムの設置コストが小さく、接続変更が容易な無線ネットワークを利用したいというニーズが高まっています。特に監視センタが遠隔地にある 場合は、広く普及している携帯電話網を活用することが効率的であると考えられています。しかし工場やビル内でセンサ端末を用いた場合、センサ端末から発する無線電波と、無線LANをはじめとする既存の機器の無線電波が干渉するため、通信エラーの頻度が高くなることに加え、また携帯電話網を用いると、ネットワークが混雑して通信状態が悪くなった場合、センサ端末が計測した機器や環境の異常を通知するアラームの送信に時間がかかり、監視センタでの異常検知が遅れるリスクがあるという二つの課題があります。このため、無線ネットワークを利用した高信頼の遠隔監視を実現するには、監視センタへ遅延なく確実にアラームを通知する通信制御技術の開発が必要とされています。
このような背景から日立は、データ通信エラー率を低減するとともに、携帯電話網を用いた遠隔監視においてアラーム到達遅延時間を低減する無線通信技術を開発しました。
今回開発した無線通信制御技術を搭載したIEEE802.15.4標準規格*1のセンサ端末30台を用いて、無線LANや設備機器が共存する工場内の環境下において、センサ端末で測定したデータの通信実験を行ったところ、ゲートウェイ*2までのデータ到達時間3秒以内において、データ通信エラー率が、本技術を適用しない場合の約100分の1となる約10-6以下となることを確認しました。また、EVDO方式*3の携帯電話網を用いて監視センタと遠隔地にある工場を接続した実証実験を行ったところ、平均スループットを30kbpsで送信した場合、データの未到達率が約10-6以下となり到達遅延時間は6秒以内になりました。これは、本技術を用いない場合、同様の条件下での到達遅延時間を約10分の1に短縮することに相当します。
本技術はEMSのみならず、都市やエリア単位での次世代エネルギー・社会システムの実現を目指すスマートシティなどの社会インフラシステムにおいても、応用展開できるものとして期待されます。
本技術については、2011年9月7日から9日まで富山大学(富山市)で開催される「電気学会 電子・情報・システム部門大会」ならびに、2011年9月13日から16日まで北海道大学(札幌市)で開催される「電子情報通信学会ソサエティ大会」にて発表する予定です。
今回開発した技術の詳細は、以下の通りです。
株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当 : 木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
電話 042-327-7777(直通)
以上