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2011年7月4日
二酸化炭素回収型石炭ガス化複合発電(CCS-IGCC)の
試作燃焼器で低NOx燃焼に見通し
株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)では、二酸化炭素回収機能付石炭ガス化複合発電(以下、CCS*1-IGCC*2)の窒素酸化物(以下、NOx)排出量を低減し、かつ高濃度の水素を含む燃料を安定して燃焼する要素技術を研究しています。本技術は、燃料および燃焼用空気を噴出する同軸噴流バーナー*3の燃料ノズルの形状と位置を工夫し、多数組み合わせることにより、燃料と空気を急速に混合して反応させるとともに、一定の位置に浮上火炎*4を形成させて火炎温度を均一化することで、窒素などの希釈剤を用いずにNOxの発生を抑制するものです。このたび、本技術を用いた試作燃焼器でNOxの発生量を環境規制値*5以下に抑えられる見通しが得られました。さらに、この試作燃焼器では、一つの燃焼器で90%のCO2を回収した場合に相当する高濃度(80%超)から、CO2回収を行わない場合に相当する低濃度(30%弱)までの水素含有燃料を低NOxで希釈剤なしに燃焼できるため、燃料の水素濃度に応じた複数の燃焼器が不要となり、設備投資を抑制することが期待できます。
CCS-IGCCシステムは石炭をそのまま燃焼させるのではなく、石炭をガス化し、さらにガス中に含まれる一酸化炭素(CO)を水蒸気と反応させて水素とCO2に転換し、CO2を分離・回収することで、水素を 主成分とする燃料に転換します。これにより、石炭からエネルギーを取り出す際に発生するCO2の 大部分を大気に放散することなく、石炭から転換した水素を主成分とする燃料で運転するガスタービンと、ガスタービンからの排熱とガス化炉内で発生する熱を利用して運転する蒸気タービンによって、CO2排出を大幅に抑制しながら高効率な発電が可能です。
CCS-IGCCの燃料の主成分である水素は反応性が高いため、燃料と空気の混合が不十分な場合、 火炎内に局所的な高温部が発生しやすい特性があります。NOxは、高温部で発生しやすい性質があるため、従来のIGCCではこの部分を冷却するため、燃料および空気と同時に、窒素などの希釈剤を噴射し、局所的高温部の発生を抑制することで、NOxの排出量を低減しています。また、従来の燃焼器は、燃料の主成分である水素の濃度に応じた燃焼器が必要でした。このような背景から、希釈剤を用いず、多様な水素濃度の燃料に対応可能な燃焼技術の開発に着手しました。研究を始めるにあたっては、空気と燃料が混合して燃焼する原理に立ち戻って解決策を模索し、従来にない革新的な燃焼方式を考案しました。現在、研究を進めている技術の特長は以下の通りです。
本技術は、バーナーの壁状部材に形成した空気孔と同軸に配置した燃料ノズルの形状と位置を工夫することで、空気と燃料が混在する空間を限定するとともに、同軸噴流が燃焼室に噴出した際に、小さな渦が急速に大きく変形することを利用して急速に混合するものです。本技術により、水素濃度が変化しても燃料と空気を安全に混合することができます。
前述の同軸噴流バーナーを多数組み合わせてその噴出方向を調整することで、バーナーから離れた一定の空間に、浮上火炎を安定に保持する技術を研究しています。本技術により、燃料と空気が十分に混ざり合うバーナーから離れた位置で火炎を発生させることができます。また、構造物から火炎が離れているため、構造物の温度上昇を防ぐことができ、信頼性を確保する上でも有効です。
この急速混合技術と浮上火炎技術により、局所的高温部の発生を抑制することで、希釈剤を使用せず火炎温度を均一化させてNOx排出量を低減することができます。浮上火炎技術は、水素濃度が変化しても燃料組成に影響されず、ほぼ同じ位置に火炎を安定に保持することができ、同一構造の燃焼器で火炎温度を均一化できることを、試作燃焼器で確認しました。
本技術は、日立が2008年から参画している新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ゼロ エミッション石炭火力技術開発プロジェクト」において開発を行っているもので、2012年度までに広範囲な水素濃度の燃料に対して同一構造のバーナーで低NOx燃焼させる技術の確立をめざしています。
日立は、今後、CCS-IGCCの他、鉄鋼業や化学工業分野で副生ガスとして発生する水素含有燃料を燃焼する技術へ展開し、資源を有効活用した環境負荷の低く高効率な発電技術を普及することで、地球環境の保全に貢献していきます。
株式会社日立製作所 日立研究所 企画室 [担当 : 櫻庭]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
電話 0294-52-9127
以上