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2011年5月10日

米国の大手総合病院メイヨー・クリニックから
陽子線がん治療システムを受注

歴代大統領が治療をうけるなど全米で著名な大病院向けに
世界で初めてシステム二式を一括供給

  株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西宏明/以下、日立)は、このたび、陽子線がん治療システム二式を米国の大手総合病院であるメイヨー・クリニック(Mayo Clinic)から一括受注しました。システム二式を一括で供給することは世界で初めてであり、日立はメイヨー・クリニックの2つの総合病院(ミネソタ州ロチェスター市とアリゾナ州フェニックス市)に、最先端の照射技術で、正常な細胞への影響をできるだけ抑制するために、腫瘍の形状に合わせて高い精度で陽子線を照射することができる「スポットスキャニング照射技術」を適用した陽子線がん治療システムをそれぞれ一式ずつ納入します。
  今回日立が供給する装置は、高度な機能のほか、従来の装置と比較して約60%の省スペースな設計で病院建物のコンパクト化が図れ、狭い敷地でも設置が可能な設備となっています。本施設は、2011年内に着工し、それぞれ2015年夏と2016年春に完成、メイヨー・クリニックの新しい施設として治療を開始する予定です。さらに、これまでの日立の陽子線がん治療システムにおける運転・保守による高い稼働率の実績が高く評価され、今回の受注では、10年間の運転・保守契約も含めて締結しました。

  メイヨー・クリニックは、米国において3つの拠点と「メイヨー・ヘルス・システム」として70を超える病院や診療所を運営する大手の総合病院であり、年間50万人以上の患者を治療しています。メイヨー・クリニックは、診療と医療の提供に加えて教育・研究が総合的になされている米国でトップの医療体制を整えた医療機関であり、世界中から難病を抱えた患者が訪れることやアメリカの歴代大統領や国内外の要人が治療を受けたことで、知られています。約3,700名の専門医、研究医が在籍しており、「全米の優れた病院」ランキング*1では、毎年、全米で最も優れた病院のひとつとして高く評価されています。

  日立は、電力システム事業を通じて、加速器や放射線照射・制御に関する豊富な技術・ノウハウを生かし、約20年前から陽子線がん治療システムの開発を進めてきました。これらの技術をもとに、世界最先端の「スポットスキャニング照射技術」の実用化をめざし、2007年12月には、米国において同技術を応用した陽子線がん治療システムとしては世界で初めて米国食品医薬品局(FDA : Food and Drug Administration)の販売認可を取得しました。さらに、2008年5月には、世界最大級のがん専門病院である米国のM.D.アンダーソンがんセンターに、商用としては世界で初めて同技術を採用したシステムを納入しました。本技術は、従来の方式に比較し、患者の患部ごとに陽子線の形状と分布を合わせるために必要であった専用の高精度機械加工品が不要なことから、病院スタッフの負担を軽減することができるほか、廃棄物の発生量を低減できることが特長であり、高く評価されています。

  M.D.アンダーソンがんセンターでは、日立が最初に納入した陽子線がん治療システムが2006年5月に治療を開始してから、約5年にわたって延べ約2,400人のがん患者の治療に用いられており、その高い稼働率(95%以上)と安定した運転・保守実績は、国内外から高い評価を得ています。国内においても、スポットスキャニング照射技術等を適用した患者に優しい最先端の陽子線がん治療システムについては、名古屋市、北海道大学からも受注するなど、多数の実績を有しています。

  日立の執行役社長である中西宏明は、「M.D.アンダーソンがんセンターでの約5年にわたる優れたがん治療での実績を踏まえ、今回、新たに米国の大手総合病院であるメイヨー・クリニックに当社の陽子線がん治療システムを採用していただけることは、大変名誉なことです。スポットスキャニング照射技術等に代表される日立の技術力と信頼性を高く評価していただけたものと思っております。今後も、最先端の技術を生かした陽子線がん治療システムのグローバルな普及に貢献していきます。」と述べています。

  今回の受注では、2つのそれぞれの病院に、回転用ガントリ治療治療室が4室、研究開発用の固定照射治療室が1室あり、全5室にスポットスキャニング照射技術を適用した治療システムが設置されますが、メイヨー・クリニックは、医療機関として世界で初めて全室にスポットスキャニング照射技術を適用することになります。また、システム二式を一括で受注するのは世界で初めてです。

陽子線がん治療システムについて

  陽子線がん治療は、放射線によるがん治療法のひとつであり、水素の原子核である陽子を加速器で高速に加速し、がん細胞に集中して照射することでがんを治療するものです。治療に伴う痛みがほとんどなく、身体の機能と形態を損なわないため、治療と社会生活の両立が可能であり、生活の質(QOL : Quality Of Life)を維持しつつ、がんを治療できる最先端の治療法の1つとして注目されています。

スポットスキャニング照射技術について

  スポットスキャニング照射技術とは、腫瘍を照射する陽子線のビームを従来の二重散乱体方式*2のように拡散させるのではなく、細い状態のまま用い、照射と一時停止を高速で繰り返しながら順次位置を変えて陽子線を照射する技術で、複雑な形状をした腫瘍でも、その形状に合わせて、高い精度で陽子線を照射することができ、正常部位への影響を最小限に抑えることが可能です。更に、患者ごとに準備が必要であった装置(コリメーター*3、ボーラス*4)が不要、また、陽子ビームの利用効率が高く不要な放射線の発生が少ないなど、患者に優しく、病院スタッフの負担を軽減でき、更に、廃棄物の発生量の低減が可能であるという特長を備えています。

*1
U.S.ニューズ&ワールド・レポート誌が毎年発表しているランキング。
*2
二重散乱体方式 : 物質中を通過する際の散乱効果を活用して、陽子線の細いビームを二つの散乱体を通過させ、拡散させることで、陽子ビームの直径を拡大する。拡大された陽子ビームは、コリメーターやボーラスを通して、がんの形状に成形される。
*3
コリメーター : 真鍮等の厚板をがんの輪郭に合わせて中を切り取ったもの。これによって、ガンの形状に合わせて陽子ビームを成形することができる。
*4
ボーラス : ポリエチレン等のブロックをがんの奥行きの形に合わせて中をくり抜いたもの。これによって、患部より奥に陽子ビームが届かないように設定することができる。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 電力システム社 放射線治療推進本部 [担当 : 西村、渕上]
〒100-8608 東京都千代田区外神田一丁目18番13号
電話 03-4564-3565 (直通)

以上

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