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Hitachi

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2010年9月24日

IT機器内の基板間データ伝送の高速化・低電力化に向けた
小型光受信器を試作し 伝送速度100ギガビット/秒、
1ギガビット/秒あたりの消費電力3.0mWを実証

16mm角の小型パッケージに毎秒25ギガビット×4チャネルの光受信回路を実装

  株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)は、ネットワーク機器をはじめとしたIT機器内の基板間のデータ送受信を、高速かつ低消費電力の光信号で行うための光伝送技術の実現に向け、伝送速度が100ギガビット*1/秒 (以下、Gb/s)、1Gb/sあたりの消費電力が従来の1/3以下の3.0mWとなる、小型光受信器の試作に成功しました。
  本技術は、現在、開発が進められている光バックプレーン伝送*2の中核部品となる100Gb/sの光送受信器のうち、受信部分の高速化と省電力化、小型化を実現した成果であり、高性能かつ省電力な次世代IT機器の基盤となる技術です。
  なお、本成果は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)が受託した「次世代高効率ネットワークデバイス技術開発」の結果得られたものです。

  インターネットの普及に伴い、ネットワーク機器が処理する情報量は年々増加しています。経済産業省の推定*3によると、その消費電力は、このままでは2025年には2005年の13倍に増大すると予想されています。中でも、ネットワーク機器の消費電力の約12%は、装置内の基板間データ伝送に費やされており、これは、IT機器全体の5%を占める莫大な電力量に達します。
  従来、ネットワーク機器を始めとしたIT機器内の基板間データ伝送(バックプレーン伝送)には、並列電気伝送技術が使用されてきました。現在の一般的なバックプレーン伝送では、チャネルあたりの伝送速度が10Gb/s以下ですが、今後、機器の処理性能の向上に伴って伝送速度が20Gb/s以上になると、信号の伝送損失*4の増大による消費電力の増加が顕在化してきます。
  そこで、バックプレーン伝送に、高速でも伝送損失の小さな光伝送を利用することが検討されています。しかし、光伝送に切り替えるためには、電気信号を光信号に変換する回路、あるいはその逆に光信号を電気信号に変換する回路が必要となり、それらの回路が消費電力の新たな増加を招くという課題がありました。この課題を解決する目的で、日立はNEDOのプロジェクトに参画し、光バックプレーン伝送の実現に向けて省電力で小型な光送受信器の開発に取り組んでいます。

  今回試作した光受信器は、光信号を電流に変換するフォトダイオードと、電流信号を電圧信号に変換、増幅する回路(Transimpedance Amplifier、以下、TIA)からなる伝送速度25Gb/sの光受信部を、16mm角の小型パッケージ上に4チャネル分実装した、100Gb/sの光受信器です。今回、隣接する チャネル間で生じる信号の相互干渉を抑制するシールド実装技術と、低電力性に優れたCMOSプロセス*5で作成した高速回路技術を開発し、高速かつ低電力の小型光受信器を実現しました。
  開発した技術の詳細は、以下の通りです。

(1) 1チャネルあたり25Gb/sの4チャネル実装技術
  1チャネルあたり25Gb/sの伝送信号を4チャネル集積化し、一括受信することで100Gb/s光受信器の小型化・高速化が可能となります。しかし、小型化するために隣接するチャネル間を狭くすると、フォトダイオードとTIAをつなぐ配線(ボンディングワイヤ)間で信号の相互干渉が生じ、信号品質の劣化を招きます。そこで今回の開発では、電磁波の閉じ込めに有効な多層セラミックパッケージ上にフォトダイオードとTIAを実装し、隣接する配線間で生じる信号の相互干渉を基板内に設けた電磁界シールド(内層シールド)により低減することに成功しました。
(2) 25Gb/sを実現した高周波特性の改善
  隣接する配線間での信号の相互干渉を防止するため、内層シールド付きの基板内配線としたことにより、高周波帯の信号が伝送されにくくなるという問題が生じます。そこで、基板内配線の高周波特性を改善するために、高周波帯の信号成分だけを補償する利得調整機能を新たに開発しました。それにより、25Gb/sという高周波帯を含む信号でも、基板内配線を使った伝送を支障なく可能とする仕組みを確立しました。

  今回、65nm CMOSプロセスを用いて、通信速度25Gb/s対応のTIAチップを試作し、これを用いて電力特性を評価したところ、高速性に優れたシリコン(Si)ゲルマニウム(Ge)バイポーラトランジスタを用いた従来のTIAと比較し、通信速度あたりの消費電力が1/3以下となる3.0mWで動作することを確認しました。さらに、25Gb/s動作における隣接チャネル間の相互干渉を抑えたことにより、16mm角の小型パッケージ上に25Gb/s×4チャネル、合計100Gb/sとなる光受信器を実装し、高速同時受信動作を確認しました。今後は、現在並行して開発を進めている光送信器を同一パッケージ内に搭載した、送受信器の実現をめざします。

  なお、本成果は、2010年9月19日から9月22日まで米国・サンノゼで開催された半導体集積回路の国際会議「CICC(IEEE Custom Integrated Circuits Conference)」及び、2010年9月19日から9月23日までイタリア・トリノで開催された光通信の国際会議「ECOC (European Conference and Exhibition on Optical Communication)」にて発表しました。

*1
100ギガビット/秒 : 1ギガビットは10億ビット、100ギガビットは1,000億ビットにあたる。
*2
バックプレーン伝送 : 大型のIT機器では、筐体内にあるバックプレーンと呼ばれる大型のプリント回路基板を介し、装置内のデータ伝送が行われている。バックプレーンのコネクタに、複数の基板を接続し、LSIが搭載された基板間でデータ伝送が行われている。
*3
出展 : 経済産業省「情報通信機器の革新的省エネ技術への期待」(2007年10月)
*4
伝送損失 : 通信線路上を流れる信号の劣化度合いのこと。伝送速度が上がるほど、伝送損失は増加し、それを補償するための消費電力も増大する。
*5
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセス : シリコンをベースとした半導体素子構造の一種で、電荷の運搬を自由電子によって行うnMOS(negative MOS)と正孔(固体の結晶構造の中の電子が欠落した部分)によって行うpMOS(positive MOS)を組み合わせたもの。動作時に、必ずどちらかのトランジスタはオフになり電流が流れないため、消費電力が極めて小さい。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当 : 木下、工藤]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
電話 : 042-327-7777 (直通)

以上

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