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2010年9月15日
独自開発した測定感度10ピコメートルの小型光干渉変位センサを搭載
株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)は、このたび、原子の大きさ(約100〜300ピコメートル*1)よりも1桁小さな15ピコメートル の分解能でプローブ(探針)の位置を制御できる原子間力顕微鏡(以下、AFM : Atomic Force Microscope)の開発に成功しました。本AFMは、独自開発した外形が 25mm(横)×27mm(縦)×12mm(高さ)で、測定感度*2が10ピコメートル以下の小型光干渉変位センサを、顕微鏡内の針走査機構に組み込むことにより実現したものです。日立は、今後、開発したAFMを次世代ハードディスク装置の磁気ヘッド素子などのナノ構造素子の開発・製造に適用し、信頼性や歩留まりの向上に寄与していくとともに、原子を立体的に観察する表面物理の研究など基礎研究分野にも応用していく予定です。
AFMは、走査プローブ顕微鏡(SPM : Scanning Probe Microscope)の一種で、先端径が数ナノメートル(1ナノメートル : 100万分の1ミリメートル)の探針を、探針先端と試料表面の原子間に働く力(原子間力)が一定となるように制御して試料表面をなぞり、各点で読み取った探針の3次元位置から試料表面の立体形状を測定する計測装置です。ナノメートル以下の精度で微細な立体構造を測定できることから、基礎研究の分野に加え、半導体をはじめとする幅広い産業分野に活用されており、並行して分解能の向上の検討が世界中で進められています。近年、半導体製造装置や超精密加工機にはサブナノメートル(1000万分の1ミリメートル)の加工精度が求められており、加工後のナノ構造素子を測定するAFMは、その1/10以下の数十ピコメートルの測定精度が要求されるようになってきました。AFMの測定精度は、探針の位置を読み取る変位センサの測定感度に左右されますが、従来用いられていた静電容量型変位センサでは、数十ピコメートルの測定感度を得るのは困難でした。一方、レーザ干渉計を用いた変位センサは、原理的に数十ピコメートルの測定感度がありますが、AFMの探針走査機構に搭載するには装置のサイズが大きい上に、空気の揺らぎや機械振動などにより干渉光が変動しやすいため、スペースの限られた探針走査機構に組み込み、必要な精度を確保することが困難でした。
このような背景から、今回、日立は、探針の3次元位置を原子の大きさよりも1桁小さな15ピコメートルの分解能で高精度に読み取り制御できる高分解能AFMを開発しました。本AFMは、2008年に開発した測定感度40ピコメートルの小型光干渉変位センサをもとに、体積比で40%小型化し(25mm(横)×27mm(縦)×12mm(高さ))、測定感度も10ピコメートルに向上させた新しい光干渉変位センサを開発し、探針走査機構へ組み込むことにより実現したものです。
今後、開発したAFMを、次世代ハードディスク装置の磁気ヘッド素子に代表されるナノ構造素子の開発・製造に適用し、信頼性や歩留まりの向上に寄与していくとともに、原子一個一個の形状を立体的に観察する表面物理の研究にも応用し、ミクロな現象の解明に役立てていく予定です。
なお、本技術は、2010年9月14日から17日まで長崎大学で開催される「2010年秋季応用物理学会学術講演会」にて発表します。
レーザ干渉計では、レーザ光を2つの光路に分離し、一方を参照光、他方を測定光として対象物に照射し、両者の反射光を干渉させ、干渉光の強度から対象物の変位を求めますが、2つの光路に空気の揺らぎや機械振動などの外乱が生じると、干渉強度が変動して十分な精度が得られないという問題がありました。日立は、2008年に、フォトニック結晶*3という特殊な偏光素子に着目し、フォトニック結晶で反射した偏光成分を参照光とし、透過した偏光成分を測定光として対象物に照射することで、2つの光路を重ねて1つの光路として干渉させ、外乱の影響を相殺する新しい光干渉技術を開発し、外形20mm(横)×50mm(縦)×14mm(高さ)で、測定感度40ピコメートルの小型光干渉変位センサを実現しました。今回、フォトニック結晶を含めた光学部品をさらに高集積化することで、AFMに組み込み可能な外形25mm(横)×27mm(縦)×12mm(高さ)の小型光干渉変位センサを開発し、小型化によって光路の長さをさらに短くすることにより、10ピコメートルという測定感度を実現しました。
株式会社日立製作所 生産技術研究所 企画室 [担当 : 鈴木、神田]
〒244-0817 神奈川県横浜市戸塚区吉田町292番地
電話 045-860-1678 (直通)
以上