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2010年9月13日
- 24GHz帯シングルチップMMICを試作、100mWの低消費電力動作を確認 -
株式会社日立製作所(執行役社長:中西 宏明/以下、日立)は、このたび、10〜30ギガヘルツ(以下、GHz)の周波数帯域を利用する準ミリ波帯無線通信システム向けに、低コストなシリコン系半導体を用いた高周波送受信回路技術を開発し、消費電力が従来の3分の1にあたる100mWで動作する省電力性に優れた24GHz帯のシングルチップMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)*1の試作に成功しました。なお、本開発は、総務省の委託研究「電波資源拡大のための研究開発」の一環として実施したものです。
近年の携帯電話や無線LANなどの急速な普及とともに、これらの無線通信で利用している6GHz以下の周波数帯は過密状態にあり、無線通信のさらなる普及を図るためには、その解消が課題のひとつとなっています。そこで、今後、限られた電波をより有効に利用するために、比較的余裕のある他の周波数帯への移行に向けた基盤技術の開発が進められています。そして、次世代の無線通信周波数帯として期待されているのが、10〜30GHzの準ミリ波帯です。準ミリ波帯は、6GHz以下の周波数帯に比べて広い帯域を利用し、現在の無線LANよりも高速・大容量のデータ通信が可能であることから、家庭やオフィス内の高速無線アクセスシステム、ネットワーク型の映像監視システム、携帯電話網の基地局間のデータ通信などでの利用が期待されています。準ミリ波を利用するにあたっては、無線通信システムの低コスト・小型化に加え、環境への配慮から省電力化が求められています。
このような背景から、日立は、低コストと小型化、消費電力の低減を実現する、高周波送受信回路技術を開発しました。本回路技術は、従来、使用されてきた化合物半導体に比べて低コストなシリコン系半導体を用い、また複数のICチップで構成されていたものを1つのICチップで回路を構成することで、低コスト化と小型化を実現しました。さらに、送受信回路の各機能をつかさどる要素回路を接続している結合回路に、電力供給を必要としない受動素子を用いることで、消費電力の低減を実現しました。
従来、結合回路には能動素子が用いられてきましたが、動作周波数が準ミリ波帯まで高くなると、要素回路と結合回路の間で電気整合がとりにくくなる問題(インピーダンス*2不整合)が発生して信号伝達の効率を劣化させるため、これを補う大きな動作電流が必要となり、消費電力の増加を招いていました。開発した結合回路では、渦巻き形状に作成した結合素子を利用することで要素回路と結合回路のインピーダンス不整合を解消して信号伝達効率の向上を実現しています。さらに、新開発の結合回路では、信号伝達に交流信号だけを利用することから、直流信号も含めて伝達している従来の能動素子を用いた結合回路に比べて電源電圧を低減することが可能です。
今回日立では、開発した高周波送受信回路技術の有効性を実証するために、0.18µm SiGe BiCMOSプロセス*3を用いて、24GHz帯シングルチップ送受信回路を試作し、従来の3分の1となる100mWの消費電力で、最大利得60dB、雑音指数*45.8dBの受信回路特性を、また利得38dB、送信線形出力*54.3dBmの送信回路特性を実現することを確認できました。
本技術は、将来の低コストかつ省電力の準ミリ波帯無線通信システムの実現に寄与する基盤技術です。今後も、日立は電波資源の有効活用に寄与する各種技術の開発に積極的に取り組んでいきます。
日立は、2010年9月13日からスペイン セビリアで開催される「欧州固体素子回路会議(ESSCIRC:European Solid-State Circuits Conference)」にて、9月14日(現地時間)に本技術を発表する予定です。
株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:木下、工藤]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
TEL : 042-327-7777 (直通)
以上