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2010年9月1日
株式会社日立総合計画研究所
日立グループのシンクタンクである株式会社日立総合計画研究所(取締役社長:塚田 實/以下、日立総研)は、以下の通り、短期経済予測を改定しました。
金融危機後、世界経済は強力な政策協調の下、これまで順調な回復を続けてきた。しかしギリシャ危機を発端として、先進国の政策協調にほころびが生じている。各国とも景気下支えへの志向が薄れ、自国本位の財政再建と外需頼みの成長優先に傾き始めた。
景気対策効果の剥落期を迎え、各国では民需の弱さが明らかになった。これまでの景気回復局面では、景気対策終了の時期に民需が本格化することで自律回復してきた。しかし今次景気後退の主要因たる米欧家計の過重債務は重く、不動産価格や株価の回復が思わしくない中、民需の代表たる個人消費は不調なままである。さらに、期待成長率自体が低下してしまったことで、雇用や設備投資などの企業行動も極度に保守化している。ここで政府が極端な財政緊縮化に走れば、世界総計としての需要不足が長期化し、限られた需要の奪い合いとなる。
くすぶり続ける欧州不安と米国の景気回復鈍化を受け、市中資金は安全資産の国債に向かっている。結果、米欧国債価格の上昇(=金利の低下)を招き、日本国債との金利差縮小が円高を進行させている。弱い内需にあえぐ米欧各国には、この通貨安による輸出競争力の改善を追い風にしようとする意図が見て取れる。
しかし「頼みの綱」の中国も、不動産バブル抑制の必要性から当局が引き締め姿勢を強めており、成長速度は鈍化傾向である。また、米欧の復調が不十分とみるや、一度は切り上げ方向に誘導していた人民元レートを反転させ、再び人民元安水準に戻し輸出競争力の減退を防いでいる。まさに主要国は「通貨安競争」の最中である。
米欧の景気回復がもたつく中、中国景気も減速の兆しがあり、世界経済は不安定な局面に入った。しかし、中国はじめ新興国は減速気味とはいえ高成長を続けており、金融危機からの回復そのものは持続するという見通しを今回の標準シナリオとした。10年米国2.6%、ユーロ圏1.4%の成長率を予測。11年は緊縮財政の影響が表面化するものの、米国2.2%、ユーロ圏1.0%とプラス成長は維持すると見込む。ただし、何らかの金融ショックなどにより、先進国経済が「二番底」に陥るリスクが残る。
中国経済は10年後半に減速するものの、前半の好調のため、通年の成長率9.5%。11年は、前半まで当局の過熱抑制策の影響が残り、通年の成長率は8.5%。
目下の円高は輸出頼みの日本経済にとって深刻だが、不安定な政情の下、為替市場を動かすような方策も示せていない。また、追加的財政出動はいかにも小粒な印象である。
それでも政府日銀による追加金融緩和や為替介入などの政策手段で、急速な円高進行は阻止できよう。為替は85円/ドル(同11年度)、110円/ユーロ(11年度は100円/ユーロ)を想定。
10年度の日本経済はエコカー補助金終了、タバコ増税、エコポイント終了などに伴う駆け込み需要もあり、通年の成長率は1.8%。11年度は世界経済減速と円高に伴う輸出伸び悩みのため、1.5%に減速すると予測。
株式会社日立総合計画研究所 経済グループ
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