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2010年6月16日
高効率・低コスト・低環境負荷の火力発電プラントの実現に向けた技術開発を加速
株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)は、経済産業省からの補助事業として、住友精密工業株式会社(社長 : 神永 晉/以下、住友精密)、財団法人電力中央研究所(理事長 : 各務 正博/以下、電中研)と共同で、新型の高湿分空気利用ガスタービン(AHAT : Advanced Humid Air Turbine)サイクル(方式)発電*1の技術開発を進めていますが、このたび、発電出力3MW級(3,680kW)AHAT総合試験設備によるシステム検証が完了しました。今回のシステム検証では、40%超の発電効率を達成し、発電システムとしての実現性を実証するとともに、現状のガスタービンコンバインドサイクル(GTCC : Gas Turbine Combined Cycle)発電*2と比較して、大幅にNOx排出量を低減でき、通常設置が必要となる脱硝装置が不要となることや、起動時間を1/4以下に低減できることを確認しました。日立は今後、40MW級試験設備を建設し、発電効率の向上など、技術開発を加速し、2015年度以降に、老朽化した火力発電所の設備リプレースや電力系統調整用電源の新設市場を対象として、現在50%超の発電効率を達成しているGTCC発電を上回る高効率で100MW級の発電出力での実用化をめざします。
近年、経済性向上と環境負荷低減を目的として、高効率ガスタービンの需要が増加しています。ガス火力発電では、高効率発電技術としてGTCC発電が普及していますが、さらなる高効率化・低コスト化に向けた技術開発が期待されています。また、世界的に風力や太陽光発電等の再生可能エネルギーの大量導入が進んでいることから、起動時間が短く、負荷追従性(発電出力の増減指示への即応性)に優れた電力系統調整用の電源がますます重要になってきています。
日立は、これらのニーズに対応するため、経済産業省が策定した「Cool Earth-エネルギー革新技術計画」に沿って、2004年から住友精密および電中研とともに、経済産業省の補助事業として、AHATサイクル発電のシステム検証と要素技術開発を進めてきました。AHATサイクル発電は、高湿分の空気を利用することなどによって、GTCC発電と同等以上の発電効率を、低コストで実現するとともに、CO2やNOxの排出量削減を図る、次世代のガスタービン発電システムです。また、GTCC発電に比べて起動時間が短く、負荷追従性に優れていることから、電力系統調整用電源としても期待されています。AHATサイクル発電は、国内外の学会等でも高い評価を得ており、2010年6月には、関連する技術論文が、アメリカ機械工学会(ASME : American Society of Mechanical Engineers)から年間最優秀論文の一つに選ばれるなど、数々の論文賞を受賞しています。
今回のシステム検証では、実測発電端効率40%超を達成し、AHATサイクル発電の発電システムとしての実現性を実証しました。また、NOx排出量を10ppm以下まで大幅に低減し、GTCC発電では通常必要となる脱硝装置を不要にできる見通しを得ることができました。さらに、機器を完全に停止した状態からの起動時間を、GTCC発電の1/4以下となる40分に短縮できることを確認しました。
日立は、今後、40MW級のAHATサイクル発電の実用化要素技術試験設備を建設し、住友精密および電中研の協力のもと、2010〜2011年度の2年間で技術検証を実施する予定です。その後、実用化に向けた発電効率の向上や、実証機での検証を行い、2015年度以降に、100MW級の老朽化した火力発電所の設備リプレース市場や、電力系統調整用電源市場を中心に、市場投入をめざします。
株式会社日立製作所 電力システム社 火力事業部 火力技術本部 [担当 : 清野]
〒101-8608 東京都千代田区外神田一丁目18番13号
電話 03-4564-3081 (直通)
以上