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2010年6月10日
株式会社日立総合計画研究所
日立グループのシンクタンクである株式会社日立総合計画研究所(取締役社長 : 塚田 實/以下、日立総研)は、以下の通り、短期経済予測を改定しました。
世界経済の回復が続いている。10年1-3月期は、中国をはじめとする新興国だけでなく、米、欧、日でも前期比プラス成長が続き、09年半ば以降の実体経済の回復は底堅くなってきた。しかし10年4月以降のギリシャ危機の高まりは、世界経済の修復過程が決して一本調子では進まないことを改めて浮き彫りにしている。
リーマン・ショック以後、各国は銀行救済を含む金融システム安定化措置とともに、大規模な財政出動を行なって景気を下支えした。そのかいあって「100年に一度」といわれた金融危機は、発端から1年半を経過して次第に終息するかにみえた。しかし、銀行破たんのリスクは弱まったものの、足元は税収減と財政出動で膨らんだ政府債務(ソブリン・デット)が新たな不安の火種となっている。今回のギリシャ危機は、統計の信憑性など同国固有の事情があったとはいえ、基本的に世界経済が直面する課題が金融部門の過大な不良資産から政府部門の過大な債務へと移行したことを示している。ポルトガル、スペインなど南欧諸国のほか、最近では
ハンガリーのような中東欧でも財政懸念が指摘されるなど、その様相はより顕著である。
一方、中国をはじめとする一部の新興国では、政府の財政・金融政策による巨額の公共投資と過剰流動性が不動産投機に結びつき、景気過熱傾向が一層強まっている。当局は既に預金準備率を引き上げているが、政策金利・貸出金利の引き上げも秒読みの段階であり、新興国も次の課題への対応局面を迎えている。
米国は迅速に金融機関救済とストレステストを行なった後、中長期的な財政修復に向けての議論も早々に開始するなど、今回の局面移行に適切な行動をとっている。一方、欧州の対応は遅れている。共通通貨ユーロによる金融政策の制約に加え、財政余力も乏しくなっており、ギリシャ危機の余波による回復の遅れは不可避である。唯一の好条件はユーロ安による域外競争力の回復であろう。標準シナリオでは、10年の実質GDP成長率は世界合計3.9%(米国3.1%、ユーロ圏0.8%)と予測。為替レートは、ユーロからの資金回避を織り込んで、10年下期90円/ドル、110円/ユーロ、130円/ポンド。ギリシャ危機の拡大が欧州金融危機につながる
リスクシナリオも想定しておく必要がある。その場合、銀行の破たんなど欧州金融システムの混乱から10年の実質GDP成長率は世界合計3.3%、(米国2.5%、ユーロ圏▲0.2%)と、世界経済にもマイナスの波及が生じる恐れがある。
新興国経済は、中国の金融引き締め動向に注目。10年後半には貸出金利引き上げと人民元切り上げが実施されるとみられる。欧州向け輸出の回復鈍化などの懸念もあるが、4兆元景気対策に含まれる既存プロジェクトの継続もあり、引き続き内需主導により好調を維持する。10年の実質GDP成長率9.4%、10年下期の人民元は6.65元/ドル、13.5円/元。ただし引き締め効果のため10年後半には成長速度がやや鈍ると予測。
好調なアジア経済に支えられ、日本経済も回復が続いている。設備投資もようやく下げ止まりの兆候が出てきた。ただし景気下支えの材料は、外需頼みの他は政策効果による耐久消費財などしかなく、雇用環境も依然厳しい。目下十分な外貨準備と国内投資家による国債保有で安定している政府債務も、水準としてはギリシャ以上であり、中長期的な財政修復は待ったなしである。10年度中にも消費税増税議論が本格化しよう。また、鳩山内閣退陣を受けた菅新政権が、参院選をにらんでどのような成長戦略を打ち出すかも注目される。
年度後半には中国景気の鈍化や景気対策終了の影響などを受け10年度の実質GDP成長率2.1%、11年度1.5%程度の成長となろう。消費者物価は10年度▲0.6%、11年度▲0.1%と予測。
株式会社日立総合計画研究所 経済グループ
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