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2010年4月5日
ヒト臨床試験と相関の高い創薬スクリーニングの実現に道を拓く
株式会社日立製作所(執行役社長 : 中西 宏明/以下、日立)は、このたび、国立大学法人京都大学再生医科学研究所の田畑 泰彦教授の協力を得て、均一な極微細突起(ナノピラー)を規則的に多数配列した細胞培養シート(以下、ナノピラー細胞培養シート)を用いて、平面状に培養した従来の2次元組織体に比べ、構造が生体肝臓組織に近い3次元の肝細胞組織体(以下、スフェロイド)の培養に成功しました。
本成果は今後、新薬開発工程で行われている薬剤候補物質選抜試験(以下、創薬スクリーニング)への適用が期待されます。
新薬の開発において、薬剤の効果や生体への影響を検証する創薬スクリーニング工程では、動物による非臨床試験を行ない、その後、ヒト臨床試験が行われています。しかし、非臨床試験を通過しても臨床試験を通過できない場合があるため、新薬開発の初期段階から、ヒトの細胞を培養した組織体による創薬スクリーニングを行いたいというニーズが高まっています。
創薬スクリーニングでヒト細胞を活用するには、培養された組織体が生体並みの機能を保持する必要がありますが、立体的に細胞を培養した3次元組織体(スフェロイド)は、従来の平面状に培養した2次元組織体に比べ、生体により近い構造と機能を持つことが確認されています。
このような背景から、日立は、スフェロイド培養の研究に着手し、このたび、ナノピラー細胞培養シートを用いて肝細胞のスフェロイドを培養することに成功しました。開発技術の特徴は、以下の通りです。
ナノピラー細胞培養シートは、均一な極微細突起(ナノピラー)が規則的に配列されたシートです。半導体微細加工技術を用いて製作したシリコン金型を鋳型にして、プラスチック素材のポリスチレンに転写するナノプリント技術を用いて製作しました。
生体に近い構造のスフェロイド培養を制御するために、細胞の自律的な接着や運動(遊走)が促されるよう、開発したナノピラー細胞培養シートを用いて肝細胞のスフェロイドを培養しました。数種類のナノピラー細胞培養シートを用いて検討した結果、ナノピラー直径が2.0µm、ナノピラー間隔(二つのナノピラーの中心間距離)が4.0µmのナノピラー細胞培養シートで、最も効率よくスフェロイドが培養されることを見出しました。
本技術を用いて培養したスフェロイドと従来の2次元培養による組織体を比較したところ、培養されたスフェロイドが、より生体肝臓組織に近く、肝機能関連遺伝子の発現が向上していることを実験的に検証しました。また、スフェロイドが胆汁排泄能*1を保持していることも確認しました。これにより、スフェロイドによる、新薬開発の初期段階における創薬スクリーニングへの貢献が期待されます。
なお、今回の成果は3月18日より開催された日本再生医療学会で発表しました。
株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当 : 木下、工藤]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪1丁目280番地
電話 042-327-7777(直通)
以上