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2009年8月28日
国立大学法人東京大学先端科学技術研究センター
株式会社日立製作所
作文の授業で論理的思考を育成する効果が明らかに
国立大学法人東京大学先端科学技術研究センター(所長:宮野 健次郎/以下、東大先端研)と株式会社 日立製作所(執行役会長兼執行役社長:川村 隆/以下、日立)は、文部科学省からの委託事業「先導的教育情報化推進プログラム」の一環として、このたび共同で、デジタルペン*1で書いた生徒や教師の意見や考えを教室内のスクリーンに映し出し、クラス全員が同時に視覚的に情報を共有できる授業支援システムを開発し、中学校の作文の授業において、本試作システムが論理的思考の育成に効果があることを確認しました。
2012年度に中学校で全面実施となる新学習指導要領は、「生きる力」のための「確かな学力」の育成を強く意識したものとなっています。そのため、「知識や技能」に加えて、「学ぶ意欲」や「思考力・判断力・表現力など」を含めた幅広い学力を育てることが必要とされ、各学校では、子どもたちひとりひとりに応じた指導を行うなど、「わかる授業」を行い、「確かな学力」の育成に取り組んでいます。特に、社会からの要請としては、「確かな学力」に立脚した「論理的思考力」・「問題発見力」・「行動力・実行力」の育成が課題に挙げられています。
このような背景のもと、東大先端研 中邑賢龍(なかむらけんりゅう)教授と日立の共同研究グループは、論理的思考力の育成に向けた授業形態を新たに提案し、その効果を検証しました。
提案したのは、手書き文字を自動的に電子化するデジタルペンを用いて、生徒や教師の意見や考え方を教室内のスクリーンに映し出し、クラス全員が同時に視覚的に情報を共有する、という授業形態です。これは、「論理的思考力」を「多様な観点を参照して情報の関係性を捉える能力」と定義した上で、人は、聴覚に比べ視覚から得た情報をより効率的に処理することが可能であるという脳神経科学の知見に基づき、クラス全員が効率的に意見や考え方を共有できる授業形態として提案したものです。
提案した授業形態と検証の詳細は、以下のとおりです。
生徒がデジタルペンを使って専用の用紙に意見などを書くと、書いた内容が教師のPC上に自動的に集約され、教師の操作によりその内容が教室内のスクリーンに映し出されるシステムを試作しました。また、教師向けには、デジタルペンと紙を用いてPCの画面の操作や教材を選択するペーパーコントローラ*2を、新たに開発しました。これにより、PCの操作に不慣れな教師でも、慣れ親しんだ紙とペンを使ってIT機器を簡単に操作し、授業を進行させることができます。試作したシステムを利用することによって、教師は生徒に背を向けて黒板に文字を書く、といった動作が不要になり、常時対面しながら授業が行え、個々の生徒の学習進捗度を、PC上で一見して確認することが可能になります。
中学生が対象の作文の授業に試作システムを導入し、検証を行いました。検証では、生徒をお互いの意見を視覚的に情報共有した群としなかった群に分け、それぞれの群において、授業の前後で書かれた作文について、質的および量的観点から客観的評価を行いました。質的評価には、作文の(1)説得性、(2)客観性、(3)記述の丁寧さを、量的評価には、作文の(1)主張に関する「根拠」記述の数、(2)反対意見への言及の有無、(3)再反論の言及数、を評価基準として用いました。複数の評価者がこれらの評価基準を用いてダブル・ブラインドテスト*3を行った結果、視覚的に情報共有した群では、これらの評価項目の得点が向上したことが分かりました。
検証の結果、提案した授業形態が、中学校の作文授業において、論理的思考の育成に効果があることを確認しました。今後は、数学をはじめとする他の教科についても、効果の検証を進めていきます。
なお、本技術の詳細は、2009年8月25日からオランダで開催されている教育工学に関する国際会議EARLI09(European Association for Research on Learning and Instruction 2009)で、28日(現地時間)に発表する予定です。
図1 作文授業における効果の検証例:
授業の前後で書かれた作文について、質的ならびに量的に客観評価を行い、統計的有意差検定を行った結果
国立大学法人東京大学 先端科学技術研究センター [教授:中邑賢龍]
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株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:木下、工藤]
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以上