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Hitachi

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2009年6月15日
株式会社日立製作所
IBMコーポレーション

ゲート長20ナノメートルレベルの超微細トランジスタにおける
ランダムテレグラフノイズによる
しきい値電圧ばらつきの影響を実験的に確認

しきい値電圧が平均値の10倍以上の幅でばらつくトランジスタが
0.1%の確率で存在することを明らかに

  株式会社日立製作所(執行役会長兼執行役社長:川村 隆/以下、日立)とIBM(本社:米国ニューヨーク州アーモンク、会長:サミュエル・J・パルミサーノ、NYSE:IBM)は、このたび、トランジスタを構成するゲートの長さが20ナノメートル(nm)レベルとなる超微細トランジスタでは、原子レベルのわずかな構造欠陥によって、トランジスタ動作に必要なゲート電圧(しきい値電圧)が、平均値の10倍以上の幅でばらつくケースが、1000個に1個、すなわち0.1%の割合で存在することをはじめて実験的に確認しました。これは、ランダムテレグラフノイズ(Random Telegraph Noise/以下、RTN)と呼ばれる現象により生じるものですが、今回の実験結果は、今後、何の対策も講じなかった場合には、最先端プロセスが使われることに加え、複数のトランジスタを組み合わせてメモリセルが構成されるSRAM(Static Random Access Memory)では、RTNの影響によって、LSIそのものが動作しなくなってしまうことを示唆するものであり、回路線幅が22nmとなる次々世代の半導体デバイスの開発において、RTNのメカニズムの解析や評価の重要性を示す成果といえます。

  IT関連製品の高性能化・小型化を背景に、回路線幅が32nmや22nmといった次世代・次々世代の半導体デバイスの研究開発が進められています。微細化が進んだトランジスタでは、素子内のわずかなばらつきが、デバイスの特性に大きな影響を与えるようになることから、日立とIBMでは、2008年3月から、32ナノメートル以降の半導体の特性評価に関する基礎研究に取り組んできました。
  今回、共同研究チームが注目したRTNと呼ばれる現象は、トランジスタを構成するゲート絶縁膜に存在する原子レベルの構造欠陥に電子が捕獲または放出されるのに連動して、トランジスタを動作させるのに必要なしきい値電圧が時間的に上下に変動するというものです。古くから、トランジスタの不安定動作要因として知られていましたが、RTNによるしきい値電圧の変動量は、これまでのLSIでは、LSIの動作電圧マージンで対応できたことから、顕著な課題として取り上げられてきませんでした。しかし、今後、トランジスタの微細化が進み、ゲート長が20ナノメートルレベルとなると、RTNの要因となる構造欠陥の存在確率は減少するものの、RTNによる変動量はゲート面積に反比例することから増大し、LSIの動作電圧マージンで対応できなくなることが予測されます。

  そこで両社は、IBMの最先端プロセス技術と日立の解析技術を融合させ、20nmレベルの超微細トランジスタを試作し、初めて約1万5千個の実デバイスを用いたRTNの評価実験を行ないました。今回の評価実験から、以下のことが明らかになりました。

(1) RTNによるしきい値電圧のばらつきは、正規分布から予想されるよりも、分布の裾で大きな振幅を持つことがわかりました。具体的には、しきい値電圧のばらつきの平均値が数mVであるのに対し、70mVもの幅で変動を示すトランジスタが、1000個に1個、すなわち0.1%の割合で観察されました。
(2) 前述の確率は、将来、SRAMの設計において、何も対策を講じなかった場合には、LSIそのものの動作が困難になることを示唆するものです。

  今回の評価結果は、回路線幅が22nmとなる次々世代の半導体デバイスの開発において、RTNのメカニズムの解析や評価の重要性を示す成果といえます。

  なお、本成果は、2009年6月15日から京都で開催される半導体技術に関する国際会議「2009 Symposium on VLSI Technology」にて発表します。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 研究開発本部 中央研究所 企画室 [担当:木下、工藤]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
TEL : 042-323-1111 (代)

日本アイ・ビー・エム株式会社 広報 [担当:須山]
〒103-8510 東京都中央区日本橋箱崎町19-21
TEL : 03-3808-4119 (直通)

以上

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