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2009年6月9日
60GHz帯および80GHz帯において、高出力特性と広帯域特性を両立
株式会社日立製作所(執行役会長兼執行役社長:川村 隆/以下、日立)は、このたび、総務省の委託研究「電波資源拡大のための研究開発」のもと、60GHz帯ならびに80GHz帯の周波数を用いるミリ波無線システム用の送受信器向けに、低コスト化に有利なシリコン半導体(CMOS*1デバイス)を用いて、広い周波数範囲で、高出力の信号が得られる電力増幅器*2の回路技術を開発しました。
ミリ波無線システムは、データの圧縮・伸長を行わずに高精細な映像を無線で送信できる次世代の大容量無線通信方式として、ホームネットワーク、列車無線など公共や業務用途における利用をはじめ、自動車用レーダシステム向けに、ACC*3システムなどへの応用が期待されています。
今回開発した電力増幅器回路技術は、無線伝送システムの高性能化に関わる通信距離性能の向上とシステムの低コスト化への貢献が期待できます。
近年、家庭内においても、ギガビットEthernetなどギガビット/秒を超える高速通信が実用化されてきており、その無線化技術として、データを圧縮・伸長せずに高精細な映像を無線で送信できるミリ波通信に注目が集まっています。30〜300GHzのミリ波周波数帯を使うミリ波通信は、60GHzを中心として、日本、欧州、米国で、7GHz〜9GHz幅の広い周波数帯が開放されています。
また、80GHz帯では、自動車レーダ用に割り当てられた周波数帯域も複数存在しています。
しかしながら、これまでは、ミリ波帯送受信器における高い製造コストが、ミリ波通信の普及を阻害していました。これは、ミリ波帯の高周波領域で、高性能の送受信器を実現するためには、化合物半導体製の高周波デバイスが必要であったためです。そこで、近年、シリコン半導体の微細化の進展とともに、その高性能化が進んだことから、製造コストの安いシリコン半導体を用いたミリ波帯の送受信器の開発が活発となっています。
日立は、本年2月に、60GHzミリ波帯の全周波数領域で実用的な特性を持つシリコン半導体製のミリ波発振器の試作に成功していますが、送受信回路をオールシリコン製とするためには、発振器の信号を通信用に増幅するための電力増幅器においても、シリコン半導体を用いる必要があります。一方で、化合物半導体デバイスと比較し、シリコン半導体は耐圧*4が低いことから、電力増幅器に必要な大きな出力を得ることが難しく、これが実用的なCMOS電力増幅器の実現の障壁となっていました。
このような背景のもと、今回、日立は、伝送信号を多段階において増幅する回路技術を開発し、これにより、広い周波数範囲で高出力の信号を得ることができるシリコン半導体製のミリ波帯の電力増幅器回路技術を実現しました。
今回、開発した電力増幅器技術は、以下のとおりです。
その結果、これらの技術を活用し、2種類の周波数帯の電力増幅器を試作し、次の性能を確認しました。
これらの2種類の周波数帯において得られた出力特性は、いずれも実用的な数値であり、シリコン半導体製のミリ波帯電力増幅器の実現に道を拓く技術です。
なお、本研究は、総務省の委託研究「電波資源拡大のための研究開発」の一環として実施されたものです。
また、本成果は、2009年6月7日から米国ボストンで開催されるRFICシンポジウム(IEEE 2009 Radio-Frequency Integrated Circuits Symposium)にて、6月8日(現地時間)に発表しました。
株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:木下、工藤]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
TEL : 042-327-7777 (直通)
以上