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2009年3月27日
環境分野の計測や製造プロセスでの異物検査に応用
株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)は、このたび、直径約3マイクロメートル、質量15ピコグラム(1ピコグラムは1兆分の1グラム)程度の微量な有機物の測定を可能とする質量分析*1手法を開発しました。本手法は、測定対象の試料だけを加熱し気化する新たな局所加熱機構を開発し、その気化した成分を質量分析することで、高感度でノイズ成分が少ない測定を実現したものです。本手法により、これまで測定が困難であった微量な有機物を個別に質量分析し、その構造を特定することが可能となるため、大気中の浮遊物質の計測やデバイス製造プロセスでの異物検査などへの応用が期待されます。
近年、大気中に浮遊する粒子状の物質(SPM:Suspended Particulate Matter)が環境に与える影響の調査や、デバイスの製造プロセスの歩留まりに影響を与える異物の発生原因の解明など、微量な物質の構造分析に対するニーズが高まっています。こうした微量な物質が、金属や酸化物などの無機物である場合、電子顕微鏡を用いた元素分析によりその構造を特定することが可能ですが、有機物の場合は、炭素が含まれているという情報が得られるだけで、その構造を特定することはできませんでした。一方、有機物を加熱し気化させる質量分析法を用いて構造を特定する方法がありますが、試料が微量な場合、試料ホルダーに付着した他の成分が気化してしまいノイズが相対的に大きくなってしまうため、正確な分析が困難でした。
このような背景から、日立は、測定時に発生するノイズを抑える局所加熱機構により、数マイクロメートル程度の微量な有機物を高感度に測定する質量分析手法を開発しました。
今回開発した局所加熱機構は、極細のPt(白金)線の周囲をAg(銀)が覆う二層構造のWollastonワイヤを用い、試料を搭載し加熱する領域のAgを除去し、Ptを露出させたものです。極細のPtに搭載された試料だけを加熱し気化するため、ノイズが少なくS/N(信号対ノイズ)の高い分析が可能となりました。また、Pt製の加熱部の熱容量が非常に小さく、0.1秒以内に1000℃以上の高速加熱が可能なため、難揮発性 有機物*2や高分子有機物*3試料でも安定した質量分析が可能です。
本手法により、直径約3マイクロメートル、15ピコグラムの微量な有機物を高感度で測定することに成功しました。今後、環境調査やデバイス製造プロセスでの異物検査などへの応用が期待されます。
なお本技術は、日本大学理工学部船橋キャンパスで3月27日から開催される「日本化学会第89春季年会(2009)」で発表されます。
株式会社日立製作所 生産技術研究所 企画室 [担当:鈴木、神田]
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