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2009年3月24日
100ギガビットイーサネット向け小型受信機の試作に成功
株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)は、このたび、IT(インフォメーション・テクノロジー)機器の省電力化と小型化につながる、高精度レンズ一体型の半導体レーザとフォトダイオードを試作し、動作確認に成功しました。開発した素子は、外部レンズを用いずに光素子と光ファイバーを接続できるため、光通信用モジュールのエネルギー利用効率向上と小型化が可能です。本技術を適用することで、世界で初めて、25ギガビット/秒の光通信用モジュールを4つ組み合わせた100ギガビット/秒イーサネット用の小型光受信機を実現しました。このレンズ一体化技術は次世代の高速IT機器の実現と普及促進のためのキー技術になると期待しています。
本研究の一部は財団法人光産業技術振興協会が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託したプロジェクト「次世代高効率ネットワークデバイス技術の開発」によるものです。
インターネットの急速な発展と家庭用光ファイバー通信サービス(FTTH*)などブロードバンド技術の普及に伴い、光ファイバー通信網の情報伝送量が今後ますます増大することが見込まれています。これに伴ってIT機器の普及が一層進むとともに、2025年にはIT機器の消費電力が現在の約5倍に増大すると見込まれています。このため地球環境保全に対する配慮から、IT機器の低消費電力化、小型化の要求が高まっています。日立では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託のもと、メトロ網の大規模ルータに用いる100ギガビット/秒イーサネットおよびルータ内光配線への適用を目指して、光送受信モジュールの省電力化、小型化技術の開発に取組んでいます。
光送信モジュールには、光信号を生成する半導体レーザと、光信号を光ファイバーに接続する際に光信号を収束し光信号の損失を抑制するための外部レンズが使用されています。今後、一層の小型化を図るためには、レーザとレンズの一体化が求められていますが、その実現には高度な加工技術が必要であり、その実現が課題となっていました。今回日立は、半導体レーザと外部レンズの一体化技術を開発し、小型でエネルギー利用効率の高い光送信モジュールを実現するとともに、これを応用した受信モジュールの試作に成功しました。技術の詳細は以下の通りです。
光信号の損失を抑制し、レンズを一体化するためには、放射状に射出されるレーザを平行に近づけるための放物線形状を実現する高度な加工技術が必要となります。今回、その表面を理想的な放物線形状(非球面)に加工する技術の開発に成功しました。本技術を用いて光ファイバー通信に適した1.3µm波長帯の高速半導体レーザに非球面レンズを一体化した素子を試作した結果、外部レンズを用いずに直接光ファイバーに接続した際の光結合効率が、実用上求められる50%を越えることを確認し、さらに10ギガビット/秒を超える高速動作を達成しました。
これまで、受光領域の小さい高速フォトダイオードではモジュール実装時の素子位置ずれに対する許容範囲が小さいという課題がありました。今回、レンズ一体化技術を、光ファイバーで伝送されてきた光信号を受信するフォトダイオードに応用することで、受光領域の小さい高速動作用フォトダイオードにおいて、受信モジュールに実装する際に位置決めが困難であるという問題を、レンズの一体化により解決することができました。25ギガビット/秒の高速動作可能なフォトダイオードにレンズを一体集積したところ、モジュールに素子を実装する際に許容される位置精度が従来に比べて2倍以上に拡大することを確認しました。
この高い光結合効率を特徴とするレンズ一体型フォトダイオードを用いて100ギガビット/秒イーサネットのIEEE標準化仕様に準拠した25ギガビット/秒x4波長の受信モジュールを試作し、4波長で感度の揃った受信特性を得ることに成功しました。さらに、低電力動作に適したCMOS受信回路を開発し、上記フォトダーオードと組み合わせて100ギガビット/秒イーサネット用光受信モジュールを試作しました。一波長あたり25ギガビット/秒の高速受信動作を確認しました。
本成果は、2009年3月22日から26日まで、米国・サンディエゴで開催されている光ファイバー通信会議「OFC/NFOEC (The Optical Fiber Communication Conference and Exposition and The National Fiber Optic Engineers Conference )」で発表します。
株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:木下、工藤]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ケ窪一丁目280番地
TEL : 042-327-7777 (直通)
以上