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Hitachi

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2009年3月10日

232℃の低温で光素子を基板に接合できる
鉛フリー薄膜はんだ技術を開発

錫/銀/金の三層構造により歩留まり低下の抑制と表面の酸化防止を実現

  株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)は、このたび、光通信機器や光ディスクドライブに用いられる光素子を、従来より40℃以上低い232℃の低温で基板に接合することで、製造時における歩留まりの低下の抑制と、はんだ表面の酸化防止を実現した鉛フリー薄膜はんだ技術を開発しました。開発した薄膜はんだは、融点の低い錫(スズ、Sn)薄膜を母体とし、Snの拡散を防ぎ酸化の防止に貢献 する銀(Ag)薄膜を加え、酸化を抑制する金(Au)薄膜で挟み込むSn/Ag/Auの三層構造とすることで232℃の低温による接合とはんだ表面の酸化防止を両立させたものです。
  これにより、従来光素子と基板を接合する際に用いられていたAu-Sn合金の薄膜はんだ(融点278℃)と比べ、40℃以上低い温度での接合が可能になり、熱による歪みが30%低減できることから、製造時の歩留まりを低下させる原因となる光素子の特性の変化を抑えることができます。加えて、薄膜はんだの表面に酸化膜が形成されないため、光素子の性能を劣化させるフラックス処理*1が不要で、これまで以上に信頼性が高く環境負荷の少ない光素子の基板への実装作業を実現します。
  なお本技術は、日立協和エンジニアリング株式会社(取締役社長:大森 義文/以下、日立協和)と共同で開発したものです。

  光素子は、大量の情報を高速に伝達する光通信機器やDVD、BD(Blu-Ray Disc)などの光ディスクドライブに必要な光源であることから、放送と通信の融合の実現に不可欠なものとなっています。光素子はいったん基板に接合された後、入出力端子を実装した光モジュールの形で光ディスクドライブなどの装置に組み込まれます。従来、光素子の基板への接合は、あらかじめ基板上に厚さ1〜5µm(マイクロメートル)*2のAu-Sn合金の薄膜はんだを形成し、そこに光素子を押し当て280℃以上に加熱することで行なっていました。しかし、基板と光素子の熱膨張率に差があるため、接合後に室温にもどると光素子が歪み、光素子の特性が変化する場合があることから、より低温の薄膜はんだ技術が望まれていました。また、薄膜はんだに融点が低いSnを使うためには、表面に形成される酸化膜を溶剤で除去するフラックス処理を施す必要がありますが、この処理を行なうと、溶剤の残りが光素子に付着してレーザの進路を妨げ、性能を劣化させるという問題がありました。
  このような背景から、今回、日立は日立協和と共同で、従来のAu-Sn合金の薄膜はんだに比べ40℃以上融点が低く、薄膜はんだ表面の酸化を防ぐ鉛フリー薄膜はんだ技術を開発しました。

開発技術の詳細

(1) 低融点と酸化抑制の両立

  低融点とはんだ表面の酸化の抑制を両立するために、融点が低いSnを母体とし、表面の酸化を抑制する効果のあるAuで被覆する構造としました。

(2) Sn/Ag/Au三層構造によるSnの拡散の抑制

  SnとAuは拡散が速いため、Sn/Auの二層ではSnがAuの層を通り抜け表面が酸化します。そこでSnの拡散を抑制して表面の酸化を防止するために、(1)に加え、Snの拡散を防ぐAgを間に挟み、Sn/Ag/Auの三層構造を有する薄膜はんだを開発しました。

  開発した薄膜はんだは、232℃以上に加熱すると、はんだ全体が瞬時に溶融して接合することができます。室温へ冷却した際に、光素子に発生する歪みを30%低減できるため光素子の特性の変化を抑制することが可能です。また、AgとAuによる酸化防止効果により、はんだ接合時のフラックス処理が不要です。さらに、材料に鉛を含まず、希少資源である金の使用量を従来のはんだに比べ96%抑制することなど、環境負荷の低減にも貢献します。今後、日立と日立協和は、さまざまな光部品の実装分野への展開を進めていく予定です。

  なお本技術は、3月11日から13日に、横浜市で開催される「第23回エレクトロニクス実装学会春季講演大会」において発表します。

*1
フラックス処理 : 接合前のはんだ表面に、酸化皮膜を除去する効果のある溶剤を塗布すること。
*2
1µmは1mmの1000分の1。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 生産技術研究所 企画室 [担当:鈴木、神田]
〒244-0817 神奈川県横浜市戸塚区吉田町292番地
TEL : 045-860-1678(直通)

以上

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