このニュースリリース記載の情報(製品価格、製品仕様、サービスの内容、発売日、お問い合わせ先、URL等)は、発表日現在の情報です。予告なしに変更され、検索日と情報が異なる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。なお、最新のお問い合わせ先は、お問い合わせ一覧をご覧下さい。
2009年2月2日
端末を用いることなく、人や物の位置測定が可能に
株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)は、このたび、UWB*1無線電波の反射波の変化から、屋内で、測定対象物にタグなどの端末を用いることなく、人や物の位置を測定する技術を開発し、その原理実証に成功しました。本技術は、UWB無線電波の物体にあたる際に多方面に反射する傾向や、ナノ秒(10億分の1秒)程度と時間的に短いパルス波形が一定間隔で現れるインパルス波形であることを利用しています。UWB無線電波が屋内の壁や人などにあたり、反射を繰り返して受信機に到達した反射電波の信号解析を行うことによって、人や物の位置を推定するもので、端末などを使用することなく、位置測定を行うことが可能です。
本技術を用いると、遮蔽物がある場合でも反射波が回り込むことにより、見通しのきかない場所であっても、電波が届くあらゆる場所での測定が可能となります。端末を用いることなく、人や物の位置を測定する技術として、将来、物品の管理や人の位置に応じた照明・空調管理など省エネへの応用、また、セキュリティや安全支援(危険領域への立ち入り検出)など、さまざまな分野への応用が期待できます。
近年、セキュリティや物流、建設、生産管理、業務管理などのさまざまな分野で、人や物の位置を特定する測位技術が利用されています。代表的な測位システムであるGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)は、専用の受信端末を使用して人工衛星からの電波を受信し、位置を測定することができますが、屋内の電波が届かない場所では利用することができません。このため、屋内向けの測位システムとして、無線LANなどの無線電波基地局を複数台設置し、端末を用いて位置を測定する方式が開発されています。また、以前から、端末を用いずに、不特定の人や物の位置を測定する方式として、超音波やレーダ電波などを測定対象物に照射し、その反射電波から距離を測定する方式や、カメラで直接撮影する方法などが知られています。しかしながら、これらの方式はいずれも測定対象物と装置の間に遮蔽物があると、電波や信号の送受信や撮影ができないために、見通しのきかない屋内で全領域をカバーするためには送受信機の装置台数を増やす必要がありました。そこで、測位技術を一層普及させていくためには、見通しのきかない場所でも少ない装置構成で高精度な位置測定を行えることに加え、タグを持たない不特定の人や物も対象に測位を行える技術の開発が求められていました。
このような背景のもと、日立は、UWB無線電波を用いて、見通しのきかない屋内でタグなどの端末を用いることなく、人や物の位置を測定可能な新方式の測位技術を開発し、その原理実証に成功しました。開発した技術は、ナノ秒程度の短いパルス波形が一定間隔で現れる、インパルス波形をもつUWB無線電波を送信機から発信し、屋内の壁や物体から反射するUWB無線電波を受信機で測定する方式です。UWB無線電波は、直進性のある短いパルスの繰り返し波であるため、屋内空間を人や物が移動した場合に、その位置に応じて反射電波の信号が敏感に変化します。この反射波の信号を解析すれば、移動する人や物の位置を測定することが可能です。開発技術は、タグなどの端末が不要で、また反射電波が届く範囲であれば遮蔽物の裏側の人や物の位置測定を行うことが可能という特徴を持っています。
今回、一対のUWB小型送受信装置を用いて3m×4mの領域で人の位置を測定したところ、測定誤差1mで、70%の確率で位置を測定できることを確認しました。
今後は、測定対象数を増やすとともに、測定精度の向上をめざします。
なお、本成果は、1月18日から米国サンディエゴで開催された「IEEE Radio and Wireless Symposium」にて発表しています。
株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:木下、工藤]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
TEL : 042-327-7777 (直通)
以上