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2008年11月4日
従来の5倍を超える強度を持つ実用的な圧粉磁心を実現
株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)は、日立粉末冶金株式会社(取締役社長:藤波 弘/以下、日立粉末)、株式会社日立産機システム(取締役社長:椎木 清彦/以下、日立産機)と共同で、モータの心臓部分である鉄心(コイルを巻いた鉄の芯)に、任意の立体的な形状を作ることが容易な事から、モータ小型化に有用な圧粉磁心と呼ばれる鉄粉を高密度で圧縮した材料を採用し、さらにその強度と形状を改良することで、従来に比べモータの軸方向の長さを約2分の1に、効率を5%向上させる小型モータ技術を開発しました。
今回開発したのは、圧粉磁心の強度を特殊な熱処理により従来に比べ5倍に高める技術と、圧粉磁心の形状を小型化に適した立体的な形状とし、鉄心の巻線の端部など、モータ内部の余分な空間を減らす技術で、これらの技術を用いて出力100Wの産業用モータを試作した結果、従来に比べて軸方向の長さを約2分の1に、またモータ効率*1も5%向上できることを確認しました。
本技術は、産業機器や、家電、自動車など幅広い分野におけるモータ搭載機器のさらなる小型化や軽量化に貢献することが期待されます。また、本技術を用いたモータは、鉄心、コイルなどの部品の分離回収が容易な構造であることから、銅をはじめとする構成材料の資源リサイクルにも貢献します。
モータの原理は、鉄心に巻いたコイルに電気を流すことによって磁石回転子(ロータ)を回転させるものですが、このとき、鉄心に渦電流*2が流れることで電磁石の作用が弱まるのを防ぐため、従来のモータでは薄い電磁鋼板*3を積み重ねてブロック状にした鉄心が使用されていました。しかしながら、薄い鋼板を積み重ねるため、複雑な立体形状は作りにくく、コイルを巻くための余分な空間が必要で、モータの小型化が困難でした。
一方、モータの小型化に貢献する材料として、近年、圧粉磁心が注目されています。圧粉磁心は、鉄粉を高密度で圧縮して成形したもので、任意の立体的な形状を作ることが容易なことから、モータの設計の自由度を向上させることができ、その結果、モータ内部の余分な空間を減らすことができます。また、内部の鉄粉間が電気的に絶縁されているため、電気抵抗が高く渦電流が流れないという特長があります。しかし、従来の圧粉磁心は、鉄粉の密度が低いことから強度が低く、また、磁気特性*4が電磁鋼板に比べて劣るという課題がありました。
このような背景から、日立、日立粉末、日立産機は、特殊な熱処理により圧粉磁心の強度を従来に比べ5倍に高める技術と、圧粉磁心の形状を小型化に適した立体的な形状とする技術を開発し、これらの技術をモータの鉄心に用いることで、従来に比べてモータの軸方向の長さを約2分の1にできるとともに、モータ効率を5%向上できることを確認しました。今後、本技術を、産業機器や、家電、自動車など、幅広い分野におけるモータ搭載機器に展開していきます。
なお、本開発の一部には、東北大学大学院工学研究科および金沢工業大学工学部との共同研究の成果を活用しています。
従来の圧粉磁心の密度不足、強度不足を解決するために、熱処理された圧粉磁心を特殊な雰囲気*5で再度熱処理することで、圧粉磁心を高密度・高強度にする技術を開発しました。一般的な圧粉磁心の曲げ強さは30〜50Mpa程度ですが、本技術により曲げ強さを5倍以上の強度とすることができました。
立体的な形状を作ることができる(1)の圧粉磁心を鉄心に用いることで、モータの設計の自由度を向上させることが可能になりました。これにより、今回、従来モータの軸方向に配置されていた巻線端部、およびそれらの接続処理部を省略することができ、また、モータの極数を最も小型化に適した極数とすることで、従来と比べてモータの軸方向の長さを約2分の1にすることができました。さらに、巻線端部を省略したことで、巻線の抵抗が減少し、モータ効率を従来よりも5%向上させることができました。
株式会社 日立製作所 日立研究所 企画室 [担当:鈴木]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
TEL : 0294-52-7508 (直通)
以上