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2008年9月17日
株式会社日立製作所(社長:古川 一夫/以下、日立)は、このたび、日立ビークルエナジー株式会社(取締役社長:川本秀隆/以下、HVE)と共同で、高速ディーゼルハイブリッド鉄道車両向けのリチウムイオンバッテリーシステムを世界で初めて開発しました。本システムでは、これまでのディーゼルハイブリッド鉄道車両向けのシステムに比べて、最大4倍の大容量バッテリーを監視制御するコントローラと、 約2倍の冷却性能を実現する構造を新たに開発することにより、高速鉄道車両で要求される、大容量、高出力のバッテリーシステムを実現することが可能になります。本開発により、リチウムイオンバッテリーシステムを、時速200キロメートル以上の高速鉄道車両へ用いることが可能となるため、ディーゼルハイブリッド鉄道車両のさらなる普及が期待されます。
近年、地球温暖化防止の観点から、低炭素社会を実現するための環境対策が世界規模で進められています。鉄道車両においても、世界で10万両以上が運用されているディーゼル鉄道車両に対して、化石燃料使用量の削減や排気ガスによる大気汚染の抑制などの環境対策が必要となっています。
日立は、ディーゼル鉄道車両への環境対策として、減速時に発生するブレーキの回生エネルギーをバッテリーに充電し、走行時の動力源として、充電したエネルギーを再利用するディーゼルハイブリッド鉄道システムの実用化に取り組んできました。これまで開発したシステムは、化石燃料の使用量を削減するとともに、有害物質である窒素酸化物などの排出量を大幅に低減することを可能にしていますが、今後のさらなる普及のためには、高速化と大量輸送に対応するバッテリーシステムの開発が課題となっています。
このような背景から、日立は、大容量や高出力を実現するバッテリーを監視制御する技術や冷却性能を高める構造を新たに開発しました。今回開発した技術の特長は以下のとおりです。
大容量のバッテリーシステムは、多数のセルを直列および並列に接続することで実現するため、コントローラで管理するセル数と直列数の増加に伴う高電圧に対応する必要があります。この課題に対応するため、直列接続されたセルを管理する直列コントローラを新たに設け、上位コントローラは並列接続数に対応した管理を行う方式を開発しました。また、高電圧に対応するため、コントローラを複数の基板で構成し、隣接する電位の基板とのみ接続することにより、それぞれの基板が分担する絶縁電圧を低減するシステムを実現しました。
高速鉄道車両では、速度が速く、減速時に充電する電力量も大きいことから、充電時に発生する熱が問題となります。この課題に対応するため、バッテリーモジュールと冷却ダクトを一体化し、気密性を確保することで、少ない冷却風で効率よくバッテリーを放熱できるモジュール構造を開発しました。また、各モジュールの冷却ダクトからの排気を、共通ダクトを介してファンで排出することで、各モジュールの温度を均一かつ充分に冷却することが可能になります。本構造により、セルの冷却性能が従来比で約2倍に向上するため、バッテリーシステムの出力密度を大幅に増加することができます。
高密度リチウムイオンバッテリーは、自動車、鉄道をはじめとする交通分野において、環境負荷の少ない動力源として実用化が進められています。日立とHVEは、今後も安全・快適・環境負荷の少ない交通社会の実現をめざし、高性能バッテリーシステムの開発を進めていきます。
なお、本技術は、9月23日から26日にドイツのベルリンメッセで開催されるInnoTrans2008 (International Trade Fair for Transport Technology)に出展します。
株式会社日立製作所 日立研究所 企画室 [担当:鈴木]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
TEL : 0294-52-7508 (直通)
以上