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2008年5月15日
株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)は、このたび、主にパッケージエアコンのファンモーター向けに、省エネルギーでかつ低回転域(100〜300rpm)での騒音を低減する、マイコンとワンチップインバータICの新セットを開発しました。本セットは、ファンモーターを低騒音で駆動するための新しい信号制御方式と、それに対応するインバータICの組み合わせにより、従来品と比較して100rpm時の騒音を3dB*低減することが可能になり、インバータの特長である省エネルギーと、ファンモーター駆動音の低減による、オフィスなどの快適な空間提供双方を実現できます。また、本セットのワンチップインバータICの定格は、電圧500V、電流2Aです。なお、本セットは、本日よりサンプル配布を開始します。
近年、エアコン向けファンモーターは、省エネルギーを推進するために、よりエネルギー効率の高い製品が求められており、従来の誘導モーターから、高効率を特長とした永久磁石同期モーターへの移行が進んでいます。また、同時に、エアコンが多くの機能を有することに伴い、幅広い回転域を制御することが求められています。しかし、永久磁石同期モーターにおける低回転域での低騒音駆動は難しく、今までは、モーター内部、あるいはファンに防振ゴムなどを用いて騒音を低減していました。
モーターの騒音は、インバータの出力電圧波形を正弦波に近づけるほど低減できます。しかし、インバータの制御には、回路短絡防止の目的で、デッドタイムと呼ばれる、上下の出力素子を同時にオフにする期間を設ける必要があり、これにより生じる出力電圧の誤差を補正しなければ出力電圧波形が正弦波にならず、波形が歪んでしまいます。この波形の歪みは、特に低回転域での駆動時に影響が大きく、騒音増加などの課題となっていました。この課題を解決する方法として、デッドタイム補償技術と呼ばれる、出力電圧の誤差を補正する技術によって、出力電圧波形を正弦波に近づける方法が一般的でしたが、正確な補正を行うためには高価な部品が必要でした。また、デッドタイムを短縮すれば、出力電圧の誤差そのものが低減し、出力電圧波形の歪みが小さくなりますが、インバータの上下の出力素子が同時にオンとなる短絡リスクが高まるため、短縮には限界がありました。このような理由から、低回転域での騒音低減が困難でした。
そこで日立は、今回、独自の新しい制御方式とインバータICの組み合わせによって、ファンモーターの低回転域での低騒音駆動を実現しました。補正の必要がないレベルまで波形の歪みを小さくするために、通常2〜3マイクロ秒のデッドタイムを約1マイクロ秒まで短縮し、なおかつ、ノイズなどの影響を原因とした入力信号異常時の、インバータの上下の出力素子が同時にオンとなる短絡リスクを原理的に排除しました。これは、従来、デッドタイムを付加した3相6本の出力素子制御信号を外部で生成してインバータICに入力していた方式(6入力方式)を、上下の出力素子制御信号が同時にオンとならない3相3本の信号のみを外部で生成してインバータICに入力する方式(3入力方式)にするとともに、インバータIC内部でデッドタイムを付加した3相6本の出力素子制御信号を生成することで実現しています。
日立は、高効率制御により、エネルギー消費量を低減することができるなどの利点を持つパワーデバイスの開発に注力しており、高耐圧ワンチップインバータICは、世界のエアコン用ファンモーター市場で高いシェアを確保しています。今回開発したセットは、日立グループが家電・産業分野で培ってきたモーター制御技術と重電分野で培ってきたパワーエレクトロニクスの技術を融合することで実現しました。
日立は、本セットを、ファンモーターへ搭載する重要な製品と位置づけ、今後、対応するモーターの範囲をさらに広げ、新シリーズとして製品ラインナップを拡充するとともに、省エネルギーによるCO2削減と快適な生活環境の提供に貢献していきます。
型番 | ECN3920 |
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定格電圧 | 500V |
定格電流 | 2A |
最大回転数 | 2200rpm |
駆動方式 | 180度正弦波駆動 |
開発品の外観写真
株式会社日立製作所 電力グループ 電機システム事業部 パワーデバイス本部 [担当:桜井、前田]
〒319-1221 茨城県日立市大みか町五丁目2番2号
TEl : 0294-55-6651(直通)
以上