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2008年2月13日
株式会社日立製作所
鉛の副産物として採掘され埋蔵量の少ないビスマス系鉛フリーガラスの代替に道を拓く
株式会社日立製作所(社長:古川 一夫/以下、日立)は、このたび、日立粉末冶金株式会社(執行役社長:藤波 弘/以下、日立粉末)と共同で、有害な鉛や希少資源のビスマスではなく、バナジウムを主原料とする低融点ガラスを開発しました。本技術は、バナジウムのガラス構造を層状構造から三次元の構造に変化させ、さらに構造を緻密にすることで、封着部の気密性や耐湿性などを向上させたものです。また、開発したガラスは、電子伝導機能を付加することで、帯電を防止するような被覆材として利用することも可能になります。本技術により、地球環境への負荷が懸念される有害な鉛や希少資源で高価なビスマスを原料としない鉛フリーガラスの封着材としての利用が可能となります。
これまで低温ガラスの封着や被覆には、鉛系低融点ガラスが用いられていましたが、地球環境保全の観点から、近年では、RoHS*1指令に対応した、有害な鉛を含まないビスマス系低融点ガラスが使用されています。しかし、ビスマスは主に鉛の副産物として採掘されるため、環境保全に課題が残ること、さらにその埋蔵量が著しく少ない希少資源であることから、安定供給の確保が懸念されています。また、ビスマス系ガラスの封着や被覆の温度は450℃以上になり、鉛系ガラスの400℃に比べると高めであるなどの課題があるため、環境負荷の少ない低融点ガラスの開発が望まれていました。
このような背景から、日立と日立粉末では、低温化と低熱膨張化が期待できるバナジウム系ガラスに着目し、日立が有するガラス構造制御技術などの材料基盤技術と、日立粉末が有する粉末塗料技術とを融合して新たな鉛フリーガラスの封着材を開発しました。今回、開発した技術の特長は以下の通りです。
従来のバナジウム系ガラスは、吸湿性が高く、大気中の水分で溶けてしまうという不安定な材料でしたが、今回、ガラスの組成を調整し、バナジウムの価数*2を5価から4価へ制御することにより、ガラス構造を水分子の影響を受けやすい層状から、より緻密な三次元の構造へ変化させることが可能になりました。さらに、水分子が入り込む隙間にイオン半径の大きい元素を導入することで、気密性や耐湿性を抜本的に改善しました。
ガラスの組成を調整し、バナジウムの総量とバナジウムの5価と4価の割合を変化させることによって、電子の移動を制御し、これにより、導電性を制御する技術を開発しました。
また、開発したバナジウム系低融点ガラスは、ビスマス系よりも低い450℃以下で封着や被覆できることを確認しました。電子伝導性を制御できる特徴は他のガラスにはない性質で、今後のさらなる応用が期待されます。また、埋蔵量が豊富なバナジウムを主原料として利用しているため、低コストで安定供給を維持することが可能です。今後、日立と粉末冶金は電子デバイスの封着や被覆など、様々な製品分野での展開を進めていく予定です。
日立は、今後も、地球環境への負荷を低減する新しい技術の開発や、その実用化に向けた取り組みを推進していきます。
なお、本技術の詳細は、2月13日から15日に東京ビッグサイトで一般公開される国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2008)に出展します。
株式会社日立製作所 日立研究所 企画室 [担当:鈴木]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
TEL : 0294-52-7508(直通)
以上