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2008年1月30日
株式会社日立製作所
株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫/以下、日立)は、このたび、電気・電子機器を使用する際に、機器内の温度が200℃まで上昇しても、1,000時間以上、部品接続部に劣化のない接続状態を維持できる鉛フリーはんだ接続技術を開発しました。本技術は、部品の接続部に銅含有率の高い「スズ-銅系鉛フリーはんだ」とニッケルめっきを組み合わせ、銅-スズ化合物がニッケルめっき上に層を形成するという特性を見出し、「スズ-銅系鉛フリーはんだ」と被接続部材との間に、反応を抑制する層を形成することで、耐熱性を向上させたものです。これにより、従来、鉛を多く含んだ「高鉛はんだ」が使用されてきた、電気・電子機器の電力変換に用いるパワーエレクトロニクス製品の分野において、鉛フリー化を実現することが可能となります。
鉛は生物に対する強い毒性を有することが報告されているため、これまでに様々な分野でその使用規制が進められてきました。電気・電子機器の部品接続に使用されているはんだに関しても、EU(欧州連合)で、2006年7月1日に施行されたRoHS指令*1により、鉛の使用が制限されているため、現在、電子部品をプリント基板に接続する際には、「スズ-銀系鉛フリーはんだ」等が使用されています。しかし、パワーエレクトロニクス製品の半導体素子の接続部は、使用時に125〜175℃の高温になるため、高温領域に対応できない「スズ-銀系鉛フリーはんだ」ではなく、耐熱性の高い、鉛含有率85%以上の「高鉛はんだ」が、EUのRoHS指令から適用除外材料として使われてきました。
今後、省エネルギーの観点からも、電力を効率よく使用することができるパワーエレクトロニクス製品の需要は伸びることが予想されており、さらに、パワー半導体の大容量化に伴い素子の発熱量が増大することや、炭化珪素、窒化ガリウムのような高温で動作する素子が使用されることにより、素子接続部の温度は200℃近くまで上昇することが予想されます。また、「高鉛はんだ」には85%以上もの鉛が含まれており、この分野での鉛フリーはんだ接続技術の開発が切望されてきました。
そこで、今回、日立は、200℃の高温でも、「スズ-銀系鉛フリーはんだ」と比べて、接続部の劣化を半分以下に抑制できる鉛フリー接続技術を開発しました。開発した技術は以下のとおりです。
電子部品をプリント基板に接続する際には、所定の温度で全てのはんだが溶融し、均一な組織が得られる共晶組成*2の「スズ-銀系鉛フリーはんだ」が一般に用いられています。しかしながら、このはんだを200℃の高温で長時間保持すると、一般に反応速度が遅いと言われているニッケルめっきを用いても、接続部界面にニッケルとスズの金属間化合物が成長し、空隙が生じて接続部が劣化してしまいます。本開発では、銅含有率が高い非共晶組成の「スズ-銅系鉛フリーはんだ」に着目しました。このはんだは、はんだ接続時の加熱により、溶融後、ニッケルめっき上に安定した銅-スズ化合物(Cu6Sn5)層を形成します。この銅-スズ化合物が、はんだとニッケルめっきの直接接触を防ぐことで、はんだと被接続部材の反応を抑制することが可能となり、高温での接続部の劣化を抑制することに成功しました。また、この際、銅-スズ化合物層以外の残りの相はほぼ均一な「スズ-銅共晶はんだ」(Sn-0.7%Cu)となり、「スズ-銀系鉛フリーはんだ」と同様な柔軟性を維持できることを確認しました。
高鉛はんだと同様なプロセスで接続を行った結果、200℃の高温において、一般的に用いられている「スズ-銀系鉛フリーはんだ」の2倍以上である1,000時間以上、劣化のない接続状態を維持できることを確認しました。
開発した接続技術は、高温での接続保持を実現するもので、これにより、パワーエレクトロニクス製品の半導体素子などの接続部における鉛フリー化が可能になります。また、今回採用した「スズ-銅系鉛フリーはんだ」は、箔、ワイヤーおよびペーストの形状にも加工できるため、種々の接続方式に対応することが可能です。今後は、実用化に向けた検討を進めていきます。
日立は、今後も、地球環境への負荷を低減する新しい技術の開発や、その実用化に向けた取り組みを推進していきます。
なお、本技術の詳細は2008年2月5〜6日に社団法人溶接学会マイクロ接合研究委員会主催で開催されるMate2008にて発表します。
株式会社日立製作所 生産技術研究所 企画室 [担当:神田]
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TEL : 045-860-1678 (直通)
以上