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2007年9月18日

摩擦攪拌接合装置における温度制御と接合部分の耐久性向上を実現

強度に優れ、リサイクルしやすい超微細粒鋼板の自動車用材料等への応用に道を拓く

  株式会社日立製作所 日立研究所(所長:小豆畑 茂/以下、日立)は、高い強度を持つ次世代の鉄鋼材料として期待されている超微細粒鋼板の特性を低下させることなく接合する技術を開発しました。鉄道車両の接合等に用いられている、摩擦攪拌接合を、従来のアルミニウム合金用から超微細粒鋼板用に拡張するために、接合部の温度制御および高圧荷重が可能な接合装置を新たに開発するとともに、接合工具の耐久性向上を実現したものです。その結果、超微細粒鋼板の接合部の強度劣化が、わずか2%に収まる高品質な接合を実現しました。強度に優れ、リサイクルが容易な超微細粒鋼板を自動車用材料などとして使用することに道を拓く技術として期待されます。
  なお、本成果は、財団法人金属系材料研究開発センター(理事長:二村 文友)が、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(理事長:牧野 力)からの委託により実施した「環境調和型超微細粒鋼創製基盤技術研究体」の活動の中で得られたものです。

  超微細粒鋼板は、特殊な元素を添加することなく、結晶の大きさを1〜2マイクロメートル(マイクロは、100万分の1)程度に小さくすることで高い強度を実現した材料です。従来と同等の強度を得るための鋼材使用量を減らすことができ、構造部材の軽量化が可能です。また、特殊な強化元素を添加しないことから、リサイクルが容易な素材といわれています。超微細粒鋼板では、高温の圧延加工工程で大きな加工ひずみを与えた後に急速に冷却し、原子の運動を止めることで、結晶のサイズが大きくなることを抑えています。このため、溶接などで原子の運動が活発になる温度にまで加熱されると、結晶が大きくなり強度が低下してしまいます。

  鋼板などの金属材料は部品同士を溶接などで接合して、構造部材に組み立てていきます。しかし、従来から使われている溶接技術は接合部の材料を加熱して溶かすため、超微細粒鋼の溶接に用いるには課題がありました。そこで、日立ではアルミニウム合金の接合で実績のある、「摩擦攪拌接合(FSW: Friction Stir Welding)」技術に着目しました。摩擦攪拌接合は、接合する二つの接合材料に円柱状の接合工具を回転させながら挿入した後、接合部に沿って接合工具を移動させることで接合する技術です。接合材料と接合工具との接触部で発生する摩擦熱で接合材料を固体のまま軟化させて接合します。材料を液体にまで溶かさないため、溶融溶接よりも材料の特性低下を小さくできます。しかし、従来の摩擦攪拌接合技術は、アルミニウム合金のように接合温度が低い材料に対して実用化されていたため、超微細粒鋼板の溶接での使用に向けて、接合温度の制御など新たな技術開発が必要でした。
  今回開発した技術の特長は以下の通りです。

1.接合部の強度特性劣化防止技術

  接合時に発生する熱による材料の特性低下を最小限に抑える接合技術を開発しました。材料への入熱量が増加すると、接合部が高温になり材料の特性が低下してしまいます。逆に、入熱量が小さすぎると不完全な接合になります。そこで、超微細粒鋼板の高温での塑性変形特性に合う最適な入熱量を制御する技術を開発し、引張強度が接合前の材料とほぼ同等、疲労強度が98%の特性を保持したまま接合できることを確認しました。

2.高精度、高荷重接合装置

  超微細粒鋼板の接合では接合工具および接合材料の温度が1000℃程度にまで上昇します。このため、接合工具などが熱膨張して、接合部への押し付け量が変化して安定な接合の妨げになります。そこで、接合工具を冷却するとともに、押し付け量を自動的に制御して、熱膨張の影響をなくす技術を開発しました。
  また、超微細粒鋼板はアルミニウム合金と比較して変形抵抗が大きいため、接合中に接合装置に大きな反力が発生します。そこで、従来の約5倍の荷重をかけられる専用の装置を新たに開発しました。

3.接合工具の耐久性向上

  従来のアルミニウム合金の摩擦攪拌接合では、主に鉄系の接合工具を使用しますが、超微細粒鋼板の摩擦攪拌接合では、鋼板が軟化する温度がアルミニウム合金と比較して高いため、接合工具自身が摩擦熱で損傷してしまいます。そこで、高温でも強度が低下しないセラミックス系の多結晶立方晶窒化硼素(Polycrystalline Cubic Boron Nitride: pcBN)に着目し、窒化硼素の含有量を最適にした接合工具を用いることにより、磨耗量を10分の1に低減でき、耐久性を向上することができました。

  今回開発した技術により、接合部の強度が元の超微細粒鋼板の98%程度となる接合を実現することができました。これは、強度に優れ、リサイクルのしやすい超微細粒鋼板を自動車用材料などに使用することに道を拓くもので、材料として必要な鋼材量を少なくでき、軽量化や省エネルギー、鉄鋼リサイクルなどに貢献できる技術として期待されます。

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 日立研究所 企画室 [担当:鈴木]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
TEL : 0294-52-5111(代表)

以上

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