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2007年9月10日
マイクロ波を照射する方式を用いて、
連続して薬液の化学反応を可能にする技術を開発
従来のヒーターを用いた加熱方式に比べて
薬液の反応処理量を最大8倍に
株式会社日立製作所 機械研究所(所長:福本 英士/以下、日立)は、このたび、薬液の合成を高速で効率よく行うことができる「連続処理型マイクロ波化学反応装置」の開発に成功しました。本開発は、薬液の流れを調整できるらせん状のチューブの採用により、薬液を連続して流すことができる構造にしたことと、マイクロ波の分布を調整可能にした電子レンジでの電磁波シミュレーション技術を用いて、チューブを流れる薬液にマイクロ波を照射したとき、薬液がマイクロ波によって加熱される効率を最大にできる技術を開発したことにより実現したものです。これにより、従来、連続して薬液を反応させる際に用いていたヒーターでの加熱方式に比べて、薬液の化学反応の処理量が最大で8倍に増大できるようになります。なお、本成果は、日立がマイクロ化学プロセス技術研究組合(理事長:佐々木 格)の一員として、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(理事長:牧野 力)の委託事業「革新的マイクロ反応場利用部材技術開発」(プロジェクトリーダ:長谷部 伸治 京都大学教授)の実施により得られたものです。
マイクロ波は、波長が100µm〜1mの電磁波であり、液体に照射すると、ヒーターでの加熱に比べて効率よく温度を上げることができます。このため、マイクロ波を照射して液体を素早く高温にすることにより、化学反応を高速で効率よく行えるため、化成品や医薬品などの合成を効率よく行えるようになります。しかし、従来の「マイクロ波化学反応装置」は静置したフラスコや試験管にマイクロ波を照射する「バッチ方式」で利用されており、マイクロ波を照射した後にフラスコや試験管を装置から取り出す必要があったため、連続して薬液を合成することは不可能でした。また、薬液の種類が異なると薬液がマイクロ波を吸収する効率も異なるため、これを最適に制御する機構が複雑になるという課題がありました。そのため、従来、連続して薬液を合成するときはヒーターで加熱する方式が使われていました。
このような背景から、日立では、電子レンジの開発で培ってきた電磁波シミュレーション技術を用いて、さまざまな薬液の合成に利用することが可能な「連続処理型マイクロ波化学反応装置」を開発しました。今回開発した「マイクロ波化学反応装置」の内部は、上段と下段に分かれており、上段はマイクロ波を発生させる機器であるマグネトロンと、マイクロ波を伝送する方形の断面を持つ金属製の導波管、および導波管を垂直方向に貫通するチューブから構成されています。下段は連続して液体を送るポンプなどの「送液制御部」、および温度や流量を監視するモニタリングシステムより構成されています。
今回開発した「マイクロ波化学反応装置」の特長は、以下のとおりです。
1. 薬液の連続合成を可能にした「フロー方式」
マイクロ波を伝送する導波管の一端に、垂直方向に貫通するらせん状のチューブを設置する構造を採用しました。らせんの曲率半径や、チューブ直径を最適にすることにより、薬液を連続的に流す「フロー方式」で効率よくマイクロ波を照射することが可能になります。
2. 薬液の種類に応じて、マイクロ波の吸収効率を最適にする制御技術
導波管上面に「スタブ」と呼ばれる可動式の調整素子を設置しました。この「スタブ」の位置を移動させることで、薬液によるマイクロ波の吸収効率を最大にする調整が可能です。また、誘電率の違うさまざまな種類の薬液に対して、最適なマイクロ波の照射条件を設定することが可能になります。さらに、電磁波シミュレーションにより、最適条件を事前に検討できるため、効率良く合成を行うことが可能になります。
今回開発した「マイクロ波化学反応装置」を用いて、医薬品の合成反応で汎用的に用いられているカップリング反応の合成を行ったところ、従来のヒーターでの加熱を用いた方式に比べて反応処理量が最大で8倍に増大できることを確認しました。
なお、本成果は、2007年9月13日から北海道大学で開催される化学工学会第39回秋季大会にて発表する予定です。
お問い合わせ先
株式会社日立製作所 機械研究所 企画室 [担当:秋葉]
〒312-0034 茨城県ひたちなか市堀口832番地2
TEL : 029-353-3047 (直通)
以上
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