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2007年7月12日

3ビット多値伝送方式で1,040kmの長距離光伝送実験に成功

16波長多重により次世代大容量伝送の基本技術を実証

  日立製作所 中央研究所(所長:福永 泰/以下、日立)は、このたび、次世代の基幹系(都市間) 光ファイバネットワークに向けて、一度に3ビットの情報伝送が可能な多値伝送方式を用いて、1,040kmの長距離光伝送実験に成功しました。3ビット多値伝送方式は、光信号波形の位相(光の波の時間遅れ)を8段階(8値)に変える「多値光位相変調技術」を利用したもので、現在利用されている強度変調方式に比べ、1波長あたり3倍の情報を伝送することが可能です。今回、位相変調信号の送受信の精度を高めるとともに、光ファイバ伝送中に生じる信号のひずみを抑制する技術を開発し、1,040km長距離伝送に成功しました。同時に、ファイバあたりの情報伝送量の増大に向け、波長多重技術を組み合わせた16波長多重で、総情報伝送量480ギガビット/秒の伝送を実現しました。本成果は、将来の大容量光通信に向けた有力技術である8値の多値位相変調方式を、波長多重方式と併用して、実用レベルの1,000kmを超える長距離にも活用できることをはじめて示した成果です。これにより、次世代大容量伝送の実現に向けた基本技術を実証しました。

  インターネットの急速な発展に伴い、基幹系およびメトロ系(都市内)光ファイバネットワークの情報伝送量は、今後ますます増大することが見込まれています。従来の基幹系光ファイバネットワークでは、“1”と“0”の1ビット(2値)の信号を、光信号の強弱によって伝送する強度変調方式が用いられています。強度変調方式では、変調速度の高速化や、1本の光ファイバで波長の異なる光信号を多数束ねて伝送する波長多重方式を用いることによって、情報伝送量の大容量化を実現してきました。しかし、近年、変調速度や波長数は物理的な限界に近づいてきており、さらなる大容量化には、新しい伝送技術の開発が必要とされています。
  そこで、次世代の大容量光通信方式として、光信号波形の位相を複数段階に変えることによって、一度に複数ビットの情報伝送を可能とする多値位相変調方式の採用が検討されています。これまで、従来の強度変調方式に比べ、1波長あたり3倍の情報伝送が可能な3ビット(8値)の位相変調方式では約100kmの伝送を行った例が報告されていますが、将来、基幹系光ファイバネットワークでこの方式を用いた大容量伝送を実現するためには、1,000kmを超える長距離伝送性能に加え、波長多重方式と組み合わせて利用できることを実証する必要がありました。

  このような背景から、日立は、8値の位相変調信号を波長多重して長距離伝送するための基本技術を開発し、実証実験を行いました。今回、位相変調信号の送受信の精度を高めるとともに、光ファイバの非線形効果*によって生じる信号のひずみを抑制する技術を開発し、実用レベルである1,000km超の長距離伝送の検証を行ったものです。

  今回、開発した技術は以下の通りです。

  • (1) 8値の位相変調信号を高精度に生成・受信する変復調技術
    • 送信側では、8つの異なる位相を持つ光信号の遅延量を精度よく均一に生成して送信します。また、受信側では、各波長の光信号をそれぞれ並列に並べた二個の受信器を組み合わせて受信する新方式を採用しました。これら2つの受信器はおのおの受信信号を構成する同相成分(X成分)、直交成分(Y成分)の変化量を検出し、受信信号の位相が8値のいずれであるかを二次元的に判別します。さらに、デジタルフィルタを用いて受信信号のばらつきを抑制する処理を行い、受信感度を向上させています。
  • (2) 光ファイバの非線形効果を抑圧する伝送技術
    • 送信する光波形をパルス化するとともに強度の揺らぎを極力低減することによって、光ファイバの非線形効果による劣化を防止します。また各光ファイバへの入力強度を最適化することによって、光ファイバの非線形効果を低減する伝送技術を確立しました。

  今回開発した技術を用いて、16種類の波長の3ビットの多値光位相変調信号を伝送する実験を行ったところ、1,040km(1周80kmの周回伝送実験系で13周)の長距離伝送の実証に成功しました。今回の実験では、16波長の光信号をそれぞれ1秒間に10ギガ(1ギガは10億)回の速度で変調しており、総伝送容量は480ギガビット/秒となりました。これによって将来の大容量光通信に向けた有力技術である8値の多値光位相変調技術を波長多重と組み合わせ、1,000kmを超える長距離伝送において活用できることを初めて実証することができました。p>

  なお、本成果は、2007年7月9日(月)から、横浜で開催される光通信国際会議「OECC/IOOC 2007」(The 12th Optoelectronics and Communications Conference and the 16th International Conference on Integrated Optics and Optical Fiber Communication)のポストデッドラインセッションで発表する予定です。

用語説明

  • * 光ファイバの非線形効果:光信号が数100km以上の非常に長い光ファイバを伝送される際に生じる問題のひとつです。非線形効果は、伝送される光信号の強度の揺らぎに伴って光ファイバの屈折率がわずかに変動し、この結果、自分自身や他の波長の光信号の位相(遅延量)が揺らいでしまう現象です。特に光の位相に情報を載せて伝送する、光位相変調では信号の長距離伝送を制限する劣化要因として問題になっています。位相変調の多値変調数を上げるほど、位相の揺らぎの影響が大きくなるため、長距離伝送が難しくなります。

関連図

[画像]8値位相変調の原理

[画像]16波長多重8値長距離伝送系の構成

[画像]8値位相変調信号(10ギガシンボル/秒、30ギガビット/秒)

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 中央研究所 企画室[担当:花輪、木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
TEL : 042-327-7777(直通)

以上

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