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2007年5月22日
日常生活における脳活動の計測に向けた
携帯型光トポグラフィ技術を開発
小型の光源や検出器を内蔵した装置の開発により総重量約1kgを実現
株式会社日立製作所 基礎研究所(所長:長我部 信行/以下、日立)は、このたび、日常生活における脳活動の計測に向けた携帯型光トポグラフィ技術を開発しました。今回試作した装置は、測定時に人が頭に装着する機器と装置本体を併せて重さ約1kgで、前頭前野の血液量を計測するものです。本開発は、頭に装着する機器にレーザ光源と光検出器を内蔵することにより、従来、装置本体への接続に用いていた光ファイバを不要にし、新しい信号処理方式の採用による回路規模の縮小やデータ表示解析を無線通信により外部のパソコンで行うことなどにより、大幅な小型化を実現したものです。今回開発した技術により、家庭やオフィス、屋外、移動中の乗り物の中など、日常生活の中での人間の前頭前野の活動を明らかにし、今後、教育や医療の現場など、脳科学とその応用分野などで利用されることに道を拓くものです。
1995年に世界に先駆けて日立が開発した光トポグラフィ法は、微弱な近赤外光を頭皮上から照射して、脳活動に伴う脳内血液量の変化を測定し画像化する技術です。2001年に株式会社日立メディコが医療用装置として発売して以来、注射などでの薬の投与を必要とせず、無侵襲で測定が行えることから、医療現場に加えて、脳科学や認知学、心理学、教育などの研究で幅広く利用されています。しかし、従来の光トポグラフィ装置では、測定用のレーザ光源を装置本体に設置し、頭に装着する機器と本体を光ファイバで接続して測定を行うため、日常生活における脳活動を計測するには、重い本体装置を移動させる必要がありました。
近年、より日常に近い状況の中で脳活動を測定したいという要望が高まる中、被験者の測定環境に制約を与えることなく脳機能を測定できる光トポグラフィ技術の開発が求められていました。そこで、日立では、頭に装着する機器の部分が約400g、装置本体が電池を含めて約630g、併せて約1kgで、前頭前野における脳活動を測定できる小型・軽量の携帯型光トポグラフィ技術の開発に成功しました。
今回、開発した技術の特徴は以下のとおりです。
1.レーザ光源と光検出器を内蔵した装置
前頭前野の活動画像を得るために必要なレーザ光源と光検出器を、額の部分に装着する機器に8個ずつ内蔵しました。これにより、従来の装置で頭に装着する機器と本体装置との接続に使われていた光ファイバが不要になりました。
2.新信号処理方式の採用
光トポグラフィ法では、光検出器は複数の光源からの光信号を区別して受光する必要があります。今回は回路規模と消費電力を抑えるために、それぞれの光源を時間差により切り替えて発光させ、信号を区別する「時分割方式」を採用しました。しかし、このままでは受光量が少なく必要な感度を得ることができないため、光源を高速に点滅させながら、これに同期した信号のみを検出する「ロックイン技術」を併用することにより、高い感度で信号を検出することに成功しました。
3.ワイヤレスデータ転送
頭に装着する機器の制御とデータの通信・処理は、装着した装置本体で行い、計測データは内蔵のフラッシュメモリに蓄積できます。さらに、リアルタイムで無線LANに接続したノートパソコンにデータを送り、表示・解析することができます。1台のパソコンには最大24人分の装置を同時に無線LANで接続することができ、これにより、一つの事象に対して複数の被験者の反応を計測することや、人と人の係わり合いと脳活動との関係を調べることもできます。
本成果は、5月23日から中国北京市で開催される医療工学に関する国際会議「2007 IEEE/ICME International Conference on Complex Medical Engineering」で発表する予定です。
お問い合わせ先
株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:花輪、木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
TEL : 042-327-7777 (直通)
以上
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