このニュースリリース記載の情報(製品価格、製品仕様、サービスの内容、発売日、お問い合わせ先、URL等)は、発表日現在の情報です。予告なしに変更され、検索日と情報が異なる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。なお、最新のお問い合わせ先は、お問い合わせ一覧をご覧下さい。
2007年4月6日
北陸電力株式会社志賀原子力発電所1号機の臨界事故に関する
報告徴収に対する報告書の提出について
株式会社日立製作所(執行役社長:古川 一夫)は、北陸電力株式会社志賀原子力発電所1号機において1999年6月18日に制御棒の想定外の引き抜けにより発生した臨界に係る事故に関連して、3月30日、経済産業省から、核原料物質、核燃料物質および原子炉の規制に関する法律第67条第2項および電気事業法第06条第2項の規定に基づき、次の1〜7の事項について報告の指示を受けました。本日(4月6日)、本件に関する報告書を提出しましたので、その概要について、お知らせします。
1. 制御棒駆動機構(以下、CRD)機能試験のうち、単体スクラム*1試験および原子炉停止機能強化工事機能確認試験(以下、ARI機能試験)に関する試験手順の妥当性について
CRD単体スクラム試験とは、各駆動機構に設置されたスクラムテストスイッチにてスクラム信号を入力し、当該制御棒のスクラム用電磁弁を開けることにより原子炉を緊急停止させるスクラム動作を行う試験であり、制御棒を隔離することなく1本ずつ行います。本試験は、当社が担当している沸騰水型原子炉(以下、BWR)プラントの定期検査時に標準として実施している実証・検証された手順で行っています。
ARI機能試験は、ARI用空気排気弁に模擬信号を入力してARI機能試験対象CRD 1本をスクラム作動させることで行います。しかし、ARI用空気排気弁の作動により全CRDの排気弁およびスクラム弁が開動作することから、ARI機能試験対象以外の水圧制御ユニット(以下、HCU)の隔離操作を実施します。
HCU隔離操作方法には、リターン運転*2とノンリターン運転*3の2種類がありますが、両方法ともに実績のある方法です。本方法の選択については、他の作業との連携を考慮して、ノンリターン運転が採用され、本試験は、ARI再試験においても同様の手順で問題なく終了しました。
- *1
- スクラム:BWRプラントにおける緊急停止の動作もしくはその状態
- *2
- リターン運転:制御棒駆動系の冷却水の一部を、給水管を介して原子炉に注入する制御棒駆動系の運転状態
- *3
- ノンリターン運転:制御棒駆動系の系統水全量を制御棒駆動系の冷却水とする(系統流量を0(ゼロ)とする)運転状態
2. 当該試験の実際の手順について
単体スクラム試験およびARI機能試験の準備作業について当社は、それぞれの試験要領書に基づき、北陸電力立会いのもと試験が実施されたものの、実際は、系統流量を0(ゼロ)とする操作の完了前にHCU隔離作業が行われました。この結果、系統圧力が上昇し、制御棒の引き抜けが発生しました。
なお、北陸電力の調査では、単体スクラム試験時に北陸電力にて実施されたCRD冷却水差圧警報除外措置がARI機能試験時にも解除されないままと報告されています。しかし、当社のヒアリング結果では、当社試験員は除外状態にあるとの認識はありませんでした。
こうしたことから今回の事象は、次の運転管理上の問題が直接的原因と考えます。
(1) 「対象制御棒引き抜き・系統流量0(ゼロ)操作」完了前に「HCU隔離作業」を開始したこと。
(2) 「原子炉−CRD冷却水ヘッダ間差圧」警報が除外されていたため、差圧の監視が不十分であったこと。
直接的な原因のうち上記(2)については、北陸電力の管理項目であることから当社では、上記(1)について今回の事象の根本的な原因を次の通り評価しました。
- 中央制御室と現場の連携が不足していた。
- 現場で要領書を見ながら忠実に作業を行うという意識が希薄であったこと。
- 試験手順に係る試験関係者の事前確認が不十分であったこと。
- 責任分担の確認が不十分であったこと。
3. 臨界事故後の処理(国への事故報告についての対応に係るものを含む)における当社の関与について
当社が行った社員へのヒアリングの結果によると、事故発生時、当社社員はARI試験員として、北陸電力の指示に従い、HCU隔離の復旧作業を行っていました。その後、当社の現地管理者他が、北陸電力の緊急対策室の控室で待機していたものの、緊急対策室からの呼び出しは無く、また北陸電力の本件処理についての結論を聞くことも無く、運転データの提示もされなかったことから、国への事故報告の有無に関する関与はありませんでした。
また、一部の現地および工場関係者が情報の連絡を受けていたものの、いずれも部分的な情報であったことから、重大な事故が発生したという認識には至らず、それ以上伝達されることはありませんでした。
4. 当該事象後発生時の当社の技術的評価と再発防止策の策定について
当該事象発生時に、北陸電力および当社の現地関係者から、当社の一部の設計部署に対して計算・解析の依頼はあったものの、北陸電力から当該事故の技術的評価やその対策に関する依頼を受けていないため、当社において本件に関する評価を行うことはありませんでした。
また、当社の品質保証部門では、基本的に運転管理上の問題であり、設備や要領書の不適合ではないと判断したこと、加えて他のプラントにおいては問題なく同一の試験が行われていたことから、再発防止の検討・提案は行われていません。
5. 当社における当該事象後の再発防止策等の(北陸電力と他電力会社への)水平展開について
上記4. の通り再発防止・提案を行っていないため、当該事象の再発防止策等の北陸電力および他電力会社への水平展開は行っておりません。なお、他電力会社のプラントにて実施したARI機能試験において、同様の事象は発生しておりません。
6. 当該事象以前の制御棒の引き抜け事象についての当社の知見
当社では、当該事象が発生する以前に、当該事象と類似の経験を有してはいませんでした。また、国内および海外で公開されている情報の中では、同様の事象の情報を入手していませんでした。
なお、1990年〜1997年に実施した数件の受託調査や共同研究においては、安全上の問題の一つとして、HCU隔離時のCRD系統圧力上昇による制御棒自然引き抜け事象の可能性を検討し、圧力上昇防止のための対策として、リターン運転およびノンリターン運転の両方について、手順を提案しています。
7. 当該事故を含む事故に係る情報共有
当社では、当時、不適合情報の社内共有化を実施していたものの、当該事象については運転管理上の問題であり、納入製品の不適合ではなかったという認識から、情報共有はされていませんでした。
現在では、仕組みや手順などの不適合を含むプロセス上の不適合についても情報の共有化を図っています。また、BWRを有する電力会社および各メーカーでは、BWR事業者協議会を設け、日本版SIL*4の作成・運用を開始し、不適合情報の共有化を図っています。
- *4
- SIL:Service Information Letter
以上
PDF形式のファイルをご覧になるには、Adobe Systems Incorporated(アドビシステムズ社)のAdobe(R) Reader(TM)が必要です。