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2007年2月16日

宇宙線中性子が半導体デバイスに与えるソフトエラーの試験法として
日立提案の「準単色法」が米国の業界標準に採択

  株式会社日立製作所 生産技術研究所(所長:二宮 隆典/以下、日立)は、宇宙線中性子が半導体デバイスに与えるソフトエラーの試験法として、独自に開発した「準単色法」を米国電子工業会(EIA)の標準化団体であるJEDEC*1に提案し、このたび、米国の業界標準に採択されました。従来、米国における業界標準の試験法としては、宇宙線中性子のエネルギー分布に似た中性子ビーム*2を発生させ、それを使用する「白色法」が用いられていました。しかし、このエネルギー分布に似た中性子ビームを発生させるためには、特殊な中性子照射設備が必要であり、米国ロスアラモス国立研究所にある中性子照射設備のみが、試験を行える施設として認定を受けていました。今回、日立が開発した「準単色法」は、宇宙線中性子のエネルギー分布に似た中性子ビームを利用するのではなく、数種類の特定のエネルギーを持った中性子ビームを利用する方法で、一般の中性子照射設備でソフトエラーの試験を行うことが可能となり、日本やヨーロッパなどの米国以外の地域にある一般の設備でも幅広く利用することが可能になります。さらに、「準単色法」では、数種類の特定のエネルギーを持った中性子ビームから得られる測定結果と、地上での宇宙線中性子のエネルギー分布を重ね合わせて積分することにより、実際に起きるエラー発生率との誤差も「白色法」に比べて、約8分の1まで縮小することが確認できました。

  太陽系外から飛来する超高エネルギーの宇宙線は、地球大気との核反応によって1ギガ(ギガは10の9乗)電子ボルト以上のエネルギーを持つ中性子を発生します。この中性子は、半導体デバイスの微細化に伴いメモリ素子のソフトエラーの主因となり、サーバーやルーターなどのシステム障害を引き起こす要因として広く認識されるようになりました。そのため、半導体デバイスからシステム全体までの信頼性を高めるために、標準化を図る活動が2000年前後から活発になっていました。最初にデファクトスタンダード(事実上の国際標準)として登場したものが、米国の標準化団体JEDECから2001年8月に発行されたJESD89*3であり、「白色法」を採用しているため、米国のロスアラモス国立研究所の中性子照射設備だけが、半導体デバイスに与えるソフトエラーの試験法として利用することが可能な施設でした。

  「白色法」は宇宙線中性子のエネルギー分布に似た中性子ビームを用いた加速試験法で、内挿計算*4により、簡易にソフトエラーの発生率が計算できる点が長所とされていました。それに対し、日立は、「白色法」で評価した半導体デバイスのエラー発生率が、実際のエラー発生率と比べて2倍以上の誤差がある点を指摘し、それに代わる手法として「準単色法」を開発し、2004年8月から始まったJESD89の改訂作業の中で浸透を図り、このたび発行された、改訂版であるJESD89Aに正式採択されました。改定作業委員会は、日米欧、約70名の委員で構成され、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋各地域で議長を選出し、日立はアジア太平洋地域で議長を担当しました。

  今回、採択された日立提案の「準単色法」の概要は下記の通りです。

  • (1) 特定のエネルギーを持った中性子を発生する「単色」中性子源を用いて、エラー発生数と入射中性子個数密度(個/cm2)を測定し、これらの実測値から中性子エネルギーの関数として「ソフトエラー断面積」と名付けた数値を求めます。「単色」中性子源としては、東北大学、大阪大学、スウェーデンのウプサラ大学などが所有する中性子照射設備があり、半導体デバイスの加速試験に国内外の施設を幅広く利用することが可能です。今回、改訂された米国における業界標準JESD89Aにおいても、これらの施設が標準の施設として認定されています。

  • (2) エネルギーの異なる数種類の「単色」中性子ビームを用いて計測したソフトエラー断面積の実測値をワイブル関数と呼ばれる関数で近似し、これと地上での宇宙線中性子のエネルギー分布とを重ね合わせて積分することにより、地上任意地点でのソフトエラー率を計算で求めることができます。この手法により、実際に起きるエラー発生率との誤差も「白色法」に比べて、約8分の1まで縮小することが確認でき、「準単色法」が「白色法」以上の精度を持つ手法であることを検証しました。

  なお、「準単色法」は、日本国内の電子機器・製品に関する業界団体JEITA*5のソフトエラー試験ガイドラインEDR4705でも採択されており、日米の業界標準として認められています。

*1
the Joint Electron Device Engineering Council
*2
同じ方向に向かう高エネルギー中性子を10!)p径程度の孔を通して特定の領域だけを照射できるように整形したもの
*3
JEDEC Standard No.89の略
*4
白色法で得られたエラー率を実環境と白色法の中性子入射頻度の比を掛けて、実環境のエラー率を求める方法
*5
Japan Electronics and Information Technology Industries Association

お問い合わせ先

株式会社日立製作所 生産技術研究所 企画室 [担当:鈴木、神田]
〒244-0817 神奈川県横浜市戸塚区吉田町292番地
TEL : 045-860-1678 (直通)

以上

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