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2006年9月21日
株式会社日立製作所
40ギガビット/秒光伝送向け光トランシーバの薄型化技術を開発
コネクタ付きで高さ6.5mmを実現し、装置内へ高密度に実装することが可能に
日立製作所中央研究所(所長:福永 泰/以下、日立)は、このたび、ビル内や構内に設置されているルータ(データ転送装置)や伝送装置の間を、光ファイバで接続するために用いる光トランシーバを薄型化する技術を開発しました。今回、光送受信モジュールにコネクタ部品を内蔵した高さ6.5mmの光トランシーバを試作し、40ギガビット/秒で100mのエラーフリー伝送の動作実験に成功しました。今回開発した技術を用いることにより、光トランシーバを通信装置内へ高密度で搭載することが可能となるため、高速かつ大容量の通信装置の実現が期待できます。
本研究は、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)の委託研究の一環として実施されたものです。
近年のIT技術の発達とともに、ルータや伝送装置が処理するデータ量は急速に増加し、ビル内や構内に設置された通信装置間を高速かつ大容量に接続する"装置間光接続"が採用され始めています。装置間光接続で使われる光トランシーバは、通信装置内における高密度な実装によって、通信装置の大容量化を実現するにあたり、薄型化が望まれていました。日立では、昨年、装置間光接続に向け、10ギガビット/秒の光源と受光素子を各々4個並べた送受信一体型の40ギガビット/秒の光トランシーバの技術を開発し、試作機により100mのエラーフリー伝送の実証に成功しました。昨年試作した光トランシーバは、大容量な通信装置内に高密度に搭載するためには、高さが約9mmと高く、エアフロー(ファンによる空気の流れ)が遮られてしまい、冷却効率が十分ではありませんでした。このため、通信装置に高密度に実装でき、冷却効率が高められる薄型光トランシーバの開発が課題となっていました。また、通信装置のアップグレードや光トランシーバの実装容易化のために、光トランシーバを取りはずすことができるコネクタ部品の内蔵化も望まれていました。
このような背景から、日立は、光送受信モジュールと光・電気コネクタ部品を一体化すると同時に、光トランシーバを薄型化する技術を開発しました。
開発した技術の詳細は以下の通りです。
1. ミラー付きマイクロレンズを用いた薄型の光トランシーバ構造
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光素子が実装されたセラミック基板の側面に光コネクタを配置するために、光信号の光路を直角に曲げることができるミラー付きマイクロレンズアレイを採用しました。これにより、光信号を送受信するために、従来は光信号の光路と直角に配置していたセラミック基板を、電気コネクタが実装されているプリント基板と同一平面方向に配置させることができ、通信装置内の冷却効率が高められる薄型の光トランシーバ構造を実現しました。また、薄型化と同時に、光送受信モジュールとコネクタ部品の一体化も実現しました。
2. 光送受信素子間の電気的クロストーク*1を抑制する多層配線構造*2
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光トランシーバの薄型化のためには、光素子を同一のセラミック基板上に高密度に実装することが必要となりますが、光素子間の距離が狭まるほど、電気的クロストークによる信号の劣化が生じやすくなります。そこで、今回、送受信部で生じる電気的クロストークを抑制し、送受信性能の低下を防ぐために、多層配線構造のセラミック基板を採用しました。これにより、送信部と受信部の電源配線層をほぼ完全に分離し、送受間クロストークを従来より10dB程度改善しました。
- 光トランシーバの薄型化のためには、光素子を同一のセラミック基板上に高密度に実装することが必要となりますが、光素子間の距離が狭まるほど、電気的クロストークによる信号の劣化が生じやすくなります。そこで、今回、送受信部で生じる電気的クロストークを抑制し、送受信性能の低下を防ぐために、多層配線構造のセラミック基板を採用しました。これにより、送信部と受信部の電源配線層をほぼ完全に分離し、送受間クロストークを従来より10dB程度改善しました。
上述の開発技術により、今回、1個当たり10ギガビット/秒の光源と受光素子を各々4個並べ、さらに、光・電気コネクタを一体化させた、高さ6.5 mmの光トランシーバを試作し、マルチモードファイバ*3を用いて、装置間通信で必要とされる100mの40ギガビット/秒のエラーフリー伝送を実証しました。
今回開発した技術を用いることで、通信装置内へ高速の光トランシーバを高密度で搭載することが可能となるため、高速、大容量の通信装置の実現が期待できます。
なお、本成果は、9月19日から石川県金沢市で開催される電子情報通信学会「2006年ソサイエティ大会」、および9月24日からフランス・カンヌで開催される欧州光通信国際会議(European Conference on Optical Communication 2006)で報告する予定です。
本文注記
- *1
- 電気的クロストーク : 電気信号が、別の電気信号配線に漏れこみ、信号を劣化させてしまう現象のことです。特に電気信号配線の間隔が狭く、周波数が高くなると発生しやすくなります。
- *2
- 多層配線構造 : 電気配線をもつプリント基板やセラミック基板を複数枚重ね合わせて立体的に配線する構造です。
- *3
- マルチモードファイバ : 光を通すコアと呼ばれる部分が太い光ファイバーケーブルです。マルチモードファイバは長距離の伝送を必要としないギガビットイーサネットなどで用いられています。これに対し、長距離伝送などで使われる細いコアの光ファイバは「シングルモード光ファイバ」と呼ばれています。
お問い合わせ先
株式会社日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:花輪、木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
電話 : 042-327-7777(ダイヤルイン)
以上
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