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2006年9月13日

信頼性が高く、漏れ電流の少ないDRAM向けのアルミナ絶縁膜を
短時間で作製する基本技術を開発

DRAMの消費電力を10%程度低減し、モバイル機器の長時間駆動が可能

  日立製作所 中央研究所(所長:福永 泰/以下、日立)は、このたび、テクノロジーノードが 90ナノメートル以下のDRAM(Dynamic Random Access Memory)で期待される高い信頼性を有するキャパシタの絶縁膜を、短時間で作製する技術を開発しました。
  本技術では、絶縁膜となるアルミナの成膜に、水を原料として用いることで、成膜時間の短縮を図るとともに、下部電極であるポリシリコンとアルミナとの間に酸窒化膜で均一な界面を生成することで、漏れ電流の低減およびキャパシタの高信頼化を実現しました。これにより、本技術を用いたDRAMでは、消費電力を10%程度低減することができ、モバイル機器の長時間駆動が可能となります。
  本成果は、今後、需要が拡大するシステムLSIにおける混載DRAM、さらには大容量DRAMの低消費電力化を実現する基本技術として期待されます。

  近年、急速に拡大する情報機器産業は、DRAMをはじめとするLSI製品の高性能化によって牽引されています。そのなかで、DRAMの性能指標としては、高速動作並びに低消費電力、さらには高い信頼性が求められます。そのため、DRAMの要であるキャパシタの絶縁膜には、これらの実現に有利なアルミナが使用されています。
  現在、アルミナ膜の形成には、極薄膜に適した原子層成長法が用いられており、なかでも、 消費電力の低減を図るため、一般的な原料としてオゾンが使用されます。しかしながら、オゾンを原料とした場合、試料表面への吸着が遅く、成膜に長時間を要することが課題となっていました。
  一方で、成膜の原料に水を用いた場合、成膜時間は短縮できるものの、水が不純物として残ることで、漏れ電流が増加し、情報保持動作の頻度が増加するため、消費電力が増大してしまいます。さらに、原子層成長法でアルミナを成膜した場合、キャパシタの下部電極であるポリシリコン上に、シリコン酸化物が生成されるため、高い信頼性を得ることができないという課題もありました。

  そこで、日立では、原料として水を使用し、短時間で成膜するとともに、オゾンを用いた場合よりも、低消費電力かつ高信頼性を実現するDRAMのキャパシタ技術を開発しました。
  今回、新たに開発した技術の特長は、以下のとおりです。

(1)水を原料に成膜したアルミナにオゾン熱処理を適用

  • 原子層成長法によるアルミナの成膜に水を原料として用いることで、成膜時間の短縮を図るとともに、成膜後にあらたにオゾン熱処理を行い、アルミナ膜中の不純物を除去し、漏れ電流の 低減を実現しました。また、オゾンを原料に用いたアルミナと比較した場合でも、低い漏れ電流を達成しています。

(2)高い信頼性を得るため、酸窒化膜界面層を生成

  • キャパシタの下部電極であるポリシリコン上に原子層成長法でアルミナを成膜した場合、 シリコン酸化物が自然に生成されますが、理想的な界面にはなっていませんでした。そこで、 あらたにポリシリコンおよびアルミナと親和性*の高い酸窒化膜を界面層に適用することで、 漏れ電流の低減と高い信頼性を得ることに成功しました。

  今回、これらの技術を適用したキャパシタを試作し、その特性を評価したところ、酸化膜換算膜厚が2.9ナノメートル、プレート電圧1Vにおけるリーク電流が1×10-8A/cm2以下となることを確認しました。さらに、経時絶縁破壊試験を行い、外挿寿命を算出したところ、100年以上となり、大変に高い信頼性を有することも確認できました。
  そこで、製品に適用した場合、本技術を用いたDRAMでは、消費電力を10%程度低減することが可能となります。これにより、モバイル機器の長時間駆動を実現できます。また、今回開発した酸窒化膜界面層技術は、絶縁膜がアルミナから他の材料に置き換わった場合においても適用可能であり、次世代LSI製品の信頼性向上にも役立ちます。

  なお、本成果は、9月13日から神奈川県横浜市で開催される電子材料デバイスに関する国際会議「2006 International Conference on Solid State Devices and Materials」にて発表します。

注記

*
親和性:原子の相互拡散や原子間の結合の切れ目などのない、理想的な界面を形成する傾向。

お問い合わせ先

株式会社 日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:花輪、木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
電話 042-327-7777(ダイヤルイン)

以上

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