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シリコン半導体製造プロセスで作成したナノ薄膜の発光現象を確認
シリコンLEDの実現に道を拓く
株式会社日立製作所中央研究所(所長:福永 泰/以下、日立)は、このたび、シリコン半導体製造プロセスを用いて厚さ数ナノメートル(1ナノメートルは100万分の1ミリメートル)のシリコンの薄膜素子を作成し、これに電流を流すことによって発光する現象を確認しました。従来、電流を流して発光させるLED(light-emitting diode、発光ダイオード)には、化合物半導体が用いられていましたが、本成果により、化合物半導体よりも量産しやすいシリコンを材料とするLEDを作成することが可能となります。今後、既存の半導体製造プロセスを用いたシリコンLEDを実現することにより、シリコン半導体チップ内やチップ間で大量の情報を高速通信することができる、光配線の実現に道を拓くものと期待されます。
量産に適した半導体材料であるシリコンは、光が放出されにくい材料特性があります。このため、電流を流すと光を発するLEDには、これまでガリウム・砒素・リン(GaAsP)や窒化ガリウム(GaN)などの化合物半導体が用いられてきました。しかし、シリコン半導体でLEDを実現することができれば、材料コストが低く抑えられ、量産がしやすく、さらに、シリコン半導体と発光素子を集積化することができ、小型化が可能になるため、その実現に向けた研究が進められています。
これまで、シリコンを光らせるために、シリコンを数ナノメートルという極微のサイズにし、電子と正孔を狭い領域に閉じ込めることによって現れる量子力学的効果(量子閉じ込め効果)を利用することが研究されてきました。1990年頃から研究が盛んになったシリコンを酸で処理するポーラス(多孔質)シリコンや、最近の量子ドット(ナノ粒子)の研究などでその効果が確認されています。しかし、シリコンの表面は酸化されやすいため、シリコンを粒子状にすると、周囲が酸化シリコンの絶縁膜で覆われてしまうため電流を注入しにくくなり、効率よく発光させることが難しいという課題があります。また、シリコンを数ナノメートル程度に薄くしようとすると、シリコンの厚さが均一でなく、発光するには至りませんでした。
そこで、日立は、通常のシリコン半導体プロセスを用いて、薄く均一なシリコン層を形成する技術を開発し、これに電流を流すことによる発光の可能性を検討し、実験で発光現象を確認しました。
今回、観察に用いた素子は、厚さ約9ナノメートルの薄膜シリコン素子で、発光部となる薄膜シリコン部分と、これに電流を供給する2つの厚いシリコン部分から構成されます。開発した薄膜シリコン素子は、波長約1,000ナノメートル近傍の赤外領域で発光するため、発光は目に見えません。しかし、極薄シリコンの膜厚を薄くするにつれて、発光波長が短くなる量子閉じ込め効果を観測しました。今回、開発に成功した薄膜シリコン素子は、通常のシリコンプロセスで作成できるため、半導体チップに埋め込むことができ、今後、実用的なシリコンLEDの実現に道を拓くものと期待されます。今回の特徴は、以下の2点です。
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基板として、シリコン支持基板の上に二酸化シリコン(SiO2)膜をはさんで単結晶シリコン層が形成されている構造のSOI(silicon on insulator)を採用しました。最表面の単結晶シリコン層の一部を高温で酸化することで、発光部となる薄膜シリコン素子を形成しました。 |
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薄膜シリコン素子の両側には厚いシリコン部を形成し、高濃度の不純物を注入しました。この厚いシリコン部に電圧を加えると、薄膜シリコン素子に効率良く電流が流れ、その結果、量子閉じ込め効果により、薄膜シリコン素子が発光します。 |
なお、本成果は、7月7日に日本応用物理学会論文誌「Japanese Journal of Applied Physics」の Express letter としてオンライン版が公開されました。
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お問い合わせ先
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株式会社 日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:花輪、木下]
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