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「マイクロリアクタ」の並列化を可能にした実験プラントを開発
最大で年間72トンの薬液合成ができ、
医薬品や化粧品などを高効率に生産することが可能に
株式会社日立製作所 機械研究所(所長:福本 英士/以下、日立)はこのたび、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術*を応用した微細な化学反応装置「マイクロリアクタ」を最大20個まで並列搭載することが可能な実験プラントの開発に成功しました。「マイクロリアクタ」は、数十マイクロメートル(マイクロは百万分の一)ほどの微細な溝の中で効率よく化学反応を起こすデバイスであり、今回開発した実験プラントでは「マイクロリアクタ」を複数個、並列に配置することで、最大で年間72トンまで薬液を合成することができます。これにより、医薬品、化粧品、農薬、染料などを高効率に生産することが可能になります。
「マイクロリアクタ」を利用することによって化学反応の効率化や高速化を実現し、効率的に医薬品や化粧品などを開発、生産することが期待されています。しかしながら、従来、「マイクロリアクタ」は流路幅が数十〜百マイクロメートル程度と狭く、薬液の種類別に形状が決まっていたため、処理量が小さく、混合する液体や反応時間の異なるさまざまな液体への対応が難しいという課題がありました。
このような背景から、日立では広範囲な薬液の合成を行える汎用的な「マイクロリアクタ」を複数個、並列に搭載し、短期間に生産量を増大できる実験プラント(幅1,500mm×高さ1,500mm×奥行き900mm)を開発しました。本実験プラントの内部は上下2段で構成されており、上段は一定の温度で保たれた水槽内に「マイクロリアクタ」が並列に設置される「反応制御系」に、下段は連続して液体を送るポンプなどの「送液制御系」になっています。
本実験プラントの特長は、以下の通りです。
1. 最大で年間72トンまで薬液を合成することを可能にした並列システム構成
「マイクロリアクタ」をコンピュータのブレードサーバのように複数個、並列に配置し、垂直方向に5段、水平方向に4列で最大20個の「マイクロリアクタ」を搭載可能にしました。この方式の特長は、搭載する「マイクロリアクタ」の数を自由に、かつ容易に変えられるところにあります。実験プラントの下段である「送液制御系」で薬液の圧力を制御して均一に液体を送ることを実現し、最大で年間72トンの薬液を合成することが可能になります。
2. 広範囲な薬液の合成に対応することが可能な「マイクロリアクタ」
「マイクロリアクタ」は分解して洗浄することが可能であり、筐体部分は耐食性ニッケル合金製、マイクロ流路チップは石英ガラス製で、耐薬品性に優れています。マイクロ流路チップはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて作製されています。「マイクロリアクタ」の上流側に、薬液を所定の温度まで加熱するための予熱部を、下流側に「マイクロリアクタ」内部で混合・反応した生成溶液の反応時間を調整するための滞留部を配置しました。これにより、取り扱う化学反応の種類や温度条件、反応時間が変わっても、「マイクロリアクタ」を交換することなく予熱部および滞留部の設定を変えるだけで対応することが可能になります。
3. 正確な制御機能を有するモニタリングシステム
実験プラントは、流量、圧力、温度等を監視しそれらを正確に制御できるモニタリングシステムを有しています。これにより安定した反応の維持や異常を早期に検知する歩留まり向上が可能になります。
今回開発した実験プラントにおいて、薬液の合成反応で汎用的に用いられている芳香族のニトロ化反応を行い、主生成物であるモノニトロ体を得る率が、従来の反応槽を用いた方式に比べて15%向上することを実証しました。また本結果は、「マイクロリアクタ」を並列で配置して生産量増加を行っても率が低下しないことを確認しました。今後、本実験プラントを用いることで薬液などを高効率に生産することが可能になります。
なお、本成果は、2006年3月28日から東京工業大学で開催される化学工学会第71年会にて発表する予定です。
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立体的な微細加工技術を用いて、高機能を有する微細な立体構造からなるシステム。機械、電子、光、化学などの多様な機能を集積化した微細デバイス全般を指す。 |
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お問い合わせ先 |
株式会社日立製作所 機械研究所 企画室 [担当:高岡]
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