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2005年12月13日
株式会社 日立製作所
株式会社ルネサス テクノロジ
オンチップメモリ用途に向けた低電力のMOS相変化メモリセルを試作
- 新相変化膜により電源電圧1.5V、書換え電流100µAを実現 -
株式会社 日立製作所(本社:東京都千代田区/執行役社長:庄山 悦彦/以下、日立)と株式会社ルネサス テクノロジ(本社:東京都千代田区/社長&CEO:伊藤 達/以下、ルネサス テクノロジ)は共同で、電源電圧1.5Vで、100µAの低電流で情報の書換えが可能な、相変化メモリセルの試作に成功しました。この成果は、MOSトランジスタを用いた構造(MOS相変化メモリ)とともに低電流、低電圧で書換え可能な相変化膜の開発によって実現されたものです。相変化メモリは次世代の大容量あるいはオンチップ不揮発メモリの候補として期待されていますが、低電流で書換え可能な1.5V動作のMOS相変化メモリの達成は、小型化、低消費電力化の道を拓くものと期待されます。
情報機器や家電品、車載機器などの組込み機器向けマイコンでは、プログラムやデータなどを格納するため不揮発性メモリの混載が拡大しています。そして、今後は、組込み機器向けマイコンのさらなる応用分野の広がりとともに、混載する不揮発性メモリに対しては書換え耐性や集積度の向上、消費電力の低減が要求されてきます。このような要求に対し、相変化メモリは、既存の不揮発性メモリに比べて、高速な書込みや読出し、高い書換え耐性、および低コストでの製造が可能で集積化に有利であるという特徴から、次世代の高集積オンチップ不揮発メモリとして期待されています。
相変化メモリは、相変化膜が熱によって電気抵抗の異なるアモルファス状態*1(高抵抗)と結晶状態(低抵抗)になることを利用し、膜を流れる電流量の違いを“1”と“0”の情報として、記憶と読み出しを行います。相変化膜結晶のアモルファス化には、通常1mA程度の大電流が必要とされ、電流量の大きなバイポーラトランジスタが適用されていました。これに対して、日立とルネサス テクノロジでは、マイコン用のロジックCMOSプロセスと整合性が高く、実現性の高い相変化メモリとして、既に、電源電圧1.5V、書換え電流200µAのMOSトランジスタで動作する相変化メモリセルの試作に成功しています。
今回、相変化メモリの応用範囲を低消費電力性能が要求される分野にまで拡大し、実現性を一層高める技術として、同じ電源電圧1.5VのMOSトランジスタで動作し、かつ書換え電流を100µAと1/2に半減した相変化メモリの試作に成功しました。
この成果は、相変化膜材料の1つとして用いられているGeSbTe(ゲルマニウム・アンチモン・テルル)に、酸素を制御して添加することを考案し、独自開発した低電流・低電圧で書換え可能な相変化膜により実現されたものです。酸素を添加することで相変化膜の抵抗値を最適に制御することが可能となり、書換え時に過大な電流が流れることを抑制しています。これにより、書換え電流の低減が可能となりました。
この技術を用いて、130ナノメートルCMOSプロセスでメモリセルを試作し、電源電圧1.5Vで、100µAの電流による書込み動作を確認しました。書込み電流を低減できたことにより、書込みに必要なセル当たりの消費電力は約1/2に低減しています。また、セルを構成するMOSトランジスタや、駆動出力用MOSトランジスタのゲート幅を小さくできるため、メモリセルおよび駆動回路の面積削減も可能となります。
本技術は次世代以降の低コスト、低消費電力、小型・高集積、の要素を兼ね備えた相変化メモリの実現に大きく踏み出すものであり、将来における組込み機器向けマイコンの一層の進展を支える技術として、期待できます。
なお、本成果は、2005年12月5日から米国ワシントンで開催された「国際電子デバイス会議(International Electron Devices Meeting)」にて発表しています。
注釈
*1 |
アモルファス状態:固体を構成する原子、分子などが、結晶のような規則性のある構造を持たない、不定形の状態にあること。非晶質とも呼ばれる。 |
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