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2005年11月11日
NTTコミュニケーションズ株式会社
日本電信電話株式会社
日本電気株式会社
富士通株式会社
株式会社日立製作所

テラビット級ネットワーク制御技術の相互接続実験に成功

- テラビット級のネットワーク転送能力と4000万世帯の高速インターネット接続に
対応しうるスケーラブルな通信技術を確立 -

 

  NTTコミュニケーションズ株式会社(代表取締役社長:和才博美、本社:東京都千代田区)、日本電信電話株式会社(代表取締役社長:和田紀夫、本社:東京都千代田区)、日本電気株式会社(代表取締役執行役員社長:金杉明信、本社:東京都港区)、富士通株式会社(代表取締役社長:黒川博昭、本社:東京都港区)、株式会社日立製作所(代表執行役 執行役社長:庄山 悦彦、本社:東京都千代田区)、は独立行政法人情報通信研究機構(理事長:長尾真、本所:東京都小金井市、以下 NICT)による「高度通信・放送研究開発に関わる委託研究」事業の「テラビット級スーパーネットワークの研究開発」における成果の相互接続に成功しました。
  これは、4000万世帯をブロードバンド接続するe-Japan構想*1のスケーラビリティ目標を実現するネットワーク基盤技術のうち、特に光ネットワーク(フォトニック・ネットワーク)を効率的に制御管理することにより、インターネットを構成するIPネットワーク(ルータ・ネットワーク)の転送能力向上と、収容拠点数の拡大を可能とする技術を実証するものです。

 

1. テラビット級スーパーネットワーク*2

  ブロードバンドアクセス環境の普及に伴い、近年、インターネット利用の拡大とIPトラフィック需要の爆発的な増加が進んでいます。e-Japan構想における「3000万世帯による高速アクセス、1000万世帯による超高速アクセス」を達成するために、インターネットを構成するIPネットワークの転送能力向上と、収容拠点数の拡大が求められております。このような要望を実現するためには、パケット通信量の多い拠点間を特定して、この拠点間に光パス(フォトニック通信路)を割り当てることで、限られた数の光パス(フォトニック通信路)に最大の転送能力を発揮させることが有効です。テラビット級スーパーネットワークの研究開発は、このような技術を実現する目的で実施されました。
  本ネットワーク・アーキテクチャ(図1)は、以下の5つの技術を互いに連携させることを特徴としています。

 

(1) レイヤ間連携型トラフィック・エンジニアリング技術:

  多拠点の効率的な収容が可能なルータ・ネットワークとネットワーク帯域の大幅な拡大が可能なフォトニック・ネットワークを組み合せ、これらを動的に切り替えてパケット転送を行うことで、多くの拠点を広帯域かつ経済的に接続可能とする技術。

 

(2) 自律分散制御型障害回復技術:

  GMPLS*3プロトコル拡張によりフォトニック・ネットワークにおける迂回経路を含めた光パス(フォトニック通信路)収容効率最大化を可能とする技術。

 

(3) 高速経路計算・設定技術:

  予備系を含む光パス(フォトニック通信路)資源の動的割り当てを集中制御することにより、高速かつ効率的な光パス接続を可能とする技術。

 

(4) キャッシュ連携コンテンツ配信技術:

  Webコンテンツを遍在させることで実効的なネットワーク帯域を拡大可能とする技術。

 

(5) ルータの経路計算性能を大幅に向上する技術:

  IPネットワークにおけるルータの経路計算機能を分離することにより、高速に大容量の経路計算を実現可能とする技術。

(図1) テラビット級スーパーネットワーク
 
(図1) テラビット級スーパーネットワーク
 
 

2. 実験内容

  テラビット級スーパーネットワークのアーキテクチャに基づく各要素技術を実装した試作機を各社が開発し、これらの試作機を相互接続したネットワークを構築しました。また、このネットワークにおいて、試作機同士を連携させて、光パス(フォトニック通信路)を動的に制御することにより、ルータ・ネットワークでの輻輳を自律的に解消する技術、およびコンテンツを瞬時にローカル化(利用者に近いアクセスネットワーク内にコンテンツを転送)する技術の動作実証を行いました。
  具体的には、特定の2地点間のルータ・ネットワークのパケット通信量を意図的に増加させることで、これが特定の閾値を超えた場合に、それら2地点間を直結する光パス(フォトニック通信路)を動的に生成することを確認しました。この光パス(フォトニック通信路)の生成により、ルータ・ネットワークを経由することなくパケット転送を行うため、通信品質の劣化を防止できることも確認しました(図2)。光パス(フォトニック通信路)の生成時には、自律的な負荷分散技術および障害回避技術も連携させることで、フォトニック・ネットワークとしても効率的かつ信頼性の高いネットワークとすることが可能であることも確認しました。
  また、CDN*4管理サーバからの要求により2地点間を直結する光パス(フォトニック通信路)を生成し大容量コンテンツを瞬時にローカル化することで、通信品質の向上と共に、ネットワークに加わるトラヒック負荷の削減効果を確認しました。(図3)。さらに、これらの2種類の光パス(フォトニック通信路)設定要求を、ネットワーク制御サーバを用いて集中的に調停・制御することで、サービス性と経済性を両立させる効果を確認しました。
  これらの実験により、多数の拠点を収容したネットワークにおいて、多様なトラフィック分布の変動やアプリケーションからの要求を総合的に判断して光パス(フォトニック通信路)を制御することで、経済的にネットワーク全体の総スループット(処理能力)を最大化する技術を実証しました。なお、ネットワーク制御サーバとフォトニック・ネットワークは、O-UNI*5プロトコルを用いて連携しますが、このような試みも含めて、これらの要素技術を総合的に連携させての実機検証は世界初のものとなります。

(図2) レイヤ連携型トラフィックエンジニアリング技術1
 
(図2) レイヤ連携型トラフィックエンジニアリング技術1
 
(図3) レイヤ連携型トラフィックエンジニアリング技術2
 
(図3) レイヤ連携型トラフィックエンジニアリング技術2
 
 

3. 今後の予定

  このたびの実験で得た成果を総務省や学会、標準活動機関などに報告し、広く標準化を進めるとともに、e-Japan構想の実現に必要な通信基盤技術の確立にむけて、今後は光バースト通信技術*6などの関連研究との連携研究を進めていきます。

 

4. 協力関係

  今回の相互接続共同実験は産学官連携研究の拠点であるNICTけいはんな情報通信オープンラボ*7において平成17年10月24日から28日に実施しました。

 

語句説明

 
 
*1 e-Japan構想
    「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)」が平成13年1月に発表した「e-Japan戦略」では、重点政策分野として超高速ネットワークインフラ整備を掲げており、「5年以内に超高速アクセスが可能な世界最高水準のインターネット網の整備を促進し、必要とするすべての国民が低廉な料金で利用できるようにする。(少なくとも3000万世帯が高速インターネット網に、また1000万世帯が超高速インターネット網に常時接続可能な環境の整備を目指す。)」ことを、その目標としている。
*2 テラビット(Tb)級スーパーネットワーク
    1兆ビット以上の情報量を伝送する高速大容量なネットワーク。現在の国内大手インターネット・サービス・プロバイダのバックボーン・ネットワーク帯域を1桁以上、上回る規模を想定している。
*3 GMPLS(Generalized Multi-Protocol Label Switching)
    IPネットワーク上に論理的なパケットスイッチ網を構成するMPLS技術を応用し、従来のMPLSラベル(識別標識)に加えて光波長などをラベルとしたスイッチ網を構成することで、統合的なネットワーク制御を可能にする通信技術。IETF(Internet Engineering Task Force)で標準化が行われている。
*4 CDN(Content Delivery Network)
    ブロードバンドIPネットワークを利用して、主にエンドユーザまでのコンテンツ配信を行うことを目的とするネットワーク。コアネットワークを介したコンテンツ配信では、遅延の増加が懸念されるため、CDNではエンドユーザ側に近いアクセスネットワーク内でキャッシュしたコンテンツを配信することにより低遅延化を実現する。
*5 O-UNI(Optical User-Network Interface)
    フォトニック・ネットワークとフォトニック・ネットワークの周辺装置となるIPルータなどのインタフェースを規定している。OIF(Optical Internetworking Forum)で標準化が行われている。
*6 光バースト通信技術
    フォトニック・ネットワークにおいて、光パス(フォトニック通信路)の切替時間間隔を高速化したネットワーク。このネットワークの利点として、複数の光パス(フォトニック通信路)が同一波長を時分割的に共有できるだけでなく、大容量データの一括瞬時転送などの新しい通信サービス創出の可能性を秘めていることなどが挙げられる。
*7 NICTけいはんな情報通信オープンラボ
    産学官が連携した地域におけるIT研究開発を推進するため、NICTけいはんな情報通信融合研究センターが平成15年3月に開設した研究開発拠点。この施設は、大学、企業、研究機関、地方自治体などに開放されたオープンラボ(研究開発拠点)であり、高機能ネットワーク技術などを中心とした研究開発を行い、専門家の育成と新たなサービス、産業の創出を目指すことを目的としている。
 
 
 

お問い合わせ先

NTTコミュニケーションズ株式会社
第二法人営業本部e-ガバメント営業部
小林、松岡
TEL : 03-6700-7305

 

日本電信電話株式会社
NTT情報流通基盤総合研究所
企画部 広報担当 遅塚(ちづか)、佐野、井田
TEL : 0422-59-3663

 

日本電気株式会社
中央研究所 研究企画部
企画戦略グループ

 

富士通株式会社
フォトニクス事業本部 開発企画部
TEL : 044-754-2636

 

株式会社日立製作所
中央研究所 企画室
内田、木下

 
 

以上

 
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