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MEMSを応用し、食の安全衛生やセキュリティの保全に向けた
自動細菌検知システム装置を開発
細菌捕集から細菌遺伝子検出までを自動的に実行する可搬型システムを実現
日立製作所(執行役社長:庄山悦彦/以下、日立)はこのたび、遺伝子を解析することによって短時間で細菌を検知する、小型で持ち運び可能な、自動細菌検知システム装置を開発しました。
本システム装置は、細菌の捕集を行う捕集機と、細菌遺伝子の分析を行う分析機から構成され、従来、熟練者が行っていた10工程にわたる細菌捕集、15工程にわたる細菌遺伝子の検出を、2つのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)チップ*1で実現しています。そのため、捕集機と分析機の2台を並べても幅50cm、奥行き45cm以内に納まる小型化を実現しており、持ち運びが可能です。さらに、捕集機で大気中の細菌を濃縮捕集したMEMSチップを分析機内に装填するだけで、40分〜120分程度の時間で、捕集したその場で自動的に細菌の遺伝子検出を行うことができます。今後、可搬型の利点を活かし、高齢者介護施設等において、集団感染の恐れのあるノロウィルスの検査や食品会社でのO157などの病原性大腸菌等の検査、空港、港湾などの重要施設におけるセキュリティ検査など、現場での細菌検知の用途に幅広く応用されることが期待されます。
なお、開発は、捕集機については日立が独自に開発し、分析機についてはタカラバイオ株式会社(代表取締役社長:加藤郁之進/以下、タカラバイオ)と共同で、特定の菌をターゲットにして行いました。
安全、安心で健康な社会への要請の高まりとともに、食品の安全性検査や病原菌検査、さらには公共機関におけるセキュリティ検査など、それぞれの現場で簡便に細菌の検知を行うニーズが高まっています。従来の一般的な細菌検知の方法としては、まず現場で捕集作業を行い、採取した細菌を研究所に持ち帰り、遠心操作等で濃縮させ、最後に培養して検査する方法がありますが、細菌の確定までに約1週間を要しました。これに対し、最後の培養に代わる方法として近年、高感度でかつ約半日という短期間で結果が得られる細菌遺伝子を解析する手法が注目されています。しかし、細菌の濃縮工程や遺伝子を取り出す工程が複雑なため、検査に必要な高い技量の確保や、検査者の病原菌等による汚染の防止が課題となっていました。
このような背景から、日立は、特定の細菌をターゲットとして、その捕集から細菌遺伝子の検出までをMEMS技術を用いて自動的に処理をする、小型で持ち運び可能な細菌検知システム装置をタカラバイオと共同で開発しました。開発した技術の特長は以下の通りです。
(1) 高濃度細菌捕集機
細菌の捕集から溶解までの工程に必要な捕集部、試薬タンク、反応部等の要素をひとつのチップ内に集約しました。空気中の細菌を捕集チップの捕集部に吸気方式によって衝突させることで、細菌をチップに効率良く濃縮して捕集する装置です。
(2) 小型自動分析機
遺伝子抽出から検出までの工程で必要な、試薬タンク、遺伝子抽出カラム、反応セル、廃液タンク等の種々の要素を、もうひとつのチップに集約しました。チップを装填して、細菌の溶解や、遺伝子の取り出し、検出を自動で行う装置です。従来、高い技量を要した複雑な工程がチップ内で自動的に処理されるため、現場で簡便に分析が可能となるほか、捕集から分析までの時間も40分〜120分へと大幅に短縮されます。また、廃棄物はチップのみで、検査者への病原菌等の汚染がなくなります。高精度な細菌分析のために不可欠な遺伝子増幅・検出技術は、遺伝子の本体であるDNA(デオキシリボ核酸)を迅速かつ正確に増幅させることが必要ですが、この工程にはタカラバイオの開発した等温遺伝子増幅法であるICAN法*2が用いられています。
今後、日立は安心・安全社会への貢献に向け、フィジカルセキュリティの分野において、今後3年間で合計100億円の売上をめざします。
この自動細菌検知システムの開発成果については、10月19日から東京ビッグサイトで開催される「危機管理産業展2005」にて展示されます。
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用語説明 |
*1 |
MEMSチップ:微細な機械的構造物と電気回路を一体とした技術を応用したチップ。 |
*2 |
ICAN法:タカラバイオが開発した鎖置換法を利用した遺伝子増幅法 |
| | お問い合わせ先 |
株式会社 日立製作所 ディフェンスシステム事業部 企画管理部 [担当:栗原]
〒101-8608 東京都千代田区外神田1丁目18番13号
電話 : 03-4564-4894 (直通)
株式会社 日立製作所 機械研究所 企画室 [担当:高岡]
〒312-0034 茨城県ひたちなか市堀口832-2
電話 : 029-353-3047 (直通)