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2005年10月6日
株式会社 日立製作所
株式会社ルネサス テクノロジ
電源電圧1.5VのMOS相変化メモリセルの試作に成功
- 高集積・低コストの組込み機器向けマイコン用混載メモリに道 -
株式会社日立製作所(本社:東京都千代田区、執行役社長:庄山悦彦、以下日立)と株式会社ルネサス テクノロジ(本社:東京都千代田区、社長&CEO:伊藤 達、以下ルネサス テクノロジ)は共同で、MOSトランジスタを用いた相変化メモリセルを試作し、電源電圧1.5Vにおけるメモリ動作を確認しました。この成果は、独自開発をした世界最小の電流・電圧で書換え可能な相変化膜と、1.5Vという低い電圧でも正確な書き換えを行う回路技術の開発によるものです。これにより、初めてCMOS-LOGICと同等のトランジスタで相変化メモリを動作することが可能となり、次世代以降の組込み向けマイコン用の混載メモリへの適用に道を開くものと言えます。
近年、情報機器や家電品、車載機器などの機能向上にともなって、組込み機器向けマイコンには、プログラムやデータなどを格納するため不揮発メモリを混載するオンチップ不揮発メモリが導入されています。さらに今後、組込み機器向けマイコンの高性能化の要求とともに、混載する不揮発性メモリにも書換え耐性の向上や集積度の向上が要求されていきます。このような要請に対して、相変化メモリは、書込みや読出しが高速で行なえ、高い書換え耐性や集積化に有利であるという特徴から、次世代の高集積オンチップ不揮発メモリとして期待されています。
相変化メモリは、相変化膜が熱によって電気抵抗の異なるアモルファス状態(高抵抗)と結晶状態(低抵抗)になることを利用して、膜を流れる電流量の違いから1,0の情報を記憶・読み出しをする方式です。アモルファス化のためには電流を流して素子を溶融後に冷却します。また、結晶化のためには、融点以下の結晶化温度に保持します。従来の相変化膜は、アモルファス化には1mA程度の大きな電流が必要なため、電流量を大きくとれるバイポーラトランジスタが適用されていました。しかし、今後、組込み機器向けマイコンの混載メモリとして利用するには、論理(LOGIC)回路との整合性の良いMOSトランジスタを使用することが必須です。
このような背景のもと、今回、日立とルネサス テクノロジは共同で、独自開発をした世界最小の電流・電圧で書換え可能な相変化材料用いたMOS相変化メモリセルを試作しました。
(1) |
低電流書き換え相変化膜の開発:約200µA程度の低電流でアモルファス状態に書換え可能な、相変化材料を開発し、MOSトランジスタを用いた電源電圧1.5Vの相変化メモリセルを実現しました。 |
(2) |
低電圧書き込み補償回路:従来、相変化メモリセルへのデータ書込みは、ビット線*1の電圧を変えることによりアモルファスまたは結晶状態に変化させていました。低電流・低電圧で書き込み可能な新相変化膜においては、ビット線の代わりにワード線*2の電圧を変える回路技術“3電源ワード線制御方式”を開発し、正確なデータ書込みを実現しました。 |
(3) |
読み出し寿命の拡大:相変化メモリでは、連続的な読出し動作により記録膜が発熱し、書込まれた記憶データが失われてしまうという課題がありました。これを解決するため、読出し時にメモリセルへのアクセスを行わず、別個設けたバッファからデータを読み出す回路技術“実効アクセス回数低減方式”を開発し、読み出し寿命を500倍に改善しました。 |
これらの開発技術を用い、130ナノメートルのCMOSプロセスでメモリセルを試作し、メモリ動作実験を行ったところ、1.5Vの電源電圧で読み出し・書き込み動作を問題なく行えることを確認しました。これにより、128kB容量のメモリモジュール面積が、従来の混載不揮発メモリに比べ3分の2以下となる見込みが得られました。
本技術は次世代以降の高集積、低コストの相変化メモリの実現に道を拓く技術であり、将来、マイコンの一層の進展を支える技術として、期待できます。
なお本内容は、9月18日から米国サンノゼで開催された「カスタム集積回路会議(Custom Integrated Circuits Conference)」で発表しています。
<注釈> |
*1 |
ビット線:2次元状に並んだメモリアレイからデータの読み出し/書き込みを行なうための信号線。ビット線とワード線*2の交点にメモリセルは配置される。 |
*2 |
ワード線:2次元状に並んだメモリセルアレイの中から一行を選択するための制御信号線。選択されたアドレスに対応するワード線の電圧を上げることで、メモリセルへの書き込み/読み出しが可能になる。 |
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