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大気中で動作する軽くて柔らかな有機アクチュエータを開発
炭素ナノ微粒子を混合した導電性有機材料により低電圧動作を実現
日立製作所基礎研究所(所長:長我部信行、以下/日立)は、このたび、有機材料を用いた、軽くて柔らかい有機アクチュエータを開発しました。アクチュエータとはモーターやエアシリンダ、油圧シリンダ、ピエゾ(圧電素子)等々、動力を発生する装置や物質です。アクチュエータには、様々な種類があり、モーター駆動によって大きな動力を発生するものや、モーターを伴わずに伸縮動作を行うものがあります。
今回開発した技術は、炭素ナノ微粒子を混合した導電性有機材料に、電気信号を与えることによりジュール熱を発生させ、それに伴う熱膨張による材料の伸縮変形を利用するものです。大気中で数ボルト〜数十ボルトの低電圧で動作させることができること、また軽量で柔らかく小型化するための加工も容易なことから、医療機器やマイクロロボットなど、様々な分野への応用が期待できます。
電気信号によって力や変位を発生するアクチュエータは、現在、様々な産業分野に用いられ、求められる性能もますます多様化する傾向にあります。精密機械や産業用ロボットなどの分野では、大きな力を出せることや、応答性が速く正確な位置制御ができることが要求されますが、医療用の能動カテーテルやリハビリ機器、マイクロロボット向けには、「小型軽量で柔らかく、駆動電圧が低くて安全」なアクチュエータが求められています。
軽量で柔らかなアクチュエータとしては、電気信号で変形する有機材料を用いた有機アクチュエータが注目されています。しかし、これまで開発された有機アクチュエータの多くは、軽く柔らかいという特徴はあるものの、低電圧で動くものは溶液中しか使用することができず、一方で大気中で動作するものは高電圧をかける必要があるなど、応用範囲を拡大することが困難な状況にありました。
このような背景から、今回、日立では、大気中で数ボルト〜数十ボルトの低駆動電圧で伸縮動作ができる、軽くて柔らかい有機アクチュエータを開発しました。
(1) 有機アクチュエータの原理
開発した有機アクチュエータは、熱膨張係数が大きい有機材料に導電性の炭素ナノ微粒子を混合した導電性有機材料を使用します。この導電性有機材料に電気信号を与えるとジュール熱が発生し、アクチュエータ材料の温度が上昇します。この温度上昇に伴い、熱膨張が生じてアクチュエータが伸長変形することを利用して動力を発生します。この伸長変形の量は、アクチュエータに与える電気信号の大きさで制御でき、信号をきることにより元の形状に戻ります。
(2) 有機アクチュエータの特徴
開発した有機アクチュエータは大気中で、かつ材料の電気、熱特性を選ぶことにより数ボルト〜数十ボルトの低電圧で動作することが可能です。また、通常の熱可塑性の高分子材料と同様にシート状や任意の形状のものが形成できる特徴があります。
比重0.8の導電性有機材料を用いた有機アクチュエータの動作を評価した結果、大気中において数十ボルトの駆動電圧で、最大伸縮率約4%、発生応力約5MPaの動作を確認しました。これは断面1mm2あたり、約500gのものを持ち上げられる力に相当します。
今回開発した軽量で柔らかい有機アクチュエータは、大気中、低電圧で駆動できるため取扱いやすく、また構成が単純で加工が容易なため、今後、医療機器やマイクロロボットなどの様々な産業分野への応用が期待され、さらに将来は人工筋肉などへの応用へも道を拓くものです。
なお、本成果は、9月20日から山形大学(山形市)で開催されている「題54回高分子討論会」で発表します。
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