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2005年9月15日
株式会社日立製作所
独立行政法人物質・材料研究機構

MgB2超電導物質を用いて
高温超電導システムの永久電流運転に世界で初めて成功

1.5テスラの高磁場を実現し、
超電導システムの小型化、軽量化、低コスト化に道を拓く

 

  株式会社日立製作所 日立研究所(所長:小豆畑 茂/以下、日立)及び独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:岸輝雄/以下、物材研)は、2001年に青山学院大学で発見された臨界温度*1が摂氏マイナス234度の二ホウ化マグネシウム*2 (以下、MgB2) 超電導物質で作製した超電導システムを用いて、世界で初めて永久電流運転*3に成功しました。この成果は、超電導システムにおいて、これまで冷却用に使われてきた液体ヘリウムを使うことなく、1.5テスラという高い磁場を、均一かつ安定的に実現することができる可能性を示した技術です。これにより、超電導磁石を装置の心臓部として活用している医療用MRIシステム*4(以下、MRI)や、たんぱく質の解析などで使う核磁気共鳴分光システム*5(以下、NMR)、超高速を実現する超電導リニアモーターカーなど、さまざまな分野において、装置の小型化、軽量化、低コスト化が可能になるものと期待されます。

  MRIやNMR、リニアモーターカーといった分野において、超電導磁石は装置の心臓部を構成するデバイスとして活用されています。こうした分野へ活用する超電導磁石には、高い磁場を均一かつ安定的に発生することが求められており、現在は、液体ヘリウムを使用して、ニオブ・チタンやニオブ・三・スズを、約マイナス270度まで冷却することにより、超電導状態を作り出すことによって、そうした条件を充足しています。しかし、そのためには、液体ヘリウム冷却設備を必要とするため、装置の大規模化や高い運転コストが避けられません。超電導システムの小型化、軽量化、低コスト化を実現するために、従来の材料に比べてより高い冷却温度で超電導状態が実現でき、液体ヘリウムを不要とする、材料が求められてきました。

  2001年に青山学院大学で発見されたMgB2は、臨界温度が摂氏マイナス234度と、これまでより高い温度で超電導状態を実現することができます。これにより、液体ヘリウムを使用せずに、超電導状態を作ることが可能になるため、小型化、軽量化、低コスト化を図ることができます。

  今回、MgB2超電導体の表面酸化を抑制する技術を開発したことや超電導線同士を非常に低い抵抗値で接続したことにより、MgB2超電導物質を用いた高温超電導システムを構築し、世界で初めて永久電流運転に成功しました。さらに、超電導システム内の最大発生磁場は、MRIなどへの応用に必要な磁場、約1.5テスラ*6を達成し、液体ヘリウム1.0テスラ中の測定で一平方センチメートルあたり80万アンペアの高い臨界電流*7密度を有するMgB2超電導線を実現したことにより、MRIやNMR、リニアモーターカーといったさまざまな分野における活用がより現実的になると考えています。

  本成果によって、高い臨界温度を有するMgB2超電導物質を、永久電流運転が必要なMRIなどの超電導システムに応用することで、液体ヘリウムを使用せずに、小型化、軽量化、低コスト化が可能となり、システム全体の30%以上の大幅なコスト低減と、システム全体の40%以上の軽量化が期待できます。

  なお、本開発の成果は、2005年9月19日からイタリアで開催される19th International Conference on Magnet Technologyにて発表します。

*1 臨界温度:超電導状態が維持できなくなる最高温度のこと。材料により物性値は異なる。
*2 二ホウ化マグネシウム(MgB2):
2001年に青山学院大学の秋光純教授のグループにより発見された新しい超電導体であり、金属系材料としては最高の摂氏マイナス234度という臨界温度が特徴です。従って、他の金属系超電導材料であるニオブ・チタンやニオブ・三・スズでは実現できない液体ヘリウムフリー下での実用化が期待されております。また、原材料のマグネシウム、ホウ素は資源的に豊富で材料調達が容易で、軽量であることから、低コスト・軽量超電導線材を作製することが可能な候補材料として注目されています。
*3 永久電流運転:電流の減衰がほとんどゼロの通電状態。
*4 医療用MRI(Magnetic Resonance Imaging)システム:
体内に多く存在する水素原子中のプロトンを核磁気共鳴させ、そこに位置情報を加えることで信号の強度分布を画像化したもの。
*5 NMR(Nuclear Magnetic Resonance):
磁場中におかれた特定の原子核が磁場の強さに応じた周波数の電磁波と共鳴を起こす現象を利用し、有機物などの構造を解析したもの。
*6 テスラ:磁場の単位のことで、1テスラは10000ガウス。地磁気は約0.3ガウス。
*7 臨界電流:超電導状態が維持できなくなる最高電流のこと。材料により物性値は異なる。
 
 

お問い合わせ先

株式会社日立研究所 企画室 研究管理ユニット [担当:鈴木]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
電話 : 0294-52-7515 (直通)

独立行政法人物質・材料研究機構 広報室 [担当:渡邊]
〒305-0047 茨城県つくば市千現一丁目2番1号
電話 : 029-859-2026 (直通)

 
 

以上

 
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