このニュースリリース記載の情報(製品価格、製品仕様、サービスの内容、発売日、お問い合わせ先、URL等)は、発表日現在の情報です。予告なしに変更され、検索日と情報が異なる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。なお、最新のお問い合わせ先は、お問い合わせ一覧をご覧下さい。
磁気ヒステリシスを考慮した
電気機器の高精度磁場解析技術を開発
従来に比べて1/100以下の時間で計算を可能に
日立製作所日立研究所(所長:福永泰/以下、日立)は、このたび、新日本製鐵株式会社技術開発本部鉄鋼研究所(所長:奥村直樹/以下、新日鐵)の協力を得て、鉄などの磁性体材料の磁気ヒステリシス現象を高速かつ高精度で解析する数値シミュレーション技術を開発しました。これまでモータや発電機等の電気機器の設計において、複雑な磁気ヒステリシス現象を正確に考慮することは困難とされていましたが、本技術の開発によって磁性を利用した電気機器の高性能化や設計製造期間の短縮化が期待されます。
磁性体のヒステリシス現象は、磁性体に加わる磁界とそれによって生じる磁性体の磁化の関係が一意に決まらず、磁界の履歴によって異なった磁化の値を示す複雑な現象です。磁気ヒステリシスを考慮するか否かで、モータや発電機、医療診断用MRI(磁気共鳴映像装置)、ハードディスク用磁気ヘッドなどの様々な磁性を利用した機器において、磁化分布(磁場)が大きく異なるため、その性能を左右する重要な特性です。しかし、磁気ヒステリシスは、磁性体の材質や形状に強く依存する非線形の現象のため、厳密に予測することが困難でした。計算機シミュレーション技術として、磁性体をミクロな磁石の集まりとして計算する手法(プライザッハモデル)が検討されていますが、大規模な数値計算が必要であり、またヒステリシス現象を高精度には再現できないという課題がありました。
このような背景から、日立は、従来法に比べ高い精度でありながらも、短時間で計算できる実用的な磁気ヒステリシスの数値シミュレーション技術を開発しました。
(1) 磁気ヒステリシスの数学モデルの構築
新日鐵による磁気特性データの精密な分析結果をもとに、磁気ヒステリシス現象を記述する数学モデル*1を構築しました。この数学モデルを用いると、従来の数値シミュレーション法に比べ、ヒステリシスの表現に必要な計算機記憶容量を約1/10以下に削減できます。
(2) 磁気ヒステリシスの計算手法の開発
磁気ヒステリシス数学モデルを用いて、大規模磁場解析を行う数値シミュレーション*2を開発しました。この結果、磁気ヒステリシスを考慮した高精度の磁場解析を、従来に比べて1/100以下の計算時間で実現しました。
今回開発した磁場解析技術は、電機機器の開発期間の短縮化や低コスト化に加えて、高性能化に寄与するものです。今後、日立は本技術を、モータや発電機の省エネルギー化や、医療用MRI画像の高精細化等に向けた製品設計に適用していく予定です。
なお、本成果は、京都大学大学院工学研究科島崎眞昭教授、松尾哲司助教授、岡山大学工学部高橋則雄教授らの協力を得て実現したものです。また、2005年1月28日に早稲田大学で開催された電気学会主催の静止器・回転機合同研究会にて発表されました。
|
|
用語説明 |
*1 |
数学モデル: |
|
ヒステリシス表現に優れた非対称遷移確率を与える数学モデルです。このモデルを用いると、ヒステリシス表現の自由度を高めることができるため、ヒステリシス現象をよりリアルに表現できます。 |
*2 |
数値シミュレーション: |
|
差分透磁率という数値解析上の新たな概念を導入し、ヒステリシス磁界計算に優れたベクトル型偏微分方程式を作り上げました。これにより、ヒステリシス現象をよりリアルに再現できるとともに、従来のプライザッハモデルによる磁場解析に比べて100倍以上もの高速解析を可能にしました。 |
| | お問い合わせ先 |
株式会社 日立製作所 日立研究所 企画室 [担当:根本]
〒319-1292 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号
電話 : (0294)52-5111 (代表)