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はんだ接続部の寿命を高精度に予測する
シミュレーションツールを開発
き裂進展挙動の予測が可能に
日立製作所機械研究所(所長:三木一克/以下、日立)は、このたび、エレクトロニクス部品の実装に使われるはんだ接続部の寿命を高精度に予測する新しいシミュレーションツールを開発しました。本技術は、はんだが受ける損傷の累積変化を評価することによって、はんだ内部のき裂進展挙動とはんだ接続部の寿命を予測することができます。従来、長期間の耐久試験により確認していた寿命を、シミュレーションにより短期間で予測することが可能です。今後、本技術を用いて、エレクトロニクス実装製品の開発期間の短縮、高信頼化に寄与していきます。
情報・通信、自動車を主体とするエレクトロニクス機器分野では、LSIなどのエレクトロニクス部品を配線基板に接続するために、延性に優れたはんだを用いています。近年、機器の小型・軽量化に伴い、はんだはさらに微細化する傾向にありますが、はんだの疲労き裂による断線が課題となっています。これは、エレクトロニクス部品と配線基板の材質が異なるため、双方の熱変形量の違いにより、はんだが繰り返し変形を受けることで発生した疲労き裂がはんだ内部を徐々に進展し断線に至るものです。従来は、耐久試験で調べた寿命と疲労き裂発生予測回数の相関を利用して、製品の寿命を推定していました。しかし、この方法でははんだ接合部の大きさや形状毎に耐久試験を行う必要があり、寿命の測定に期間とコストがかかります。開発期間の短縮化や機器の高信頼化を加速するために、疲労き裂の挙動を高い精度で予測できるシミュレーション技術が望まれてきました。
このような背景から、日立では、はんだ接続部の寿命を精度良く予測する新しいシミュレーションツールを開発しました。この技術の内容は以下の通りです。
(1)疲労き裂を評価する領域を同一寸法の要素に分割した有限要素解析*1モデルを用いて、はんだに発生する歪を計算し、歪から各要素の損傷量を算出します。
(2)き裂が入った要素を損傷量から判別し、有限要素解析モデルから該当要素を削除します。
(1)(2)の手順を自動的に繰返して、はんだの疲労き裂の進展挙動を求めます。シミュレーションに要する時間は1ケースあたり数日の規模ですが、耐久試験は通常1ヶ月以上かかりますので大幅な期間短縮、コスト低減が可能です。
今回開発したシミュレーションツールを、LSIと配線基板のはんだ接続部の評価に適用しました。この結果、はんだ形状による疲労き裂進展挙動と寿命の差を予測できることを確認しました。今後、本技術をエレクトロニクス機器分野に使用される様々なはんだ接続部に適用していく予定です。
なお、日立は本技術を2月3日から2月4日にパシフィコ横浜で開催された社団法人溶接学会主催「第11回エレクトロニクスにおけるマイクロ接合・実装技術シンポジウム」で発表しました。
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用語 |
*1 |
有限要素解析
構造解析の一般的な手法で、対象となる物体を小さな領域に分割して解析する方法。複雑な形状の物体を単純な形に分解して分析し、最後に全部を組み合わせることにより、複雑な形状をした物体の変形や応力、歪が計算できます。
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株式会社 日立製作所 機械研究所 企画室 [担当:高岡]
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