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2004年12月8日
省電力で信頼性の高い無線ネットワークを利用した
水素ガス検知システムを開発
環境に優しく安全な水素エネルギー社会の実現に道を拓く
日立製作所(執行役社長:庄山悦彦/以下、日立)は、このたび、国立大学法人岡山大学(学長: 河野伊一郎/以下、岡山大学)との共同研究のもと、燃料電池自動車に水素燃料を供給する水素ステーションの普及に向けて、水素ガス検知システムを開発しました。これは、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(理事長:牧野力/以下、NEDO)の委託事業「水素安全利用等基盤技術開発」の一環として行われた「半導体水素センサと検知システムの研究開発」の成果です。本システムは、水素ステーション内に設置された大気中の水素ガス濃度を検知する水素ガスセンサをネットワークで結び、ステーション全体の水素ガスの濃度及び拡散状況を監視できるようにするものです。試作では、ネットワークの無線化、省電力化、並びに高信頼化の技術を実現しており、環境に優しく安全な水素エネルギー社会の実現に貢献します。
近年、地球環境を保全できる高効率なエネルギーとして、水素が注目されており、水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術研究開発(World Energy Network)の報告によると、2020年には、日本全体における燃料電池自動車の数は500万台、水素ステーションの数は3,500ヶ所に達すると予測されています。一方、水素エネルギーが普及するにつれ、水素ステーションのガソリンスタンドへの併設及び市街地への建設が進むことが予想されており、可燃性の高い水素ガスへの万全な安全対策が必要です。特に水素ガスが漏洩した際には、漏洩箇所を直ちに特定すると同時に、水素ステーション全域におけるガスの拡散状況を早急に把握することができる水素ガス検知システムを整備することが不可欠です。そこで、日立は、複数のセンサを無線で自由に繋ぎ、対象物の計測情報を遠隔地から確認できるセンサネットを使った水素ガス検知システムに着目しました。 しかし、センサネットを利用した水素ガス検知システムには、常時監視によってセンサノード(センサネット用小型端末)の消費電力が高くなり、電池の寿命が短くなること、また、水素ガス漏洩時には多数のセンサノードから基地局への通信が瞬時に集中することによって通信能力が低下し、監視システムの信頼性が低下するなどの課題がありました。
このような背景から、日立はNEDOの委託を受け、岡山大学との共同研究のもと、日立が持つ半導体技術、センサ技術、無線通信技術、システム制御技術と岡山大学の材料技術を融合し、無線ネットワークを利用した水素ガス検知システムを開発しました。この検知システムは、小型(7.5mm×3mm)、低価格で、100ppm以下の水素濃度を検知できるFET(Field Effect Transistor)型水素ガスセンサを搭載したセンサノード、基地局、監視用サーバから構成されます。
開発したシステムの特長は次の通りです。
(1) 水素ガスの常時監視を省電力で実現する電力制御システム
水素センサに二つの測定モード(室温モード、高温モード)を設け、切り替えて利用する技術です。通常はマイコンを待ち受け状態にする室温モードで水素ガスの量を測定しますが、測定値が一定の値を越えた場合は、センサノードに搭載されたマイコンから水素センサに加熱指示が出され、高温モードに切り替わります。高温モードでは、気温・湿度の影響を取り除くとともに、センサ表面の反応が活性化されるため、より高精度な水素の計測が可能となります。室温モードでの消費電力は高温モードの200分の1程度であるため、これらのモードを適時切り替えることにより、システム全体電力消費量を10分の1程度に抑えることができます。
(2) 水素ガスの漏洩時における通信制御システム
水素ガスが漏洩した際の情報が基地局を通じ監視用サーバに伝わると、監視用サーバは全センサノードに対して通信の優先順位を水素濃度の高い順に設定します。優先順位の高いセンサノードの通信頻度を高くし、優先順位の低いセンサの通信を規制することで、通信回線を有効に活用します。これにより、重要な漏洩情報ほど優先的に基地局に収集され、システム全体の信頼性を高めることができます。
なお、試作品は、2004年12月9日から東京ビッグサイトで開催される「エコプロダクツ2004」で展示される予定です。
今後は、数十個の水素ガスセンサを用いた実証実験を行い、気温や湿度等の環境変化にも対応できる安定性の高いシステムの構築を目指して2008年頃に実用化する予定です。
検知システムの構成
| | お問い合わせ先 |
株式会社 日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:内田、木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
電話 : (042)327-7777(ダイヤルイン)
以上