このニュースリリース記載の情報(製品価格、製品仕様、サービスの内容、発売日、お問い合わせ先、URL等)は、発表日現在の情報です。予告なしに変更され、検索日と情報が異なる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。なお、最新のお問い合わせ先は、お問い合わせ一覧をご覧下さい。
2004年10月8日
世界最多の16値多値変調による40ギガビット/秒の光伝送に成功
一本の光ファイバで伝送可能な情報量を4倍に
日立製作所中央研究所(所長:西野壽一/以下、日立)は、このたび次世代の基幹系(都市間)およびメトロ系(都市内)の光ファイバネットワークに向けて、世界最多となる16値の多値変調によって40ギガビット/秒の光伝送に成功しました。これは独自開発した振幅・位相同時変調方式によって実現されたもので、一本の光ファイバで伝送可能な情報量を一挙に4倍に拡大することが可能です。本成果は、将来の光ネットワークの大容量化を実現する基本技術と言えます。
インターネットの急速な発展とADSL*1やFTTH*2などのブロードバンド技術の普及に伴い、都市内や都市間の情報伝送量は、今後ますます増大することが見込まれています。情報伝送に用いられる光ファイバネットワークにおいても、さらなる大容量化の要求から、波長多重*3や光信号の高速化が検討されてきました。しかし、これらの手法が限界に近づく*4とともに、従来は無線通信分野で用いられていた振幅や、位相の異なる多数の信号状態を用いて、情報を伝送する多値変調の技術が注目されています。多値変調を用いることにより、4値の多値変調で伝送量を2倍、8値で3倍、16値で4倍に増大することができます。しかし、超高速の光伝送では3値数が増えると信号の変調・復調が難しいため、これまで10ギガビット/秒以上の高速光通信では、8値*5を超える光多値信号は実現されていませんでした。
このような背景から、今回、日立では多値レベル数で世界最高となる、16値の多値光変調を実現する変調方式を開発しました。開発技術は以下の通りです。
- 16値変調の実現手法
光信号の変調は位相の数に信号振幅の数を掛けた値で得られます。これまでは、光の位相を4値で変調し、さらに振幅を2値で変調した8値の多値信号が最多でした。今回の発表は、さらに、光信号の振幅を4値の多値信号で変調することに成功し、世界で初めて16値という無線技術に迫る、高効率の多値光変調の実現を実証しました。
- 振幅・位相同時変調技術
光信号の振幅と位相を同時に多値信号で変調すると、位相信号を復調する際に変調した信号が干渉してしまい、受信ができないという問題がありました。そこで、信号の位相点を同心円上に配置し、振幅変調成分と位相変調成分を直交させて干渉を減らす、独自の変復調方式を開発し、振幅4値・位相4値の同時変調を世界で初めて実現しました。
今回、日立は本技術を10ギガビット/秒の光伝送に適用し、世界で初めて16値多値光変調による40ギガビット/秒の光伝送を実証しました。今後、本成果を活用し光ファイバ通信の大容量化を実証するとともに、高効率の多値変調方式や低コスト・小型の光多値送受信器の開発に取り組みます。
なお、本成果は2004年9月6日から開催されるヨーロッパ光通信国際会議「ECOC 2004」で発表されました。
|
|
用語説明 |
*1 |
ADSL |
|
電話回線を利用した加入者用ブロードバンド通信方式の代表例で、数Mビット/秒〜数10Mビット/秒の高速なデータ伝送を可能にする技術。インターネットへのアクセスやIP電話などに用いられます。国内での加入者数は1,000万を越え、広く普及しています。 |
*2 |
FTTH |
|
各家庭まで直接光ファイバを導入する加入者用ブロードバンド通信方式のひとつであり、インターネットへのアクセスや画像配信などに用いられます。100Mビット/秒という極めて超高速データ伝送が可能であり、普及が拡大しつつあります。国内での加入者数は100万を越え、急速に普及が進んでいます。 |
*3 |
波長多重 |
|
1本の光ファイバに複数の異なる波長(色)の光信号を伝送し、大容量伝送を行う技術。光 ファイバ通信に用いられる波長(1.5ミクロン)では、最大100を超える波長を伝送することが可能です。 |
*4 |
光ファイバ伝送の大容量化の課題 |
|
従来、光ファイバ伝送の大容量化は、信号波長数の増加や光信号の変調速度の高速化で実現されていました。しかしながら、使用できる帯域幅は、伝送路の途中に配置する、光ファイバアンプの利得帯域などで制限されるため、信号波長数の増加は限界に達しています。一方、実用的な光信号の変調速度としては40ギガビット/秒までの高速化が実現されていますが、変調速度を上げると光信号の周波数幅も増加し隣接する光信号と重なってしまうため、波長数が増やせなくなってしまいます。この結果、一本の光ファイバで伝送できる容量が上限に達するという課題が生じていました。 |
*5 |
論文 |
|
Shigenori Hayase, Nobuhiko Kikuchi, Kenro Sekine, and Shinya Sasaki, "Proposal of 8-state per symbol (binary ASK and QPSK) 30-Gbit/s optical modulation / demodulation scheme," ECOC 2003, Th2.6.4 (2003年9月発表)。 |
| | お問い合わせ先 |
株式会社 日立製作所 中央研究所 企画室 [担当:内田、木下]
〒185-8601 東京都国分寺市東恋ヶ窪一丁目280番地
電話 : (042)327-7777 (ダイヤルイン)
以上