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2004年9月29日
 

発泡ポリウレタン樹脂の3次元成形シミュレーション技術を開発

30倍以上の体積膨張の可視化に成功
 
 
 
  日立製作所生産技術研究所(所長:伊藤文和/以下、日立)は、このたび、日立ホーム&ライフソリューション株式会社(取締役社長:石垣忠彦/以下、日立H&L)と共同で、冷蔵庫や自動車の断熱、衝撃吸収、吸音材として広く用いられている発泡ポリウレタン樹脂の3次元成形シミュレーション技術を開発しました。本技術によって、成型中に30倍以上も膨張する発泡ポリウレタン樹脂の密度や圧力変化を、はじめて予測することができるようになりました。最適な金型の形状を事前に予測することによって、金型の試作回数を低減するなど、生産コストの削減に寄与する技術です。
 
  発泡ポリウレタン樹脂は、内部に微細な気泡を形成しており、断熱、衝撃吸収、吸音などの優れた特性を有するため、冷蔵庫、自動車の内外装部品、建築部材などに広く用いられています。発泡ポリウレタン樹脂を用いた部材は、まず、ポリウレタン樹脂の混合液を金型内に注入し、自己発熱反応の進行による体積膨張で金型内を充填した後に、冷却・固化して製造されます。その際、金型内に注入するポリウレタン樹脂の注入位置、ガス抜き位置*1および発泡圧力の最大値を知る必要がありますが、従来は試作成形によってこれらの条件を決めていました。
  しかし、寸法が大きな冷蔵庫などで最適条件を知るために繰り返し金型を試作することは、製造コストと開発期間の両面で大きな課題となっていました。そこで、成形シミュレーション技術の開発が強く望まれていましたが、発泡ポリウレタン樹脂の成形プロセスは温度が変動する上に体積が30倍以上も膨張するため数式が難しく、シミュレーションは困難であると言われていました。
 
  このような背景から、日立は、日立H&Lと共同で、ポリウレタン樹脂の大きな体積膨張を考慮した、3次元発泡成形シミュレーション技術を開発しました。開発技術は、以下の通りです。
  1. 可視化装置の開発
    シミュレーションを実現するためには、さまざまな温度や金型の形状におけるポリウレタン樹脂の密度変化を知り、数式化する必要があります。そこで、治具温度と金型の肉厚を変化させた条件で、ポリウレタン樹脂の密度および発泡圧力を測定できる可視化装置を開発しました。
  2. 3次元流体解析ソフトFLOW-3D(R)*2との連動
    可視化装置の測定結果から密度および粘度式を新たに導き出し、これらの式を汎用の3次元流体解析ソフトFLOW-3D(R)と連動させて計算することにより、密度変化および発泡圧力の最大値を精度良く計算できるようにしました。
  この結果、世界ではじめて、体積が30倍以上膨張する発泡ポリウレタン樹脂の成形シミュレーションを実現しました。本技術を、冷蔵庫断熱材向けのポリウレタン発泡成形に適用したところ、試作回数の低減、開発期間の短縮が実現できることを確認しました。今後、日立では、自動車、建材などの発泡ポリウレタン樹脂の成形にも適用していく予定です。
  なお、本技術は、9月17日から開催された「The Japan-Korea Plastic Processing Joint Seminar 2004」で発表されています。
 
 

用語説明

 
 
*1 ガス抜き位置:
  金型内でポリウレタン樹脂の最終充填場所に設置する微細な穴の位置。これは金型内で発生するポリウレタン樹脂のガスを排出するための位置です。
*2 3次元汎用流体解析ソフトFLOW-3D(R):
  Flow Science社の登録商標です。
 
 

お問い合わせ先

 
株式会社 日立製作所 生産技術研究所 企画室 [担当:鈴木、神田]
〒244-0817 神奈川県横浜市戸塚区吉田町292番地
電話 : (045)860-1678(ダイヤルイン)
 
 
以上
 
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