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2004年9月24日
宇宙線中性子の評価システムを開発
半導体メモリのソフトエラーに及ぼす影響を明らかに
日立製作所生産技術研究所(所長:伊藤文和/以下、日立)は、世界各地の加速器で行われている、中性子の実験結果やシミュレーション結果を、統一して評価する宇宙線中性子評価システムを、世界に先駆けて開発しました。本システムは、近年、課題となっている半導体メモリのソフトエラー*1に及ぼす宇宙線中性子の影響を、定量的に評価することを可能にするものです。
太陽系外から飛来する超高エネルギーの宇宙線は、地球大気との核反応によって1G(ギガ:10の9乗)eV以上のエネルギーを持つ中性子を発生します。この中性子は、半導体デバイスの微細化とともに、メモリのソフトエラーを起こす要因として年々認識が高まってきており、その影響評価手法の確立が世界的規模で急がれています。これまで、シミュレーションや、レーザー光、イオンビーム、中性子を用いる様々な評価手法が提案されてきましたが、これらの手法には統一性が無いために、施設や方法によってソフトエラーの耐性を示す強度は数倍にも達する幅がありました。このような背景から、中性子ソフトエラーを共通尺度で評価できる、新たな信頼性評価手法の開発が望まれていました。
今回、日立は国内外の大学の協力を得て、様々な中性子ソフトエラーの実験結果やシミュレーション結果を統一的に評価する、宇宙線中性子ソフトエラー評価システムを、世界に先駆けて開発しました。本評価システムの主要素技術は下記の通りです。
- 宇宙線中性子が通過した半導体デバイスに発生する、キャリアーの3次元物理挙動を解析する、シミュレーション技術を開発しました。任意の中性子エネルギーと任意のデバイス構造に対応して、核破砕反応*2を計算する方式です。
- 特定のエネルギーに中性子発生率のピークを持つ単色中性子源*3ならびに、幅広いエネルギーの連続スペクトルを持つ白色中性子源*4に対する、共通の評価技術を開発しました。
日立は、開発したシステムを中性子ソフトエラー評価に適用したところ、単色中性子源と白色中性子源の実験結果を平均誤差30%で再現できることを確認しました。また、宇宙線中性子ソフトエラーは、地球上の任意の緯度、経度、高度によって桁が違うほど変化しますが、これら測定位置毎の平均誤差も30%以下を達成しました。従来の中性子ソフトエラーの測定値は、機関によって数倍のオーダで異なっていたことを考慮すると画期的な進展であり、世界中の測定結果を比較できるレベルに達したものといえます。
今後は、宇宙線中性子ソフトエラーの試験法に関する国際標準化に向けた取り組みを進めるとともに、半導体ソフトエラーに及ぼす中性子の影響の評価をさらに詳しく検討する計画です。
なお、本成果は、9月24日にスペイン、マドリッドで開催されるRADECS*52004で発表する予定です。
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用語説明 |
*1 |
半導体メモリのソフトエラー: |
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半導体メモリのデータの内容が書き換わる現象です。 |
*2 |
核破砕反応: |
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中性子が入射した原子核が粉々になって、デバイスの中に複数の高エネルギー粒子を発生する反応です。 |
*3 |
単色中性子源: |
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東北Cyclotron and Radioisotope Center、Fast Neutron Laboratory、大阪大学Research Center for Nuclear Physics、スウェーデンのウプサラ大Theodore Sverdberg Laboratoryが保有している中性子源です。 |
*4 |
白色中性子源: |
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米国ロスアラモス国立研究所が保有している中性子源です。 |
*5 |
RADECS: |
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European Radiation and Its Effects in Components and Systemsの略です。 |
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株式会社 日立製作所 生産技術研究所 企画室 [担当:鈴木、神田]
〒244-0817 神奈川県横浜市戸塚区吉田町292番地
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