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2004年6月7日
磁気センサを用いた指の運動機能の高感度測定技術を開発
運動機能障害の程度やリハビリの効果を定量的に把握
日立製作所基礎研究所(所長:長我部 信行、以下:日立)は、このたび、大阪大学医学系研究科・神経内科学の佐古田三郎教授と共同で、指の運動機能を簡便に計測する装置を開発しました。この装置は、発信用と受信用の2つのコイル状磁気センサを2本の指に装着し、コイル状磁気センサ間の距離を測定することで指の動きを観察します。小型の簡便な装置で、指の運動機能を定量的に計測することができるため、神経疾患による運動機能障害の程度や、リハビリによる回復効果の測定に有用な計測ツールです。
高齢化社会が進むとともに、高齢で発症しやすいパーキンソン病などの神経疾患や脳梗塞などを原因とした運動機能障害を有する方が増加する傾向にあります。これらの障害を有する方の運動機能の診断やリハビリの効果の把握は、主に医師の問診や目による判断によって行われているのが現状です。しかし、投薬やリハビリによる運動機能の回復効果を、医師が簡便に定量測定することができれば、医療現場で大変有効なツールとなることが期待できます。
このような背景から、日立は、2つの磁気センサコイルを用いた磁気センサ型運動機能計測技術を開発しました。この装置は、2本の指を離したり閉じたりするタッピングの動きを定量的に計測するものです。装置の特長は以下の通りです。
- 指の距離の測定
2つのコイル状磁気センサを2本の指に装着し、一方のコイルから磁場を発信させ、もう一方のコイルで同じ周波数の磁場を受信する仕組みです。測定される信号強度が、2つのコイル間の相対距離に応じた値となることを利用して、2本の指の相対距離を求めます。
- 運動機能の評価
指の相対距離の時間的変化から、指のスピードと指の力を定量化し、さらに、指の振幅の大きさと単位時間あたりのタッピングの回数を求めます。これらの指の振幅・指のスピード・力・タッピング周波数などの各パラメータを用いて運動機能を総合的に定量化します。定量化した値を臨床症状などと比較することが可能となります。
- 試作装置
生体への影響がほとんどなく、また、測定精度も損なうことのない数十kHzの周波数帯の磁場を用いて測定を行ないました。また、装着するセンサも小型で簡便に取り付けることができるほか、装置全体も持ち運ぶことが可能です。
今回、日立は大阪大学の協力を得て、この装置を用いてパーキンソン病患者の指の運動機能を測定しました。その結果、従来、医師が障害の程度が高いと判定していた患者ほど、測定装置による指の振幅量が少なく、医師の判定結果と測定装置による評価結果との関係性が見出されました。
本技術は、生体にほとんど影響の無い磁場を使用することから、生体の運動機能モニターを安全に簡易に実現します。また、装着するコイルも小型で簡易なため、本技術には利用者の心理抵抗感を和らげる効果があります。日立は定量計測がこれまで困難であった運動機能計測を実現し、リハビリや薬物治療などの治療効果判定などの新しい計測ツールとして期待しています。
なお、本内容に関する論文が、Neuroscience Researchの5月号、Vol. 49, No.2, 2004に掲載されました。
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