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2004年4月22日
 

16倍速DVD-RAMを実現する光ディスクの超高速記録技術を開発

- 記録用レーザの変調精度を従来比5倍以上に向上 -
 
 
 
  日立製作所研究開発本部(本部長:中村道治、以下:日立)は、DVD-RAMの記録速度を、基準速度の16倍速にあたる毎秒176メガビットに高速化する、超高速記録技術を開発しました。これにより、DVD-RAMの記録速度を大幅に向上させることができ、ハードディスクレコーダなどに記録された1時間の標準画質の映像を、約2分でDVD-RAMに複写することが可能となります*1
  本技術はDVD-RAMにデータを記録するために使用する記録レーザを、高い時間精度で制御する「高速記録波形発生回路技術」等を開発することによって実現したもので、今後、DVDフォーラムに対し規格提案を行なう予定です。
 
  DVD-RAMは、大容量の映像を記録する媒体として普及が進んでおり、日立をはじめとする各メーカーから、DVDレコーダやDVDビデオカメラなど、様々な製品が販売されています。最近では、ブロードバンド化、多チャンネル化、さらには、ユビキタス化などの流れを受け、大容量のコンテンツをハードディスクなどからDVD-RAMに複写し、保存や持ち運びに活用したいというニーズが高まっています。
  DVD-RAMをはじめとする光ディスクへの記録速度を向上させるためには、ディスクを高速に回転させることと、それに対応した記録技術の開発が不可欠です。回転速度については、遠心力によりディスクが破壊されない速度が、基準速度の16倍であることが確認され、DVD-ROMなど既に16倍速のディスクドライブが実用化されています。一方、記録技術についてはDVD-RAMが、高速に変調されたレーザ光を相変化記録媒体*2に照射することによって、相変化記録膜上に微細小の非晶質記録マークを形成し、マークがある部分と、マークのないスペース部との反射率の違いによって、データの記録・再生を行なうという原理であることから、レーザ光の高速変調速度の高速化への対応が求められていました。また、16倍速に対応するためには、時間制御精度を約700ピコ秒から、133ピコ秒へと向上する必要がありました。
 
  そこで、日立は従来光通信の分野で使用されてきた技術を、光ディスクに応用することによって、高速記録波形発生回路を開発することに成功し、16倍速対応高速技術を実現しました。今回開発した主な技術は以下の通りです。
 
  1. 高速記録波形発生回路の開発
      従来光通信の分野で使われてきた技術を応用し、高速記録に必要な時間制御精度を実現しました。具体的には、従来のクロック速度のパルス源を、高速化させる速度に応じて複数個同期させて並列に動作させ、パルスをパラレル−シリアル変換させることにより、高精度な高速パルスを発生させる、高速記録波形発生回路を開発しました。
  2. 高速記録に対応した記録方式
      高速記録時に、レーザから発せられる光パルスの立ち上がり、立ち下がりの応答が遅いと、パルス幅が狭くなるにつれて、記録膜に照射される光パワーが急激に減少し、マーク位置の制御性が悪化します。今回、最小パルス幅を従来の2倍とする方法を新規に開発し、記録制御性を向上させました。これにより、高速記録時にも高精度にマークの位置を制御することが可能になります。
  3. 高速再生時の信頼性向上技術
      高速再生のために検出器や信号処理回路の周波数帯域を広げると、再生波形に歪み(群遅延)が生じ、信号品質が悪化します。今回、この歪みを補償する信号処理方式を開発し、現行のDVD-RAM装置との再生互換性を維持したまま、高速再生時にも低速時と劣らない、高信頼再生を実現しました。
 
  さらに、日立は日立マクセル株式会社(執行役社長:赤井紀男)が開発したBiGeTe(ビスマス・ゲルマニウム・テルル)を記録膜とする高速対応DVD-RAMに、本開発の技術を用いてディスクの回転速度を一定として記録を行なった結果、最外周領域で基準速度の16倍の毎秒176メガビット、最内周でも6倍の毎秒66メガビットにまで高速化することが可能になりました。このとき、DVD−RAMの再生信号品質基準であるジッタ値は9%以下となることを実証しました。さらに、高速記録したディスクを現行のDVD−RAM装置での再生速度(2〜3倍速)において再生しても、良好に再生できることを確認しました。
  この技術はDVD-RAMの高速化にとどまらず、昨年発表された、青紫色半導体レーザを用いて大容量記録を実現するブルーレイディスクTMの高速化にも、原理的に応用が可能となります。ブルーレイディスクTMでは記録密度が大きいために、回転速度の上限から決まる転送速度は約毎秒450メガビットにもなります。今回の技術はその実現に道を開くものです。
  なお、本成果は2004年4月19日から21日の間に米国カリフォルニア州モントレーで開催される国際学会 「Optical Data Storage 2004」にて発表しました。
 
 

用語説明

 
 
*1 1時間の標準画質の番組を約2分でDVD-RAMに複写:回転数一定で標準画質(転送速度 毎秒4.5メガビット)番組を1時間ダビングするとき、内側の記録速度が6倍、外周の記録速度が16倍になることを考慮すると、平均の記録速度は約11倍となることから以下の計算式で計算。毎秒4.5(メガビット)×3,600(秒)/(毎秒11(メガビット)×11(倍))=約133(秒)。
*2 相変化記録媒体:記録膜が、結晶かアモルファスかでマークを記録する媒体。初期状態を結晶とし、レーザ光照射によって発生する熱で記録膜を融解し、急冷するとアモルファスになることを利用してマークを記録する。マークの読み出しは弱いレーザ光を照射し。アモルファスと結晶の屈折率の差に起因する反射率変化を検出して行なう。
 
 
 
以上
 
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