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2004年3月4日
燃料電池用の低コスト「炭化水素系 膜/電極接合体」を開発
− 4000時間の連続発電運転を実証 −
日立製作所日立研究所(所長:福永泰、以下:日立)は、このたび、固体高分子形燃料電池*1用の炭化水素系膜/電極接合体(MEA*2)で4000時間の連続運転を実現しました。開発した炭化水素系MEAは、現在主流であるフッ素系MEAと比べて、"低コスト"になるのが特長です。
電力の安定供給や環境にやさしい社会基盤の構築の視点から、燃料電池の開発が進められています。その電力源となる燃料電池の性能は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する膜/電極接合体(MEA)の性能によって左右されます。現在は、発電電圧特性に優れるフッ素系電解質膜を用いたMEAが使用されています。今後さらに、低コストな電解質膜の開発が求められています。
このような背景から、日立は、低コスト化に優れる電解質膜材料として、芳香族系エンジニアリングプラスチック*3を原料とする独自の炭化水素系電解質膜*4の開発を進めてきました。今回、炭化水素系電解質の課題であった発電特性と耐久性の大幅な向上に成功し、実用化に向けて大きく前進をしました。開発内容は以下の通りです。
(1)劣化の主要因と考えられる電解質膜の膨潤を抑制するために、膜中に芯材料を複合化させて寸法安定性の高い炭化水素系電解質膜を開発しました。この電解質膜を用い電極接合方法を最適化して、発電特性の優れた炭化水素系MEAの開発に成功しました。
(2)開発した炭化水素系MEAを、標準的な70℃の発電条件において発電試験を行った結果、フッ素系MEAと同等の初期発電特性が得られました。また、同じ条件で4000時間の連続発電試験においても安定した発電性能を維持しており、優れた耐久性を有することを確認しました。
今回開発した炭化水素系MEAと、日立がこれまで開発してきた金属セパレータを組み合わせることにより、低コスト化を実現できます。また、今後、電気自動車用燃料電池への適用の可能性もあると期待できます。
なお、本開発は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託研究「固体高分子形燃料電池システム実用化技術開発」により実施したものです。
■用語説明 |
*1 |
固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell): |
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PEFCは、電解質に固体高分子膜を使用した低温作動型(70〜80℃程度)の発電装置です。燃料は、水素あるいは都市ガスなどから作った水素を成分とするガスと、空気中の酸素を化学反応させ、電気と熱(温水)を得られることから、家庭用,業務用や、電気自動車用電源への実用化開発が進められています。 |
*2 |
膜/電極接合体(Membrane Electrode Assembly): |
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白金等の貴金属微粒子を含む触媒を材料とする薄膜電極を、電解質膜の両面に貼り合せたPEFCの発電部品です。 |
*3 |
芳香族系エンジニアリングプラスチック: |
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ベンゼン骨格主鎖を有した耐熱性、耐酸化性、耐薬品性の優れた高分子樹脂材料です。 |
*4 |
炭化水素系電解質膜: |
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フッ素等のハロゲン元素を含まない電解質膜です。汎用の芳香族系エンジニアリングプラスチックを原料に用いることによって大幅なコスト低減が可能となります。 |
以上