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2004年2月27日
 

世界最小待機時電流25MUA/Mbitの
オンチップSRAM回路の開発に成功

低速動作時のリーク電流も約10分の1に低減
 
 
 
  株式会社日立製作所(執行役社長:庄山悦彦、以下日立)は、株式会社ルネサス テクノロジ(会長&CEO:長澤紘一、以下ルネサス テクノロジ)、SuperH, Inc.(CEO:ジーン・マリ・ローランド)と共同で、携帯電話に使われるシステムLSIのオンチップメモリ用SRAM(Static Random Access Memory) において、世界最小の待機時電流25MUA/Mbitを達成するとともに、低速動作時に従来比10分の1のリーク電流を実現する新概念のSRAM回路技術を開発しました。本技術は、携帯電話での地上波デジタル放送の長時間観賞など、高性能処理と低消費電力を同時に求められるアプリケーションにおける、システムLSIの大幅な消費電力削減を実現する技術です。

  携帯電話上でマルチメディア処理を担うシステムLSIには、ゲーム機能やテレビ電話機能など、大規模なデータを高速に処理する"高性能化"と、携帯電話の電池寿命を延ばすための"低消費電力化"が要求されています。従来、システムLSIの高性能化は、LSIを構成する素子の微細化によって実現されてきましたが、微細化が進むにつれ、回路が動作していない間も流れるリーク電流により、消費電力が増大するという問題が顕在化してきました。これを改善するために、動作していない回路部品では、電源を部分的に遮断しリーク電流を流れないようにする"電源遮断制御"が注目されています。しかし、システムLSIのオンチップメモリ(内蔵メモリ)に用いられるSRAM(オンチップSRAM)では、従来のキャッシュメモリ*1用途に加え、CPUからのアクセスがない待機時にもデータを保持する必要のあるメモリ(URAM*2)が搭載されているため"電源遮断制御"が使えません。このため、電源遮断によらないリーク電流の低減技術の開発が必要とされています。

  このような背景から、日立、ルネサス テクノロジ、SuperH, Inc.は、オンチップSRAM のリーク電流を大幅に低減する新概念の SRAM回路技術を開発しました。技術の詳細は次の通りです。

(1)待機時リーク電流を低減する"ソース線電位制御方式"
  動作温度やメモリセルの性能に応じ、印加電圧を自己制御する"ソース線電位制御方式"を開発し、安定動作とリーク電流低減の両立を実現しました。従来から、ソース線に電圧を印加するとリーク電流低減の効果が大きくなることは知られていましたが、メモリセル動作の安定性が損なわれるという欠点がありました。今回、通常0Vが印加されているSRAM回路のソース線に電圧を印加することで、待機時リーク電流を低減しました。
(2)低速動作時のリーク電流低減技術
  SRAMの低速動作時は、リーク電流が消費電力の大きな割合を占めます。そこで、低速動作時専用の低リーク動作モードを新たに設定し、アクセスのないメモリセルを待機時とみなして上記(1)技術を適用することで、リーク電流を大幅に抑制します。
  今回、本回路技術を用いて、0.13MUmルールのCMOS技術による1Mbitのオンチップメモリを試作した結果、(1)の技術によって待機状態の消費電力が世界最小値の25MUA/Mbitを達成しました。また低リーク動作モードのリーク電流は、(2)の技術によって、高速動作状態の1/10に抑えられることを実証しました。本回路技術は、システムLSIの低電力化の核となる基本回路技術です。

  なお本技術は、2月15日から米国サンフランシスコで開催された「国際固体素子回路会議(ISSCC:2004 IEEE International Solid-State Circuits Conference)」にて発表しています。
 
注釈:
(1) キャッシュメモリ: CPU内部にもうけられた高速メモリで、使用頻度の高いデータを保持しておくことによって全体の性能向上に寄与する。
(2) URAM: UserRAMの略。WorkRAMとも呼ばれ、ユーザが使用するデータを保持する。
 
 
以上
 
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