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2003年11月20日
日本電信電話株式会社
株式会社日立製作所
「どこでも安全で安心な」ストレージセントリックネットワークを
共同研究開発
日本電信電話株式会社(以下 NTT、本社;東京都千代田区、代表取締役社長;和田紀夫)、株式会社日立製作所(以下 日立、本社;東京都千代田区、執行役社長;庄山悦彦)の2社は、NTTの高速・高品質ネットワーク技術と日立の高性能・高信頼ストレージ技術の融合により、企業における「どこでも安全で安心な」PC利用環境を実現する「ストレージセントリックネットワーク」のプロトタイプを共同開発しました。
ストレージセントリックネットワークは、企業における日常的なPC管理の負担を軽減すると共に不慮の災害や事故におけるビジネスコンティニュイティ/ディザスタリカバリ(BC/DR)(*1)を確保し、更にPC盗難等による企業情報の漏洩も未然に防ぐための新たなソリューション技術です。
今後は、次世代iDCサービスの礎となるべく様々な利用シーンへの適用を視野に入れて検討していく予定です。
なお、両社の研究開発部門は、本年4月より共同研究を実施してきており、ストレージセントリックネットワークはこの共同研究の成果です。
1.ストレージセントリックネットワーク |
(1)開発の背景 |
近年、企業におけるITシステムの高度化が進む中、台風や地震などの自然災害、火災、企業テロやネット犯罪などによる不慮の業務停止への懸念が高まっています。このため企業では、ビジネスコンティニュイティ/ディザスタリカバリ(BC/DR)の重要性が増しています。しかしながら、その実現には、企業のPCユーザ一人一人が多くの時間を費やして、データのバックアップ、OSのセキュリティパッチ対応、ウィルスチェック、ソフトウェアのバージョンアップといったPC管理を徹底する必要があります。
このようなPC管理の問題を解決するため、ファイルをクライアントPCのディスクの代わりに、広域IPネットワークを介して大容量ストレージに集約し、一括して管理することで「どこでも安全で安心な」ストレージ環境を実現する「ストレージセントリックネットワーク」のプロトタイプを共同開発しました(図1 PDF参照)。 |
(2)ストレージセントリックネットワークの主な特長 |
ストレージセントリックネットワークの主な特長は以下の通りです。 |
(1) |
OS、アプリケーション、データの全てを大容量ストレージに集約するため、上記のPC管理をオペレータに一元化でき、運用コストを大幅に削減することができる。 |
(2) |
大容量ストレージ内のOSやアプリケーションにセキュリティパッチを適用することで、全てのクライアントPCへのセキュリティパッチを適用することができ、ワームやウィルスの流行を未然に防ぐことが可能となる。 |
(3) |
万が一PCが盗難されたり、置き忘れた場合でも、PC内にファイルを保管していないことから、企業の機密情報の漏洩を防ぐことが可能となる。 |
(4) |
クライアントPCとストレージの接続には、最新のIPストレージ技術(*2)iSCSI(*3)を使用しており、広域イーサネットやIP-VPN(*4)を利用した広域接続が可能となる。更に災害発生時には、遠隔地に保存したバックアップデータからクライアントPCを起動することで、企業ITシステムを迅速に復旧することができる。 |
ストレージセントリックネットワークの実現に向けては、従来、PC内だったストレージへのアクセスがLANや広域ネットワークを介することにより、そのレスポンスが低下する等、多くの技術的課題があります。これら技術的課題を解決するため、NTTの端末/ユーザ認証技術(*5)やネットワークトラフィックの輻輳回避技術(*6)等のIPネットワーク制御技術、及び日立のストレージデータへの高速アクセス技術やストレージ管理技術等のストレージ制御技術を組み合わせて、ストレージセントリックネットワークの共同開発を進めていきます(図2 PDF参照)。 |
(3)今後の展開 |
ストレージセントリックネットワークの適用先として、企業オフィス、自治体、教育機関等、主にビジネスユースを想定して開発を進めています。将来的には個人ユースにも適用できる技術として開発していく予定です。 |
2.共同研究の経緯 |
NTTでは、研究開発分野において、研究成果が上手く事業に結びつかない、いわゆる「The Valley of Death(死の谷)」(*7)現象の存在を強く意識し、その克服に取り組んでいます。その克服の一つのアプローチとして、特に自前主義的な研究開発にこだわらず、自社の強み技術を相手の強み技術と上手く連携させることが重要と考えています。
一方、日立では、目まぐるしく変化するIT市場の中で、それに合わせて素早く事業構造を変えなければ生き残れない時代になりつつあると認識しています。他社と協業することによって、ユビキタス分野のように今まで手掛けていない新事業を創生する際に、そのスピードを加速したいと考えています。
このような背景の元で、NTTと日立の研究開発部門は、「デジタルデバイド、少子高齢化、一極集中、安全、環境等といった21世紀の社会問題を解決するためのIT技術の早期実現」という共通意識に基づき、本年4月より共同研究を開始しました。
今回報道発表するストレージセントリックネットワークは、この共同研究の成果です。 |
<用語解説> |
*1 BC/DR(Business continuity/Disaster recovery) |
自然災害・人為的災害やテロに対応して可能な限りノンストップ稼動を維持して事業活動の続行・再開・復旧させるために、事前に計画・準備し継続的メンテナンスを行う一連のプロセスとシステム |
*2 IPストレージ技術 |
iSCSI等を使用し、IPネットワークを介してストレージアクセスを可能とする技術 |
*3 iSCSI |
ストレージアクセス用プロトコルとして広く普及しているSCSIコマンドをIPネットワーク上で運ぶための標準化プロトコル |
*4 IP-VPN |
広域IPネットワークを介して構築される仮想私設通信網(VPN) |
*5 端末/ユーザ認証技術 |
パスワードや認証キーなどを用いて、正規の端末、正規のユーザであることを確認し、成りすましなどによる不正使用を防止する技術 |
*6 ネットワークトラフィックの輻輳回避技術 |
ネットワークの輻輳によるホストコンピュータ間の通信レスポンスの低下を回避する技術 |
*7 「死の谷」(The Valley of Death) |
研究開発活動の成果が、事業化可能か否か判断の見極めが困難となり、事業に繋がらないという研究段階から市場投入に移るまでのギャップの比喩表現 |
以上